第606話 不利? エリーラ視点
「…ちぇっ、面倒なことになったわ」
「ん」
私達がリヴァイアサン魔族の居る場所に着くと、目の前に湖があった。リヴァイアサンの魔族がたまたま水辺に転移してきたとは考えにくい。これはイムという魔族が意図的にこの魔族に有利な場所を選んだのだろう。
「海って言われても違和感がない」
「そうね」
その湖はパッと見では海と間違えるくらいには大きかった。
「来たのはお前らか」
その池に膝したくらいまで入った状態でリヴァイアサン魔族が私達を待ち構えていた。
「おじいちゃんとおじさん達を殺したのはゼロスって奴の他にもいると聞いているが、それはお前達か?」
この言い草からして、こいつはあの獣人国で戦った時の子供リヴァイアサンの生き残りに何らかの関係があるのだろう。ゼロスが確実に全て殺していればこいつは生まれなかったかもしれない。とは言っても、私達も全て殺れていたと思っていたし、こいつを拾ってきたのがイムだとしたら責めるのは無理だろう。イムならわざわざこっそり助けていそうだからな。
「ん。リヴァイアサン達は私達も殺った」
私がリヴァイアサン魔族の質問になんて答えようかと考えていると、シャイナがそう答えた。正直、なんで相手が有利なフィールドで挑発するようなことを言うんだと思ったが、心を読めるシャイナがそう答えたのだとすれば大丈夫なのだろう。幸い、移動中にお互い強化は行っていたから今すぐ攻撃されても問題ないわね。
「殺すっ!」
リヴァイアサン魔族はキャリナの言葉に怒り狂ったように私達に向かってきた。わざわざ自分の有利な場所から出てくれるとは思っていなかった。同じ魔族でもリュウやイムはここまで愚かでは無い。そうなると、この頭の悪さは単純に生まれてからの日数が足りないのか、そもそもこの魔族が駄目なのかのどっちかね。
「シャイナ」
「ん」
魔族が向かってくると、シャイナが1歩前に出て、私が5歩ほど後ろに下がった。これは元から決めていた私とシャイナがお互いの良さを最大限活かす陣営だ。
「シャアッ!」
「…」
魔族の張り手のような攻撃をシャイナは軽く避け、胴に鎌を掛けた。
「っ!」
しかし、シャイナの鎌で斬れることはなく、力負けしたシャイナの身体が引っ張られて横を向いて浮いた。
「ジャッ!」
そして、魔族は浮いたシャイナにかかと落としのような蹴りを入れようとした。まあ、シャイナなら鎌を手放して逃れることはできるでしょうが、私を無い者としている魔族に存在をアピールすることにした。
「水弾」
私は人差し指から圧縮した高密度の水の弾を回転させながら放った。その攻撃を咄嗟に腕でガードしたが、その腕から血が出ることも無く、ほとんど無傷だった。良くて鱗が少し削れているくらいかしら?
「シャッ…」
少し頭が冷えたのか、今の攻撃が恐ろしかったのかは知らないが、魔族が私の方を見て警戒した。確かに今のを何十倍の大きさで今と同じ準備速度で放てたとしたら警戒しないといけないわね。
「っ…!」
その魔族が私に集中した隙に後ろに回ったシャイナが鎌を振りかぶって魔族の首に振り下ろした。あろうことか、魔族はその鎌を無視して私に向かってこようとした。
「ジャガッ!?」
そんな魔族はシャイナの振り下ろされた鎌によって地面に叩きつけられた。シャイナが魔族の質と量を最大にしたのだろう。
「…武器が悪い」
しかし、それでも魔族の首から血が数滴垂れてきただけで致命傷には程遠い。今の無警戒でもそのダメージなのはきついわね。
「シャアァァ!!!」
今の攻撃でキレたのか、今度は私の警戒をシャイナにそのまま向けた。やはり、この魔族は頭が良くない。
「血抜き」
私は精霊降臨による効果である液体の操作を魔族の首の傷から行った。
「…傷が治るのが早い」
一瞬だらーっと少し勢いよく血が首から垂れたが、それはすぐに傷が塞がったことで収まった。
私達の作戦はシャイナが魔族に傷を付け、私はその傷から血を垂れさすことで、殺すというものだ。
「仕方ない」
シャイナが今使っているあくまの能力を解いて、鎌に風を纏わせた。切断能力を高めて一気に血が抜ける程の傷を作る気なのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます