第596話 1対4の戦い

「やっば…」


俺は思いっきりジャンプをし、さらにダーキのサイコキネシスの足場を使ってもう1段跳んだ。


「追ってきたのは1人だ!」


さすがに高ランク元の魔族を同時に4人相手にするのは無理だろう。だから俺は空を飛べる者のみを呼び出す為に宙に来たのだ。


「ふっ」


俺はくるっと体を縦に半回転し、足場を蹴って向かって来ている龍魔族に逆に向かって行った。神からの指令を果たすためには逃げるばっかではいられない。


「はっ!」


「んっ…!」


龍魔族は俺が自ら向かってくると思っていなかったのか、慌てて両腕で顔を隠すようなガードの体勢をとった。俺はガードの上から剣で叩き付けるように斜め下に吹っ飛ばした。俺は地面に落ちていく龍魔族を追うようにもう1度足場を蹴ってさらに急降下した。


「ガアッ!」


「ちっ…!」


地面に着地した龍魔族は俺の方に口を大きく開いてブレスを吐いてきた。このブレスの元は魔力なので、斬り消せるし、何なら精霊化状態だからダメージは無い。そのまま突っ込もうかと思ったが、俺対策かブレスの中に無属性魔法の礫が混じって居たので避けた。


「水拳!」


「ちっ…!」


ブレスを避けてから龍魔族に攻撃しようとしたら後ろからリヴァイアサン魔族が水を纏った拳を振ってきた。無視しようかと思ったが、嫌な予感がした。だからといって避けるのはタイミング的にできるか微妙だったので、剣で拳を叩き付けて拳の向かう先を地面にした。


「ん!?」


その作戦自体は成功したが、剣をつけた時の感触がおかしかった。その水は魔法なのか斬り消せたが、水の中には無属性魔法の針が高速回転していた。もう魔族は全員精霊化対策をしていると考えていいだろう。そして、水を消した瞬間に纏い直した。その時に剣が水の中に埋まったのだが、押しても引いても剣が動かなった。


「ふんっ!」


そんな俺に遅れてやってきたベヒモス魔族が魔力を纏いながらタックルしてきた。ベヒモス魔族の巨体とスピードでタックルされたらそれなりにダメージを受けてしまう。俺は水の中の抜けない剣を諦めて、もう1本の剣を早めに振ることでベヒモス魔族に押されるような形でわざと早く吹っ飛ばされた。


「ぃてっ…」


片腕であったこともあり、腕はかなり痺れているが、そのおかげで距離が取れたから水の中の剣が俺の空いている手に戻ってきた。


「シィャアーー!!」


「毒か!」


吹っ飛んだ先にはヒュドラ魔族が居た。ヒュドラ魔族は口から毒々しい色の霧のようなブレスを吐いていた。ほぼ気体のそれを精霊化で防げるか分からないし、こいつらの事だから効くような対策をしていそうだ。俺はそれを避ける為にダーキの足場で無理やり横に勢いの向きを変えた。


「ドラッ!」


「んぐっ…!」


しかし、その先には龍魔族が俺を待ち構えていた。魔力を纏った左拳を何とか剣で受け流せたが、すぐに右拳を振り下ろされた。2本の剣をクロスさせるように上に持っていくことで直撃は間逃れたが、地面にうつ伏せに叩き付けられた。


「ドッラ!」


「「潰れろ!」」


龍魔族といつの間にか俺の元にやってきていたリヴァイアサン魔族とベヒモス魔族が俺の手足を潰そうと足を振り上げた。


「離れろ!」


俺は消費魔力を全く考えずにジールの精霊魔法で雷を俺を中心に無差別に放った。



「これを何時間も時間稼ぎなんて無理だぞ…」


今ので魔族達は離れて行ったが、これまでの攻防で費やした時間は10分程だろう。この調子では時間を稼ぐなんて事は無理だ。


「本格的に1人を確実を殺すしかないな」


早くレベルを上げて進化するしかない。天使化をすれば殺れるほどステータスが上がるかもしれないが、警戒されてイムが魔族を遠ざけられたらそれは無理になる。つまり、天使化をすれば確実に1、2撃で殺せる隙を探るしかないのか。天使化が思っているよりもしょぼかったらあの神に文句を言うしかない。


(霹靂神)


俺はユグ精霊化をこっそりユグ精霊降臨に変更して、自分の中で霹靂神の準備を始めた。俺の中で準備することで雷詠唱無効の効果で霹靂神の準備していることはバレないだろう。そして、霹靂神という俺の神雷Lv.1に次ぐ最高威力の魔法なら魔族を倒し切ることは無理でも、隙を作ることくらいならできるだろう。



(問題は精霊化が無くなったことと、準備中は魔法を使う余裕が無いこと。さらに、多重思考の大部分を霹靂神の構築に持ってかれることだ)


霹靂神を作り上げる15分間、俺はこの4人の魔族を相手に生き残らなければならない。

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