第595話 転移先で

「はい。到着っと」


「ここは…」


俺が転移させられた場所は地面が石畳のようになっていて、周りは木々が全く生えていないところだった。この場所は人工的に作られたように見える。俺は深林のどこかに転移させられると思っていたが、ここは深林の中だろうか?そして、ソフィ達がやってこれる場所なのか?


(それにしても…)


俺は改めてアウェイの場所に来たのだと実感した。その理由は俺達…というよりも俺を囲むように居る魔族とその元となってあろう魔物達が居るからだ。ここに居る魔物は龍とリヴァイアサンとヒュドラだ。初めて龍を見たが、かなり強そうだな。


「おじいちゃん達とおじさん達をよくも!」


「パパをよくも!」


「ん!?」


イムが俺から3歩ほど離れると、左右から何かが叫びながら突撃してきた。


俺は咄嗟に左右の腰にある剣を抜いた。


「「死ね!」」


俺は危機高速感知の反応に従って左右からの顔面に迫る拳を剣で受け流した。これができたのは俺の警戒がMAXだったのと、この左右から迫る何かが何の強化もしていなかったからだろう。


「「へぶっ!」」


上手く受け流せたので、ほとんど威力を殺さなかった拳はお互いの顔面に当たって左右のどちらも吹っ飛んで行った。


「くそっ…」


「くっ…」


2人は吹っ飛んだ先でしゃがみながら魔力を纏って再度向かってこようとしているので、俺もまずは神雷トリプルエンチャントと神雷纏をして様子を見ようとしている時だった。


「2人とも何してるの?」


イムの少し怒ったような声が聞こえた瞬間に2人はそれら諸々の準備をすぐにやめてイムの方に土下座のように頭を下げた。


「僕がこれから連れてくる人を殺していいって言った?僕のダーリンはこの程度は死なないと思って止めなかったけど、これで死んでたら2人は今生きてないよ?」


「「すみません…」」


どうやら、イムは俺に攻撃したこと自体ではなく、死ね!と言って突撃したことを怒っているようだ。


「攻撃も僕が言ってからって言ったよね?言うことを聞けないなら要らないんだけど?」


「「それだけは…!」」


「っ!」


俺はイムの発言を聞いてイムから距離を取ってユグ精霊化とジール精霊降臨、獣化、悪魔化、悪魔憑きを行った。


「あ、言っちゃった」


イムはてへっ!と言った感じで俺の方を見て笑った。それを見ても俺の感情は全く変化することは無かった。今はそれどころではない。


「今のが無くても俺に攻撃するつもりだったのか?」


「まあ、そうだね」


イムは頬を人差し指で掻きながら目線を少し逸らしてそう言った。


「俺が必要じゃなかったのか?」


「もちろん、必要だよ!でも、とりあえず今は生きてて、生殖能力があればいいかなって」


イムが言っていることに寒気を催した。もしかして、イムは俺と魔物もしくは魔族で新しい何かを生み出すつもりか?


「ダーリンを痛め付ければ今裏で必死に動いているだろう妹達を無力化できるでしょ?」


「………」


想定していたが、ソフィ達が必死に行動していることはバレているな。まあ、教会に行ってから俺の視界からみんなが消えているのだから分かるよな。


「それに手足が無くて何もできないダーリンが生きるために嫌々でも僕を頼るしかないって状況は想像しただけですっごく良いじゃん!」


「…」


痛め付けるがそのラインまで行くとは思っていなかった。


「もちろん、止血はしてあげるし、殺さないようには十分気をつけるから!」


「それなら痛め付けてもいいよとでも言うと思ってるのか?」


「それもそうだね」


イムはそう言いながら質が良さそうな大きなソファをどっかから取り出して座った。


「死なないために抵抗はちゃんとしてね?大抵の攻撃なら即死にならないように避けるはずだし、大抵の攻撃はしていいよ。もちろん、隙を狙って殺すのはダメだからね〜」


イムがそう言い終えると、4人の魔族が俺に向かってきた。

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