第592話 どうする?
「そんなことが……」
キャリナがリュウの話を聞いてショックを受けてか口を押えている。確かに暗い内容の話だったが、本題はここからだ。
「リュウはイムが連れてきた魔族達をどうしたいんだ?」
「殺したい」
リュウは俺の質問に即答で言葉を濁さずに何とも分かりやすく真っ直ぐ答えた。
「どうやって?」
「……」
しかし、俺がその方法を聞いたら返答はなかった。
「ソフィはリュウの話していたことが全て本当だったと仮定して、リュウの望み叶えられるか?」
「無理でしょう」
次にソフィに質問をすると、ソフィからはそう答えが返ってきた。
「まず、その他の魔族よりも突出して強い謎魔族がイムの言うことに素直に聞くということは、イムはその謎魔族と同等かそれ以上の力があると考えるべきでしょう」
もちろん、イムが謎魔族よりも弱くても言う事聞かせられる手段を持っているのかもしれないが、そんな特異な手段があると考えるよりも普通に言う事聞かざるを得ないほどイムが強いと考えた方が自然だろう。
「だが、イムの目的が俺ってことだからいつかはぶつかることになる」
イムがリュウに言っていた俺が欲しいというのは本当だろう。だって、何度もアピールはされているからな。
「ソフィ、俺の命がかかってるとしたらどこまで抵抗できる?」
「……」
こう質問すると、ソフィは少し考え出した。リュウの願いを叶えるための魔族の皆殺しは無理でも、俺のための防衛策はあるかもしれない。
「皆殺しは無理でも、お兄ちゃんを守ることはできるかもしれません」
ソフィが出した結論がそれだった。俺はその答えに驚いた。何よりも俺を優先したとしても、ソフィが「かも」という絶対の安全を保証できないほどか。
「全体的に強さが足りないのでまだまだここに居る者全てに強くなってもらわないといけません」
「……」
神が強くなることが最優先と言っていたのはこの為だったのか。
「もし、魔族と戦うならどういう割り当てにする?」
「お兄ちゃんがイム、私が謎魔族。ベクアとキャリナがベヒモス魔族、シャナとエリーラがリヴァイアサン魔族。そして、リュウが龍魔族を相手してもらいたいです。また、それぞれがある程度近い場所で戦い、互いにフォローできれば理想です」
ちなみに、余っているヒュドラ魔族は手が空いている誰かが臨機応変に戦うしかないらしい。
「問題は元となった魔物が居るかどうかです」
確かにそこも重要だ。確かに魔族の方が強いが、魔族は元となった魔物を操れる。SSSランク程の魔物は暴れられるだけでかなりの迷惑となるので、元となった魔物が敵の戦力になるとしたら油断はできない。
「元になった魔物は見なかった」
リュウはそう言うが、イムが元となった魔物をわざわざ処分するとは思えない。
「もしかすると、前に王都に向かってきたベヒモスは魔族に操られていたのかもな」
「十中八九そうでしょう」
元々突然王都に真っ直ぐ向かってくるのが謎だったが、魔族が操っていたとすれば納得できる。
「っ!」
俺は魔力高速感知の反応に従って咄嗟に剣を抜き、真横に振った。
「やあ!ダーリン迎えに来たよ!」
「…イム」
俺の横に剣に重なる形で転移して現れたのはイムだった。
「ますます反射神経が上がったようで僕は嬉しいよ!」
イムは周りにいる者など見えないのか、俺のことだけを見ながらそう言ってきた。
「この状況で素直にはい、着いていきます!って答えると思ってるのか?」
俺は能天気に話すイムを睨み付けながら俺はそう言った。
「あ、勘違いしないでね?これはお願いじゃなくて、脅しだよ?」
「脅し?」
脅しと聞いて一瞬意味がわからなかったが、すぐに最悪なことが浮かんだ。俺の考えを読んでか、イムはニヤッと笑ってから答えた。
「もし、ダーリンが僕と来てくれなかったら人間国、エルフの里、獣人国、ドワーフ国に魔族とその元となった魔物を転移させて暴れされるよ」
どうやら、イムは本気で俺を連れて行くつもりでこの場に現れたようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます