第589話 リュウの回想 2
「こんなの魔族をいつから見つけていた…」
私は3人の魔族を見ながらイムに問いかける。狙い済ましたかのように複数のSSSランク帯の魔族をつい最近見つけたなんてことはありえない。
「見つけてないよ。魔物から作り出したんだよ。実験は昔からやってたけど、完成してきたのは結構最近かな?」
「なっ……」
魔族同士で魔族の子供を産むことはできる。しかし、魔族と魔物が交わって魔族が産まれたなんて聞いたことがない。そもそも魔族と魔物が交わったということすら聞いたことがない。
「あ、勘違いしないでよ?僕が魔物なんかとそんなことするわけないじゃん。この魔族達は僕が産んでないよ」
「まさかっ…!」
イムが産んでいないとなると選択肢はもう1つしかないだろう。
「残念。それも違うよ。それは攫って試したけどできなかった。リュウみたいな高ランクの魔物の魔族は試してないから分からないけどね」
「こいつ…」
頭の中が真っ黒に染まっていく感覚がした。こいつは同族である魔族でそんな人体実験のような事をしたのか。
「どうやって作ったかなんてどうでもいいじゃん。僕以外にはそう簡単に作れるものじゃないから安心してよ」
イムはそう言ってこの話を終わらせた。
「ならなぜ作った?」
産ませた方法はもういい。だが、なぜこんな過剰戦力を揃えたかの理由が分からない。魔族を滅ぼすにしてもここまでの戦力は必要ない。
「ダーリンを手に入れるため」
イムは嬉しそうに笑いながら私の問にそう即答した。
「まさか…その為だけに…」
「そう、そのためだけ。僕の本当の目的にはこれは使えないから。これはダーリンを絶対に手に入れるために必要だったから作った」
私は絶句した。確かに私もゼロスのことは敵ながら認めている。もし、ゼロスが魔族なって仲間となるなら喜んで歓迎するだろう。だが、ゼロスを自分のものにするためにここまでするかと言われると、絶対にしないと答える。
「なら何で住処を滅ぼした!ゼロスが欲しいのにここを滅ぼす理由は無いだろ!」
ゼロスには悪いが、仲間の魔族とゼロスらなら私は仲間の魔族をとる。
「これのレベルを上げるため。魔物よりも経験値が稼げて数が纏まってる。ここよりも効率のいいとこは無いよ」
「………」
「しかし、人間とかは同族を殺しても経験値が得れないのに、魔族同士ならいいって、魔族は魔物と同じと定められているんだね」
「もういい。喋るな」
今にして思えば私はイムになぜ色々と質問をしたのかと言うと、仲間が殺されたことに納得できる理由が欲しかったのと、イムの奇行の理由を理解したかったのだろう。
しかし、イムは特に理由もなく効率がいいという理由だけで殺した。そして、イムの考えはいかれていて、到底理解できるようなものでは無い。
仲間を殺す以上、同じ魔族であっても、この4人は殺すべき敵だ。
「殺す」
「わあー、シンプルイズベスト。でも、レベルは負けてるかもしれないけど、ランクも数も違う。勝てると思ってる?」
確かにイムを抜きに考えても相手はSSS帯の魔族が3人。それに対して、こちらは私とデュラだ。イムがそういうのも分かる。だが、そういうことでは無い。
「殺さないと殺された魔族が報われない」
「ひゅーっかっこいいー!じゃあ殺れ」
イムがそう言うと、3人の魔族が向かってきた。
「デュラ、キツいと思うが1人を頼む。最低でも逃げた魔族が遠くに行けるまで時間を稼ぐ」
「分かった」
こうして、私達とイム達との殺し合いが始まった。とはいえ、私達は自分で思っているよりも冷静で、この場でイム達を殺すことに固執してはいない。もちろん、殺せればそれが理想だが、目的は仲間のための時間稼ぎだ。
「あ!忘れてた!伝書鳩にしたいからリュウちゃんは痛め付けるだけで殺さないでね!まあ、四肢の1、2本なら何してもいいよ」
今の私にはイムの言っていることに耳を傾ける余裕はなかった。それは私は龍とベヒモスの魔族を相手にしていたからだ。
「ドラ!」
「うっ…!」
全身に暗い金色のような鱗を纏っている私よりも2周り大きい龍魔族が長い尾で攻撃してきた。それを左腕でガードしたが、腕全体に痛みが走った。
「はっ!」
「ン!」
私は負けじと同じく鱗を纏わせた右拳を振ったが、それは龍魔族よりもさらに3周り以上も大きい筋肉質の巨体に額に長い1本の角が生えているベヒモス魔族の両腕で軽く受けられてしまった。
SSSランクというのは伊達ではなく、この2人はかなり強い。
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