第583話 シャーニvs側近

「下克上成功!順位変更!幹部新6位シャーニ!」



「ここまでは順調だったな」


「苦戦を強いられる場面も少しありましたけどね」


シャーニはあれからも下克上に勝利し続け、今や幹部6位になった。つまり、幹部の中のトップになったのだ。


「今回は比較的楽に勝てたみたいだね」


「相性が良かったですから」


シャーニは幹部との初戦のようなパワー系には強いが、自分と似た感じの小技を得意とする相手を少し苦手とする傾向にある。


「次はいよいよだな」


「期待しておきなさい」


舞台から降りてきたシャーニとそう会話をした。

そして、すぐにシャーニが幹部の中のトップになって1週間が経ち、次の下克上が解禁された。その日にシャーニは1つ上の側近5位に下克上を挑んだ。



「下克上始め!」


「「悪魔化、悪魔憑き」」


シャーニ対側近のアディの試合が始まった。


「シャーニと相性がいいとは言えんな」


アディはまさに小技を得意とする感じだ。つまり、シャーニが苦手とするタイプだ。


「…それにしても矢が当たらんな」


シャーニは空を飛んでいるアディに何度も矢を放っているが、それは最小限の動きで簡単に避けられている。それは別れる矢や曲がる矢でも同じだ。


「スピードではシャーニが勝っていますが、小回りでは圧倒的に負けていますね」


ソフィの言う通り、飛んでいるアディは空を自由自在に動き回っているが、シャーニは地上でしか動けない。また、シャーニは足に纏った雷で高速移動はできるが、速すぎるが故に細かなコントロールはまだ効かないらしい。


「そろそろアディが大きく動くと思いますよ」


「何で?」


俺はソフィの言っていることに疑問が生まれた。なぜなら、アディの立場なら上から魔法でちまちま攻撃してるだけでそのうちシャーニのスタミナが切れるだろう。そんな状態なのに大きく動く理由はないはずだ。そういえばシャーニは全く魔法を使わないな。


「側近はいわば王の護衛のようなものです。この戦いで側近に求められるのは負けか圧倒的勝利です。中途半端なギリギリの勝利では側近に対する強さの信頼性に関わってきます」


側近が幹部に負けるのは幹部が側近以上に強かったということになるから良い。だが、ギリギリで側近が勝ってしまうと、周りの感じ方が幹部と側近の力がほとんど無いとなってしまうということか。

側近の強さのイメージを落とさないためにアディはシャーニを圧倒して勝ちたいのか。

そして、ソフィの言う通り、アディはシャーニに向かって急降下をした。


「しっ!」


もちろん、シャーニはそれをただ見守るだけでは無い。急いで何度も矢を放って撃ち落とそうとしているが、アディには全く当たらない。


「くっ」


シャーニは矢での撃墜を諦めたのか、弓を構えたまま一瞬周りを確認して距離を取ろうとした。まだ距離があるからと罠を警戒して周りを確認したのだろうが、その一瞬が無駄だった。


「ふっ」


「うっ!」


アディはその隙に持っていたナイフを投げた。ナイフはシャーニの胴に迫ったが、それをシャーニは雷を纏った腕で弾いた。あ、それも悪手だ。


「はっ」


「うっ…!」


弾いたナイフを空中で掴んでアディはナイフを振り下ろした。シャーニはそれをさっきナイフを弾いた腕とは逆の腕を上に上げて防いだ。しかし、投げナイフと違って、スピードが乗ったアディ自身が握ったナイフの攻撃だったため、纏っている雷だけでは完璧にガードできなかったようだ。腕は地面に叩き付けられた。ゴキっという生々しい音的に腕は折れただろう。

しかし、雷を纏って居た場所を攻撃したので、アディの腕は痺れただろう。


「どぅっ…!」


アディは痺れて片手のナイフを落としたが、全く気にせずにそのまま着地せずに流れるようにシャーニの側頭部を蹴った。シャーニは吹っ飛び、アディはすぐに飛んでシャーニに追いついた。


「ごはっ…!」


アディは少し高く飛んでから、シャーニの腹に急降下した。両足で腹を踏みつけられたシャーニはくの字に曲がりながら血を吐いた。


「うっ…」


シャーニはかなり苦しがりながらも、急いで雷の剣を作ろうとしたが、それよりも早くアディはシャーニの首にナイフを添えた。


「参りました」


「下克上失敗!」


ここでシャーニの快進撃も終わった。結果はアディ自身もそのつもりであったであろう片腕を痺れさせられただけなので惨敗と言ってもいいだろう。

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