第581話 試用
「…この辺でいいかな?」
俺はソフィとシャナから見つからないようにそっと村から離れて林の中に入った。そんな遅くなる予定でもないし、少し居ないくらい大丈夫だろう。
「試してみるか」
1人でわざわざ林の中に入った理由は悪魔界では使えなかった天使化を試すためだ。
ただ、イムやリュウには知られないために目を閉じて試すことにした。俺の視界を共有しているので、目を閉じれば2人には何も見えない…と思う。俯瞰の目で周りの状況は把握できるので、目を閉じてもそこまで困る訳では無い。
「天使化!」
俺は早速天使化を行った。
「………」
結果から言うと、また使えなかった。今度は何か使うのは今じゃないという感じがして使えなかった。
「…もしかして神雷と似た感じなのか?」
神雷はスキルレベルが上がっても本気で必要としてなければ新しい能力は手に入らない。似た感じで天使化も本気で必要な時じゃないと使えないのか?
ユグらにも聞いたが、みんなも分からないそうだ。そもそも天使化というのもよく分かっていないらしい。
「ぶっつけ本番になるのか…」
俺は天使化を試すのは諦めて、そう呟いて村の方に戻ろうとした。天使化が試せない以上、この場に居ても意味が無いからな。
「あ、称号」
だが、称号を新しく手に入れていたと思い出してそれを確認することにした。
魔王2人に視界を共有すると言っても、ステータスなどの俺にしか見えないものは共有されていないと信じたいな。
【神の器】
・神を宿す器となるモノに贈られる称号
[効果]
神系スキルの効果、威力1.5倍
神系スキルの獲得スキル経験値2倍
「ちょっと待て」
俺はその称号を見てそうツッコミを入れた。神の器と聞いて、神になれる才能があるという意味だと思っていたが、そのまんま意味で神を入れるための器ってことだったのか?
「効果は強いんだよな…」
神雷纏や神雷エンチャントを多用する俺にはこの称号の効果はかなり強い。デメリットがあるという効果もないし、この称号はセットしておくことにした。
「今度こそ戻るか」
あまり遅いとソフィが探し出しそうなので、俺はそっと村に戻った。
「ゼロス!久しぶりだな!帰ってきたか!」
「お、ベクア!急に居なくなって悪かったな」
そして、日が暮れ出した頃にベクアらが帰ってきた。
「そんなことはどうでもいいぜ。強くなって帰ってきたんだろうな?」
「俺はほとんど変わらんが、シャナは格段に強くなって帰ってきたぞ」
天使化がまだ未知数なので、俺は強くなったと言い切ることはできない。だが、シャナは悪魔界に行くことでかなり強くなった。
「なら良かったぜ!」
ベクアはそう言うと、俺達から離れて今日の成果を悪魔に渡しに向かった。
「あんたに何かあると、私が女王様に怒られるって理解して行動してくれないかしら?」
「それは…悪かったな」
エリーラが俺を軽く睨みながらそう言ってきた。俺の問題でエリーラが怒られるのは理不尽だと思うが、一応気を付けないとな。
「私は皆さんが無事で安心しました!」
「心配してくれてありがとうな」
キャリナは俺達が無事に帰ってきたことに喜んでいた。こういう素直な反応を見ると癒されるな。
「帰ってくる前に側近になっておく作戦が失敗したじゃない」
「隊長になっただけでも十分凄いよ」
弓は隠れての不意打ちが強いと思っていたが、あの隠れることができない舞台で使っても隊長に勝てたというのだからシャーニはかなり強くなったのだろう。
「明日は幹部と戦う予定だから期待しておきなさい」
「そうなのか!楽しみにしてるよ」
明日には幹部に挑むようだ。シャーニがどんな戦いをするのか俺も観戦させてもらおう。
また、幹部に勝ったら次は幹部での順位を上げて、側近に挑むそうだ。そこにも勝てたら最後に王に挑めるところまで順位を上げるらしい。本人は王に勝てるとは思っていないそうだが、自分の今の力がどれくらいなのか試したいのだろう。
まあ、確かに雷が全く効かない俺と特訓してたから自分がどれくらい強くなったか分からないというのも無理ないよな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます