第574話 条件

「とう!」


俺は歩いて向かってきているシャナに雷の槍を100本近く一気に放った。


「あ、移動しながらも大丈夫なのね…」


しかし、その槍は再び現れたバリアに防がれた。どうやら移動中でもそのバリアは出せるらしい。


「行くしかないか…」


バリアがまだ物理攻撃を防ぐのは見ていない。俺は物理攻撃なら効くという希望を持ってシャナに向かって走り出した。


「痛っ…!」


急に右足に痛みが走った。そのため、バランスを崩したが、何とか左足で右足を多少庇う形で体勢を立て直して、再び走り出した。多分だが、右足のどこかの骨が折れた気がする。


「うっ…!」


そして、シャナまであと1、2歩というところで今度は左足にも同じような痛みが走った。しかし、これは有り得ると予想していた。俺は痛みを我慢して地面を蹴った。


「あだっ…!」


しかし、目の前に突如現れたバリアにぶつかった。どうやら物理攻撃も防げるようだ。


「だったら!」


俺は全力で剣をバリアに突き刺した。しかし、それでは少し傷を付けるだけだった。


「神雷エンチャント+ハーフ!」


俺は全てのエンチャントを神雷エンチャントにした。身体は負荷に耐え切れずに痛むが、それを無視して剣をバリアに押し込んだ。すると、バリアには剣が刺さってバリンッと音とともに割れた。


「っ!」


シャナは目を見開いてからもう一度バリアを作ったが、それも同じように剣を突き刺して割った。


「ちっ…」


しかし、その間にシャナは俺から離れていた。俺は足を回復させて再びシャナに向かおうとした。


「あ…れ?」


しかし、突如眠気に襲われた。そのまま倒れるように眠っ…


「ふん!い゛っ!」


俺は足に剣を突き刺すことで眠気を誤魔化した。とりあえず急いで刺したので、少し深く刺し過ぎたが、眠気はほとんど無くなった。


「あっ…!」


しかし、気が付いたら俺の周りを鎖が囲んでいた。隙間はあるが、どう考えても人が通れる隙間は無い。


「参った」


俺は剣を鞘にも戻し、全ての強化を解除してそう答えた。俺が足を治そうとしたら鎖を巻き付けるし、そのまま突破しようとしても鎖を巻き付けることだろう。もう鎖に囲まれて時点で今の俺にはどうしようない。



「シャナの勝ちです!」


ソフィはそう宣言すると、共に俺の元に慌てて駆け寄ってきて回復魔法をかけた。それで俺の足は元通りに戻った。


「精霊と獣は居ないから弱体化してたけどシャナの勝ち」


「手も足も出なかったよ」


シャナは俺に近寄ってそう言ってきた。確かにユグ、ジール、ダーキが今居ないことで弱体化はしているが、ここまで一方的になるとは思っていなかった。


「傍から見ていたおかげで何となくの条件は分かりました」


「言って?」


シャナが聞いたことでソフィは予測を話し始めた。


「条件は1度に使えるのは1つまで。悪魔化によるステータス強化は使える悪魔のうち最大のものってところですね」


ソフィの答えを聞いてもシャナはいつもの無表情だった。しかし、ニヤッと笑ってシャナは話し出した。


「惜しいけど全部違う。間違えさせるように私が使ってただけだけど」


シャナの発言にソフィは少しムッとしていたが、その表情はシャナが本当の条件を話したら変わった。


「同時に使える能力はいくらでも。でも、複数使う度に使ってる能力の効果と威力が半分、半分って減っていく。悪魔化によるステータス強化は選んだ3人の悪魔の最大値」


つまり、2人の悪魔の能力を使うと1/2、3人だと1/4、4人だと1/8と減っていくらしい。また、武器転移などのものでも発動速度や転移できる距離などが減っていくそうだ。これらは使うのを1つに戻したりしたらすぐに反映されるらしい。

また、選んだ悪魔の最大値とは、3人を比べて【攻撃】が1番上がるのを採用するらしい。それは他のステータスでも同じのようだ。ちなみに、選ぶ悪魔はブロスの話していた悪魔なので、結局のところ悪魔達の中での最大値ということになるらしく、ソフィの言っていたことは間違いではなかったそうだ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る