第573話 考察
「スピア」
シャナは空中にいる俺に対して槍のような魔法を50本近く放ってきた。それらは雷以外の様々な槍であった。それらが一直線で俺の方に向かってきた。
「それは俺を舐めてないか!」
空中に居るとはいえ、俺に対して遠くから魔法を放って当たると思っているのか?俺はその槍を1つ残らず斬り消そうとした。
「舐めてない」
「なっ!」
槍は俺の剣を避けるように方向転換した。だが、それに反射的に反応してもう一度斬った。しかし、その剣も空を斬ることになった。また避けられたのだ。この魔法は確実に俺の剣を避けている。また、避けるだけではなく、避けてからは自動で再び俺の方に向かって来ている。
「らあーー!!」
しかし、俺は纏わりつくように俺の周りに漂っている槍を片っ端から攻撃していった。槍は剣を避ける時に俺から少し離れる。つまり、理論上は全ての槍を斬ろうとし続ければ俺は槍に当たらない。
「雷縮!」
俺は地面に足が着いた瞬間に目の前の槍を退かして雷縮で槍から距離を取った。そして、無詠唱で放った雷の球でそれらの魔法を消し飛ばした。どうやら魔法は避けれないようだ。
ちなみに、空中で消し飛ばしても良かったのだが、そうするとシャナが再び攻撃してきそうだったから地面に降りるまで待ったのだ。
「前言撤回。まだ過小評価してた」
「はあ…はあ……それはどうも」
さすがに槍を斬り続けるのは疲れた。だが、どうやらシャナは俺に休ませる暇も考える暇も与えたくないようだ。俺は危機高速感知の反応を感じて後ろに飛び退いた。すると、地面から鎖が飛び出してきた。俺は適度に距離をとって鎖から逃げた。その際にも追尾する魔法が放たれるから魔法で消していく。
(まず、シャナが悪魔の能力を複数使えるのは確定だな)
そして、俺はシャナの力の分析を始めた。
今のところ判明している能力は武器の転移と魔法の追尾だ。他にも使っているかもしれないが、それはまだ分からない。
それにしても、魔法を転移させるソフィ、自身を転移させるブリジア、そして武器を転移させたシャナ、これで転移系は全て出尽くしただろう。それぞれに長所と短所があるが、またそれは後でだ。
「…うん。考えても無駄だな」
シャナが消えた悪魔の能力を全て使えると仮定するなら、悪魔の能力をいちいち探るのは無理だろう。だが、シャナも悪魔の能力を無条件で全て使える訳では無いはずだ。その条件が分からない以上逃げ回って体力を消費し続ける訳にはいかない。今はダーキが居ないから体力も無限では無い。しかし、居なくなると本当にユグとジールとダーキの有難みがよく分かる。
「雷縮!」
俺はかなり遠くから一瞬でシャナの後ろに回り込んだ。軽く50mは移動しただろう。雷縮でここまで長距離を移動するのを見せるのはこれが初めてのはずだ。ちなみに、やったのも初めてだ。
「っ…!」
俺は無言でシャナを背中から斬りかかった。とはいえ、もちろん実際に大怪我をしないようにするために剣の腹で攻撃した。
「えっ…」
しかし、その攻撃は勝手にシャナを避けてしまった。驚いている隙にシャナは俺の2本の剣に触れて転移させた。ちゃんと戻ってこないように4mほど離れた場所の地面に突き刺さっている。
「はっ!」
苦し紛れに攻撃したが、その攻撃は勝手に外れた。シャナが俺の思考を操作しているのだろう。
「便利な悪魔の能力を手に入れたな!」
俺は剣を回収しようとわざと剣から離れるように移動しながらシャナに皮肉を言った。
「これは私の力。俯瞰の目って便利」
「最悪だ」
俯瞰の目というのは俺も獲得している称号だ。それが1番獲得されてはいけないやつに獲得された。言い方的に俯瞰の目もシャナの心眼に含まれているのだろう。つまり、今のシャナには後ろに回ろうと死角はないということだ。だから思考操作からは逃れられない。
「だったら!」
俺は一気に魔法を構築していった。剣の回収もギリギリできないようにシャナに立ち回られているし、やれるとしたら魔法しかない。
「サンダーバースト!」
俺はここら一体を吹き飛ばす程の雷電魔法を発動させた。屋敷には被害が出ないようにソフィが守ってくれるはずだ。また、シャナはもろに当たっても全身が焦げる程度で死なない威力にしてある。
「っ!」
しかし、魔法を放った瞬間に俺の首元に鎌が迫ってきた。俺はそれを魔法を放った隙に離れて転移させてきた剣で弾きながらシャナは逃げなかったのかと驚愕した。しかし、逃げなかった理由は砂煙が晴れたらすぐに分かった
「それは駄目だろ…」
シャナはボール状のバリアに囲まれていた。ヒビや傷すらも付いていないのを見るとかなり頑丈だと分かる。きっとあのブロスが言っていた3人の中の1人の能力だろう。
「そろそろ終わらせる」
シャナはそういいながら結界から出てきた。
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