第571話 経緯

「えっと…とりあえず無事そうでよかったよ」


「心配してくれてありがと」


シャナはそう言いながらぴょんと椅子から降りた。そしてそのまま俺達の方へ歩いてきた。ちなみに、シャナの後ろに控えていた3人の悪魔も着いてきている。


「ソフィ、服持ってる?」


「ありますよ」


今のシャナは大きな黒い布を巻いて身体を隠している。一応身体は隠せているとはいえ、裸足だし服は欲しいだろう。俺達の服装を見てソフィなら持っているとわかったのだろう。


「どうぞ」


「ありがと」


「ちょ待っ!!!」


ソフィから服を受け取ると、シャナは何の躊躇いもなく巻いている黒い布を地面に落とした。俺は慌ててシャナから顔を背けた。神速反射のせい…おかげでシャナの素肌が肩まで見えた段階で目線を逸らせてしまった。あ、もちろん、俯瞰の目を切ることも忘れていない。俯瞰の目なら上から見えるからな。それにしても、周りには俺達と悪魔しか居ないとはいえ、仮にも王女がここまで躊躇なく脱ぐものなのか。



「着替えた」


「着替える前にも報告をしてくれ…」


着替える時にも報告してくれていたら、俺が慌てて目線を逸らす必要も、逸らした時にほんの少しの後悔にさえなまれることも無かった。


「シャイナ様、この者達が?」


「ん。話してたゼロスとソフィア」


シャナの真後ろに居た紫色の肌で黒の蝙蝠のような大きな翼を生えた男の悪魔がシャナに話しかけた。どうやら、シャナは事前に俺達のことを話していたようだ。


「シャイナ様の話も納得ですわ」


俺とソフィを交互に見てからシャナの左後ろに居る頭に触覚と背に蝶のような大きな綺麗な羽を生やした女がそう言った。


「あ?そうか?おい、王。盲目したか?何でこんなガキなんかと契約したんだ?おかげで最近お前と殺りあえてねぇぞ」


長い爪で俺の事を指差しながらそう言ったのは赤い縦に割れた瞳をしているシャナの右斜め後ろにいた男の悪魔だった。

その発言にはブロスもイラッと来ているのか鋭い眼光となった。しかし、ブロスがその悪魔に言い返すことは無かった。


「ねえ」


「は、はいっ!」


それはブロスよりも先にシャナがその悪魔に顔を向けて話し始めたからだ。シャナに振り向かれてその悪魔はさっきの態度は何だったのかと思うほど綺麗な直立不動になった。


「この2人のことを説明したはず。それなのに今の態度何?話聞いてなかった?それとも理解できなかった?」


「え…あ、その…」


シャナの発言にその悪魔はただでさえ青白い肌をさらに白くして固まっている。ちなみに、その横にいる2人の悪魔はシャナの方を向いているだけで責められている悪魔を見向きもしていない。


「そんな悪魔は要らないんだけど」


「い、いや!俺さ…俺の能力は役に立ちますよ!」


悪魔は俺様と言おうとしたのを俺と変換して、シャナに意義を申し立てた。しかし、この悪魔の発言からしてシャナはこの悪魔と契約しているのか?


「同じことは言わない」


「う、嘘…だろ……」


その悪魔は絶望したような顔を浮かべて地面に崩れ落ちた。


「ただ、今すぐ謝るなら今回は許す」


「すみませんでした!」


「えー……」


シャナの言葉を聞いて悪魔はすぐにそのまま俺の方を向いて土下座をした。俺は状況が未だ理解できていない。ちらっとソフィを見たが、珍しくソフィもきょとん?としている。


「次は無い」


「は、はい!」


シャナは土下座している悪魔の背に座ってそう言った。悪魔は抵抗しないでその状態のままでいる。


「まずはこれまでの経緯を説明してもらえますか?」


「ん」


ソフィの質問でシャナは悪魔に座りながらこれまでの経緯の説明を始めた。


「まず、悪魔を呼び出す瞬間に【悪魔に寵愛を与える者】って称号を獲得した」


「何だそれ…」


その称号の効果を簡単に言うと、悪魔らにものすごく愛される称号らしい。シャナという存在自体が愛される原因なのか、何らかのスキルが影響されているかも分からないということだ。つまり、その称号を獲得した理由は分かってないそうだ。


「そして、ここに来て悪魔使役とを取得した」


「悪魔使いではなくて?」


「悪魔化は取得していないのですか?」


「ん」


俺とソフィの問にシャナは同意した。悪魔魔法でも悪魔使いでもなく、悪魔使役を取得したようだ。また、悪魔化は取得していないらしい。


「悪魔使役はどのようなスキルなのですか?」


ソフィが次にそう聞いた。本来はスキルの詮索はダメだが、悪魔関係いうことでたまらず聞いた感じだな。


「それは戦うのを見て察して。そのためにもゼロ、久しぶりに戦って」


シャナは俺の方を向いてそう言ってきた。

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