第570話 久しぶり
「ふわぁ〜。ソフィ、おはよう」
「おはようございます」
俺は朝、ソフィが家の中で作っている朝食の匂いにつられて起きてきた。ジューッ!という音と共に肉が焼ける匂いとスパイスの匂いがリビング部屋中に充満している。煙突のようなものはあるが、この仮家自体が小さめなので隣の寝室にも匂いがやってきていた。
「その様子だと…」
「至って平和でした」
そう。警戒していたブロスが言っていた3人が来なかったのだ。それどころか、戦闘狂があたりをうろついているせいか、野良の悪魔の1人もやって来なかった。
俺はテーブルにつき、ソフィに出された料理を食べた。ソフィの料理はそこら辺の店で食べるよりも全然美味しい。もちろん、ソフィの料理の腕がかなり高いというのもあるが、美味しさの秘訣は高ランクな魔物の肉を使っていることと、比較的高価であるスパイスを惜しみなく使っているからだろう。
「さて、今日も昨日の続きをするか」
「…はい」
朝食を食べ終えると、仮家から出て、家をソフィがぶっ壊した。この程度の仮家なら簡単に作れるから(ソフィなら)1晩寝るためだけのもので、使い捨てだ。
ちなみに、ソフィは未だに俺とブロスを囮にするあの戦闘狂の集め方が気に食わないようだ。
「じゃあブロス、お願い」
「ああ」
昨日と同じことをまた始めた。すると、すぐに5人の悪魔がやって来た。この悪魔達は他の戦闘狂が慌ただしく動いているのを見て、その理由を聞いてやって来たそうだ。だから初撃を受けることなくすぐに説明を聞いてシャナを探しに行ってくれた。
また、ここに来た理由は本当か確かめるためだそうだ。この調子なら確かめに来ないでシャナを探してくれている戦闘狂も居そうだな。
「ぱったり来なくなったな」
「そうですね」
もう昼頃になったが、最初に来た5人以降誰も来なかった。もう戦闘狂は品切れなのかもしれない。
「ん…?」
なんて事を考えていたが、ブロスが急に怪訝な顔をしだした。
「どうかしたか?」
「かなりの速度で3人組が向かって来ている」
それを聞いて俺とソフィは武器を取り、警戒を始めた。
「だが、あの3人は一緒に行動するような柄では無い」
聞くところによると、その3人は誰が早くブロスを倒すかを競っているという。良く言えばライバル、悪く言えば宿敵だそうだ。
「やはり違ったな」
「え?」
ブロスがそう言ってから1分満たないタイミングで3人組の悪魔がやってきた。その悪魔達は昨日見た記憶がある気がする悪魔だった。その悪魔達は俺達の前に着くと、ぜぇーぜぇーと苦しそうな呼吸しながら止まった。どうやらかなり急いで来たようだ。そんなにブロスと早く戦いたかったのかな?
「そんな慌ててどうした」
「シャ…シャイナ様という方を見つけました。3人を連れて来てくれとの事だったので、着いてきてくれ。頼む」
1人の悪魔がそう言い終わると、3人が一斉に頭を下げた。
「まあ…案内してくれるなら着いていくけど…」
「ありがと!こっちだ!」
俺の言葉を聞いて頭を上げて笑顔になった3人は俺達をシャナの元まで案内してくれた。
それにしても色々とおかしい。まず、シャナに「様」を付けるのはなぜだ?それに、ここまで脅るように念押しして頼んできたのかが分からない。
「シャナの場所まで距離はどのくらいですか?」
「歩きなら4日、スピードに寄るけど走れば1日くらいだぜ」
悪魔界も広いようで、シャナはそれなりに遠くにいるようだ。
「お兄ちゃん、どうしますか?」
「うーん…。今日は駆け足で向かって、明日はそれなりに走って午前中には着くようにしようか」
全力で走れば今日の夜には着くかもしれないが、その頃には真っ暗だろう。別に夜目で見えはするが、昼間の方が見えるのは当たり前だ。どうせなら朝に着く方がいい。それに、悪魔の3人は相当急いで来たようでかなり疲れている。あまり無理をさせるわけにもいかないだろう。
「では、軽く走りましょう」
「ああ」
その後は軽く走って、仮家で寝た。まあ、軽くと言っても普通の人間なら1度進化していないと着いて来れない速度だっただろう。
ちなみに夜は悪魔達は外でいいとの事だったので野宿してもらった。そして、次の日はそれなりに走って移動した。
「もうじき着…」
「むっ…」
案内役の悪魔の言葉を遮ってブロスは突然静止した。
「どうした?」
「…かなり厄介なことになったな」
ブロスに詳しく聞こうとしたらすぐに分かるとの事だったので、とりあえず走って移動した。そして、壁が無い中が丸見えの廃墟も化した屋敷がある少し開けた場所に着いた。
「ゼロ、ソフィ、久しぶり」
「ああ…本当にな」
「お久しぶりです」
そこにはこちらの方を向くように置いた少しボロいが、1人用なのに無駄に大きい玉座のような椅子に座ったシャナとその後ろに控えるように立っている3人の悪魔とさらに後ろで片膝を着いて頭を下げる多数の悪魔がお出迎えしていた。
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