第569話 続々と
すっ…
「ん?」
ブロスがそっと俺の右側に移動した。別に特に気にすることでもない普通の行動だけど何故か少し気になった。
ドゴン!
「うわっ…こりゃまたすごいのが来てるな」
まだ遠くからでもわかるが、土煙を立てながら左から何かが一直線に向かってきている。まあ、向かってきてるのは十中八九悪魔なんだけどな。
「どおらっ!」
「ふっ…!」
そして、木々をなぎ倒しながら3m程の身長で上半身裸の筋肉もりもりの牛顔が俺にその角を向けて突進してきた。俺はその角を受け流して、地面に頭突きをさせた。また、それとほぼ同時にブロスが俺の後ろに回った。その行動に少し疑問を持った時、俺の危機高速感知が反応した。
「どおっらーー!!」
「危っね…!」
俺の斜め前方から背に大きな黒い羽根を生やした悪魔が俺に高速で落下しながら蹴りを放ってきた。俺はそれを牛顔悪魔のいる方にできるだけ威力を殺さないように受け流した。
「ごほっ…!」
その結果、その蹴りは牛顔悪魔の脇に直撃した。
「いっ…いってぇよ!」
「かほっ…!」
牛顔悪魔は蹴りを食らって吹き飛びながらも、羽根悪魔の足を掴んで横の木々の方にぶん投げた。羽根悪魔は数本の木を倒して止まった。
「…ブロスはさりげなく俺を盾にしてない?」
俺は悪魔同士でもめている今の間にブロスの不可解な行動について聞いてみた。
「悪魔が皆、我に向かってくるのは分かっている。だから同志の強さを分からせるために不本意ながら盾にしている」
「…本当に不本意ならいいけどな」
俺に初撃が防がれたことで俺の事をやってきた悪魔が意識するとは言っているが、俺を盾にする時の行動はあまりにも自然過ぎだ。やるなら事前に言った方がそれに合わせて行動できるし、楽しんであえて俺にバレないようにやっていたようにしか思えない。
それと関係は無いが、ブロスが俺よりも早く悪魔に気付くのは何か悪魔同士感じ取れるのがあるのだろうか?
「今はそんなことよりも王の方が重要だろ!」
「確かにそうだ。それにあの人間もかなりやるぞ」
俺がブロスとの話を終わった頃に、ちょうど悪魔同士の話も終わったようだ。そして、2人は一時的に協力…とまではいかないが、お互いに不可侵で向かってこようとしている。
「待て」
そして、ここからはブロスが前回のデブ悪魔と同じ流れで説明をした。すると、デブ悪魔同様に2人の悪魔は俺達の言うことを聞き、シャナを探しに向かった。飛べる羽根悪魔は見つけるのに活躍してくれそうだ。
「次が来るぞ」
「え?」
2人が去った後すぐにブロスがそう言ってきた。それと同時に地中から危機高速感知が反応し、地面から悪魔が飛び出してきた。
こんな感じでそれからはほぼずっと悪魔がブロスにおびき寄せられてきていた。そのため、俺は悪魔からの初撃を防ぐので忙しくなり、ブロスとソフィは初撃を防がれた悪魔の説明に忙しくなった。
また、ブロスとソフィが忙しくなることで、説明が遅くなることが増えた。それにより、初撃だけではなく、追撃もかなりされるようになった。まだ様子ということなのか、追撃に能力を使われなかったのが唯一の救いだな。
「今日はこれで打ち止めだな」
「やっと終わった…」
日が暮れ始めてブロスがオーラを出すのをやめて1時間ほどでブロスから終わりの知らせが出た。ちなみに、ここは日が暮れると街灯も街の光もないので完全に真っ暗になる。
「今日で38人だな」
「多いな…」
道理で俺が忙しくなる訳だ。そんだけの悪魔を相手していたら日も暮れるな。
「これだけやったらシャナもすぐに見つかりそうだな」
38人がかりの捜索ならシャナもすぐに見つかるだろう。また、戦闘狂という他の悪魔に恐れられている者による捜索なので、わざわざシャナを隠そうとする者も現れないだろう。
「……」
「ん?どうした?」
ソフィに作ってもらった家に入って今日はもう休もうとしたが、ブロスが何か考え込んでいるように少し俯いて固まっていた。
「1つだけ気になることがあったのだ」
「どうかした?」
俺はブロスの気になっているということについて尋ねた。
「我が居るとなれば我先に来るであろう戦闘狂の中でも突出して強い3人が来ていないのだ」
「それって明日以降出るってことじゃん…」
そんなブロスでも注目するような者達がまだ来ていないのは不穏過ぎる。
「今日の夜にも来るかもしれぬな」
「…見張りには気を抜けないな」
俺とソフィによる交代での見張りはその3人の悪魔のために注意深くやる必要がありそうだ。俺とソフィは順番を決めて見張りを開始した。ちなみに、順番は俺が先でソフィが後になった。
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