第568話 策
「何の手がかりも見つからないね」
「…そうですね」
悪魔界に来てもう3日目の昼が過ぎた。その間にもう何十人の悪魔を脅し…もとい説得をして話を聞いたけどそれらしい情報は持っていなかった。
ちなみに、夜はソフィの作った簡易的な家で交代で眠っている。ソフィが寝具とかを取り出してくれるおかげで気持ちよく眠れている。
「だから予定通り俺の策で行くよ」
「……分かりました」
ソフィがすごく不服そうにだが納得してくれた。俺の策というのは1日目の夕方頃には練られていたのだが、危険という問題でソフィから却下をされていた。だから3日目の昼を過ぎてもシャナの情報が全く手に入らなかったらという条件で使うことに許可を貰った。そしてその条件が満たされた。
「じゃあ、予定通りブロス頼む」
「分かった」
俺がそう言うと、ブロスは俺の中から出てきた。そして、周囲に存在感を示すかのように黒いオーラを纏った。これは俺が悪魔憑きを行っている時のようだ。ただ、俺が纏っている量の軽く3倍はあるな。
「しかし、同志ながら我を囮に悪魔を呼び出すなんて方法をよく思いついた」
「贅沢な囮だからな。それなりのが来ないと困るけどな」
悪魔の中にも戦闘狂のような者は居て、そんな者は悪魔の中で最強であるブロスが居るとなれば喜んでくるそうだ。ただ、ブロスに寄せられてくるのはこの過酷な悪魔界で今も生き残っている戦闘狂だ。つまり、何度も戦っているのにまだ生きている強者ということだ。少なくてもソフィが簡単に脅せるレベルの雑魚は来ないだろう。そんな悪魔は精霊で例えるなら最低でも中位精霊レベルで、平均は上位精霊だろう。
「それじゃあ、歩こうか」
「…はい」
ソフィはまだ不満を隠さない不機嫌そうな顔をしているが、文句を言わずに俺の後ろに着いてきてくれた。戦闘狂が来ることで俺の身に危険があることがソフィ的には許せないらしい。策的にソフィには俺が多少危なくなるまでは手を出すなといってあるしな。
「同志よ」
「わかってる!」
俺は右にいるブロスにそう言って左を向いた。そして、神雷エンチャントを行ってから剣を抜いて横の木々の隙間から現れた悪魔の拳を弾いた。
「いい匂いがすると思ったらやっぱり王じゃないか」
「早速釣れたか」
作戦を始めて30分も経って居ないが、もう現れたようだ。その悪魔は豚のような鼻と耳があり、腹がかなり出ている悪魔だった。デブなのに横から向かってきた時の速度は中々だった。さて、本題はここからだ。
「待て」
「はー?」
再び突進して来ようとしている悪魔にブロスが待ったをかけた。
「どうせなら我を使いこなしている我の契約者と戦いたいだろ?」
「なに!?王をこの人間が使いこなしてるだと!そんなん戦えたら最高じゃないか!」
ブロスが俺の肩に手を置きながら言うと、悪魔はニヤッと笑いながら俺のことを値踏みするように見回した。
「だが、今は諸事情でそんな暇がないんだ」
「なんだその諸事情って」
悪魔は急に不機嫌になって聞いてきた。
「同志の友がここで行方不明になっているのだ」
「ならそれが解決したら気が済むまで殺り合ってくれるんだな?」
ブロスが俺の方を向いてそう言うと、即座に悪魔は俺の方を向いてそう聞いてきた。
「約束する」
「迷子はオスかメスか?」
俺がそう言った瞬間に悪魔は行方不明になっているという者の性別を聞いてきた。
「女だ」
「わかった」
悪魔はそう言うと、俺達に背を向けた。
「生きてた方がいいんだよな?」
「傷も少なければなお良い」
悪魔の質問に俺はそう答えた。生死は問わないと言ったら本当に手段を選ばずに探しそうな勢いだな。
「解決したら同志に上へ魔法を放たせる」
「ああ!」
悪魔はブロスの最後の言葉に返事をすると、木々の隙間を縫うように走り去っていった。あの腹では考えられない速度と俊敏性だな。
「上手くいったな」
「ここの戦闘狂はより強い、珍しい者と戦いたがるからな」
ここが悪魔界ということでたとえ戦闘狂であっても悪魔以外と戦える場面は少ない。また、悪魔王と契約している者と戦えることなんてまず有り得ない。だから多少の苦労をしようがその貴重な機会は存分に楽しみたいと思うだろうとブロスは言っていた。だから俺もこの策が成功すると思っていた。
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