悪魔界編

第566話 悪魔界へ

「ソフィ!シャナが!」


「分かっています。落ち着いてまずは深呼吸をしてください」


慌ててソフィに詰め寄ったが、ソフィは至って冷静な対応をしてきた。そんなソフィを見て少し冷静さを取り戻しながらも、言う通りに深呼吸を3回ほど行った。


「現状分かっていることはシャナが服などを置いてあの悪魔達と悪魔界に行かれたということです」


「あ、ああ…」


冷静になって祠の方を見ると、階段にシャナの抜け殻というのか、衣服や装備が落ちている。俺が精霊界に行った時もああなっていたのかな。


「私達には2つの選択肢があります。それはシャナの帰りを待つことと、シャナを迎えに行くことです」


「迎えに行こうか」


その2択なら選ぶのは迎えに行くことだ。俺達が迎えに行ってもシャナが帰れるかは分からないが、俺達が行った方が助かるのは間違いないだろう。


「では、お兄ちゃんから先に悪魔界に移動してください」


「了解」


俺はそう言われると、ブロスを自分の中に戻して悪魔使いから悪魔界を感じ取った。精霊使いと獣使いでこの作業は慣れているのでそれはすぐにできた。そして、俺は悪魔界へと移動した。



「なんだここ…」


俺の悪魔界での第一声はそれだった。俺の目に見える光景は崩壊したであろう家々の残骸が苔むしている廃村のような場所だった。


「ブロス…凄い不気味なんだけど…」


「ここではそれが日常だ」


空も赤黒く、全体的に薄暗い。前世のお化け屋敷の廃墟なんかよりも開けているが、よっぽど雰囲気があると思う。


「とりあえず、ソフィを待つか」


俺は落ちている剣を取って腰に巻けるものを探しながらそう呟いた。それにしてもまた剣は俺と一緒にくっついてきたな。


「どうやって妹と落ち合うのだ?」


「え?」


俺は声をかけてきたブロスの方を向いて固まった。ブロスと数秒見つめ合うと、ブロスから話してきた。


「同じ場所から転移しても悪魔使いで悪魔界を感じる場所が同じとは限らない」


「え…もしかして、迷子が増えただけ?」


俺の問いにブロスは静かに頷いた。


「やっば!どうしよう!一旦戻った方がいいかな!?」


「その必要はありませんよ」


「え?」


俺が振り向くと、そこにはソフィが立っていた。


「ソフィ!」


「まずはこれを着てください」


俺がソフィの方を振り向いて駆け寄ると、ソフィは俺がさっきまで装備していた服と防具を出してきた。


「あっ…」


そこで初めて自分が全裸だと思い出した。恥ずかしくなりながらもソフィから受けとった。


「あの…振り向いていただけると…」


「分かりましたよ」


俺は着替えようとしていても変わらず俺の方をガン見していたソフィにそうお願いした。すると、ソフィは素直に振り返ってくれた。俺はソフィにお礼を言ってから着替えた。


「ソフィは何で服を持ってるの?それにもうソフィは服を着てるし」


俺はとりあえずズボンまで履いてからソフィに聞いた。今更だが、ソフィはメイスを含めて完璧に装備までしている。


「空間魔法で作ったアイテムボックスに入れていたものはここでも取り出せるのですよ」


「なるほど…」


ソフィが後から来たのは俺の脱ぎ捨てられたものを拾うためだったのか。マジックリングまで渡してくれるのは助かった。ちなみに、シャナの服と装備なども持ってきているそうだ。


「ちなみに、ここから帰る時は今着てるものとかどうなるの?」


「それはそのままで帰れますよ」


「そうなんだ」


ソフィは悪魔界のことをよく知っているようだ。この感じは何度も悪魔界に行っているな。まあ、俺が精霊界に行っている時は好きに行けたもんな。行ける場面は多かっただろう。


「よしっと」


なんてソフィと話していると、俺は装備を装備し終えた。


「妹よ。どうやって同志の元までやって来れたのだ?」


ブロスがソフィに質問した。確かにソフィは装備を整えていたということは別のところに転移してから俺のところに来たことになる。


「私はお兄ちゃんがどこに居ても居場所が分かります。ですので、悪魔界へ来てからお兄ちゃんの場所まで普通に転移してきただけです」


「お、おう…」


今回に限ってはありがたいが、なんか背筋がゾワッとするのは何故だろうか。


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