第565話 想定外?

「一応悪魔を出しときますか?」


「そうだね」


俺とソフィは何かあった時に抑止力とするために悪魔を出した。出した瞬間にブロスとディアの目が合って片方は嬉しそうな顔、片方は怯えた顔をしてすぐに目を逸らしたのを俺は見逃さなかったぞ。


「あ、俺とソフィはこれを使って悪魔を召喚してないんだけど、俺達も使えたりしないのか?」


俺はシャナが細かな手順をブリジアに聞いているであろう間に祠の方を向きながらそうドレリアに質問した。


「それは実例がないからどうか分からんな。試して見てもいいんじゃないか?まあ、召喚しても契約できないんじゃ意味が無いがな」


「それもそうだな」


もし召喚に成功したとしても、成功したと言うだけで何にもならない。せっかく召喚されてくれたのにバイバイ!となってしまう。俺の剣に埋まっている新しい玉を手に入れられる可能性があるから試さない方がいいだろう。

ちなみに、ブリジアの玉が埋め込まれている太刀だが、これも祠のように代々受け継がれていて、王となるものが装備できるものらしい。ただ、装備者が変わるとその玉に宿っている悪魔も変わるらしい。しかし、その変わり方などは王しか知らないらしい。王と次代の王が2人で祠に来て何かをするらしい。

俺の予想だと王が太刀の悪魔と契約を解除した時に次の王と契約する悪魔を連れてきてもらうとかだと思う。合ってるかは分からないけど。



「流す魔力の量で悪魔の強さが変わるってことある?」


「それは分からないのじゃが、一応皆全力で注ぐのじゃ」


ちょうど俺達の会話が途切れたタイミングでシャナとブリジアの話が聞こえてきた。俺の精霊の時もその辺は微妙だったが、悪魔もそうなのか。

ちなみに、注いだ魔力で自分と相性の良い能力を持った悪魔が現れるとされているらしい。


「ん」


そして、シャナはそれだけ聞くとスっと丸の中に手の平を付けて魔力を注ぎ出した。すると、シャナの手を置いた場所から階段を登って順に赤黒く光っていき、最終的には魔法陣が光り出した。しかし、それでも魔力を注ぎ続けると、祠の中が眩しくなるほど魔法陣は光り出した。注いでいる量で思ったが、もしかするとシャナの魔力は俺よりも多いかもしれない。ソフィに負けるのは仕方がないという諦めの気持ちがあるが、シャナに負けるのはちょっと悔しいな。


「うっ…!」


そして、シャナが注ぐのを止めたタイミングで思わず目を背けるほど激しく魔法陣が光った。



「ん…」


光が納まってから再び祠に目をやると、そこにはぎゅうぎゅうに詰められた何人もの悪魔が居た。


「俺が先!」

「俺様がだ!」

「私よ!」


そして、我先に祠から出ようとしているのか、扉で詰まって誰1人出れなくなっていた。

複数人が一気に召喚されることがあるのかを横にいるドレリアに尋ねようとしたが、目と口を大きく開けて固まっている姿を見て聞くのはやめた。その驚いた顔を見れば聞くまでもないだろう。


「…」


そんな騒がしい様子をただ見ていたシャナは階段を上がって祠の真ん前まで来た。


「うるさい」


そして、悪魔達を見上げてシャナはそう言った。すると、あんなに騒いでいた悪魔達が静かになった。


「質問にだけ答えて。この中で一番強いのは?」


次にシャナはそう質問した。確かに1人としか契約できないシャナにはその点はかなり重要になってくるだろう。


「僕です!」

「いや俺だ!」

「私よ!」


だが、誰もが自分が1番強いと思っているのか、自分だと言い始めた。


「黙れ」


「「「……」」」


シャナがそう言うと再び静かになった。シャナの統率能力は凄いな。


「あれに勝てるって自信のある者はいる?」


シャナはそう言いながら体を少し横にして悪魔達から祠の外が見やすいようにして俺とソフィのいる方を指刺した。


「あ、悪魔王様!?」

「妹君様!」

「「メイド王様!?」」


そして、俺達と言うよりも、ブロスとディアとシファを見て悪魔達は驚いた。メイド王様と驚く声が1番多かった気がするな。


「あっ」


そして、驚いた悪魔達は全員悪魔界へと帰ってしまった。


「シャ、シャナ!」


悪魔達は近くにいたシャナを連れて居なくなってしまった。

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