第562話 実験と提案

「あなたは雷の使い方得意だっ…でしたよね?」


「まず、無理に口調を変えずに最初に会った時みたいに話していいから」


シャーニは無理して敬語を使おうとしているのか、言葉使いが変になっている。王であるブリジアに勝ったから敬語を使わなければとか思っているのかもしれないが、別にそんなこと気にしなくてもいい。


「そう?ならいつも通りに話すよ。あんたは雷の使い方得意だったよね?」


「そうだな」


口調を元に戻したシャーニの質問に俺は答えた。産まれた時から雷魔法を使えるということもあり、俺は雷系のスキルが得意だと自負している。


「なら私の悪魔の能力をもっと有効的な扱い方も分かるかしら?」


シャーニはそう言うと共に悪魔化と悪魔憑きを行い、雷を手足に纏って、雷の剣を2本手に持った。


「まず質問だけど、纏える量はそれで限界なのか?」


「そうよ…」


俺の質問にシャーニは少し悔しそうに答えた。


「いずれはあんたのように全身に纏って戦闘するけど、今はそれができないからどうすればいいか教えて欲しいのよ」


「なるほどな…」


シャーニの困っていることが明確化した。しかし、俺はまだその能力について詳しく知る必要がある。


「その雷は纏った部位を強化して、武器を通してだとしても相手に当たった瞬間痺れさせれるんだよね?」


「そうね。まあ、その痺れさせるのはあんたには効果なかったけどね」


俺は雷全般効果が無いので、例外だがその痺れさせるのはかなり強いと思う。


「その雷ってどこまでも遠くまで飛ばせるんだ?」


「…試したこと無かった」


シャーニすら知らないということで、その雷がどこまで遠くまでシャーニから離れられるかを試した。最初はボールのようにした雷を投げていたが、シャーニが投げられる限界まで離れられることがわかった。さらに遠くまで行かせるために、俺の避雷針の称号などを使って色々試して見た。



「試せる限り試したけど、限界は無いっぽいね」


「こんなに遠くまで行くなんて知らなかったよ…」


色々な方法で試したが、シャーニの契約した悪魔の雷はどこまででもシャーニから離れることができた。しかし、その雷はシャーニから10m以上離れるとシャーニの制御化から抜けて、形を帰ることは出来ずに物体としてその物にかかっている力のまま進む。つまり、シャーニから投げられて10m以上離れた雷の玉は普通に投げられたボールのように進むわけだ。また、シャーニから10m以上離れた雷は3分で勝手に消えた。消えるまではシャーニは離れた分の雷は使えなかった。


「シャーニは剣よりも弓を使った方がいいんじゃない?」


「弓!?」


シャーニは弓を使えと聞いて驚いた。確かに今少し周りを見ても弓を使っている魔人は居ないな。魔人の高いステータスなら下手に弓を使わないで力でごり押すのが強いのかもしれないな。


「まず、弓なら雷を纏って強化するのは腕や肩周りで十分だろうし、相手から場所がバレた時は足に纏って移動してまた姿を隠せる」


シャーニは俺のその説明を聞いて俺の提案を少し納得していた。弓にするのにはそれらとは違う最大の利点もあると思うのだが、それは試してみないと分からないから後回しだ。


「少し試してくれないか?」


「ええ…」


俺がマジックリングの中からどこで手に入れたかも分からないどこにでもあるような弓と矢をシャーニは雷で模して作った。


「これをどこに放てばいいの?」


「えっと…俺のところに打てば?」


周りを見ても特に的になりそうなものはなかった。また、適当なところに打って誰かに当っても大変なので、5mくらい離れた俺に打ってもらうことにした。一応後ろに誰もいないところまで移動した。


「いいぞ」


「打つね」


俺は一応剣を抜いて斬れるような準備をしてシャーニが矢を打つのを待った。


「ほっ」


「っ!?」


シャーニが軽く放った矢は俺が反射的に頭を傾けたことによって頬を掠る形で俺の遥か後方まで飛んで行った。


「え…?」


「はは…まじかよ」


強化はしていないとはいえ、全力で避けにいっても掠るほど速いとはな…。剣で斬るとか絶対に無理だった。だが、俺の予想通り雷の弓で放った雷の矢は本当の雷と同じかそれ以上の速度だった。弓を初めて使ったシャーニでこれだったのだから、慣れたらどうなるかと考えたら恐ろしいな。

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