第561話 教える

「よっ!」


俺は3m程の亀のような魔物を甲羅ごと真っ二つにした。本来は危なくなったら硬い甲羅の中に隠れることから倒しずらい魔物だが、甲羅を破壊できる程の攻撃力があればただの動かない的でしかない。


「この辺の魔物はもう全部片付けたぜ」


「ならもう日も暮れそうだし、村に帰るか」


今、俺達は魔人の村を拠点として魔物を狩っている。村の近くの魔物を狩るのは魔人達からしても助かるらしい。


「さすがにまだ上がらないな」


魔物を狩る道中は常に悪魔憑きを行っていたが、1日ではスキルレベルは上がらなかった。これは長い戦いになることを覚悟しないといけないかもしれない。



「帰ったぞー」


「お!帰ってきたのじゃ!」


俺達が村に戻ると、ブリジアが歓迎してくれた。


「それで今日の成果はどんな感じなのじゃ?」


「こんな感じだ」


俺は村の外に今日狩った魔物を出した。この辺にいる魔物が大きいということもあり、2階建ての一軒家位の高さの山になるほどの量だった。


「こんなに狩って来てくれたのか!」


それを見てブリジアは大喜びだった。魔族の襲撃を警戒すると、あまり多くの魔人が狩りに行くことができない。そのため、食料不足とまではいかないが、備蓄はあまり無いらしい。もしもの場合は村を放棄して逃げることも考慮するとするなら、もっと備蓄は欲しいらしい。


「解体に取り掛かるのじゃ!」


「「「おぉー!!」」」


取ってきた魔物は平の役職の者が解体に取り掛かってくれた。解体をしなくても良かったからこそのこの成果だ。解体してくれる者には感謝だな。


「ゼロス、ちょっといいか?」


「ん?何?」


解体している様子を眺めていると、ドレリアから声が掛けられた。ちなみに、解体を眺めていたのは、魔物や魔族が現れるのを警戒していたからであって、暇だった訳では無い。外で解体を行っているから危ないからな!



「明日は戦い方を希望者に教えてくれないか?」


「戦い方を?」


別に悪魔の能力を使った戦闘をソフィはともかく、俺は得意としている訳では無い。だって傷を付けるだけでいいから、普通に戦っている。だから悪魔の能力の上手い使い方は教えられない。


「普通の武器や魔法の使い方を教えて欲しいんだ。良くも悪くも私達魔人は技術よりも力でゴリ押しをする傾向にある。それを悪いとは思わないが、それに向かない者がいるのも事実だ。そこで、技術的なことを教えて欲しい」


「なるほど」


確かに比較的ゴリ押しをする方の俺やベクアであっても技術というか、技を大事にしているところがある。魔人はそこが大雑把になりやすいそうだ。また、村を出たことがある者が居ないので、戦い方のレパートリーがあまり多くないらしい。


「他のみんなにも聞いてからね」


「分かった」


それからみんなに聞いたら別にいいよとの事だった。エリーラは面倒と渋っていたが、聞かれた時だけ答えればいいからと少し説得したらすぐに了承した。



「いいってさ」


「ありがとな」


それをドレリアに伝えると、軽く礼を言われた。これで明日の予定は狩りではなくなった。まあ、今日のようなペースで食べるものが増えたら備蓄ができなくなるくらいの量になりそうだしな。

その日は狩ったらばかりの新鮮な魔物をみんなで食べて夜を明かした。ちなみに、昨日酒を飲みすぎたということもあってか、あまり飲んでいなかった。




「今日は私や側近、そしてこやつらが戦い方をおしえてくれるそうじゃ!自分で教わりたい相手を選んで、好きに教わるのじゃ!もちろん、側近やこいつら同士が教え合うこともあると思うが、その時は臨機応変に判断するのじゃぞ!」


ブリジアがそう言うと、個々で教えて貰いたい相手のところへ移動し始めた。その際、ベクアとドレリアはすぐに一緒になった。2人ともパワー系ということもあり、お互いに学び合いたいのだろう。



「…さて、どうしよう?」


みんなのところに魔人達が集まりだした。特にソフィが1番人気だ。ソフィの周りに男がちょっと多い気がするけど、気のせいではないだろう。そこはちょっとモヤッとするが、まあいいだろう。今の問題はそこじゃない。



「誰も来ない…」


俺のところに誰も来ないのだ。理由としては王に勝ったし、悪魔王と契約しているということで遠慮しているのだろう。そう思うことにしている。俺もどこかに混ざって教えて貰おうかな?と考えていた時だった。


「ちょっと…」


「ん?」


肩を後ろから遠慮がちにちょんちょんと軽く叩かれた。俺が後ろを向くと、居たのはシャーニだった。


「雷の使い方を教えて欲しいんですけど…」


「いいよ!」


俺のところにも教えて欲しいと言ってくれる人が居てよかった!


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