第559話 勘違い
「あ、はい」
とりあえず、ソフィの言う通りに椅子に座ってソフィのいる机の向こう側に腕を伸ばした。ソフィは俺の服の袖を捲って腕を出してきて、二の腕を魔法で出した紐のようなもので少しきつく縛った。
(あ、これ採血か献血や)
ここで俺が勘違いしていたことにやっと気がついた。
「もしかして、首に噛み付いて吸われると思いましたか?」
「…あの言い方だと普通そう思うだろ」
俺は恥ずかしさからソフィから顔を背けてそう言った。あの言い方で寄って来るなら勘違いするだろ…。
「期待していたみたいなので…」
ソフィがそう言いながら机を乗り越えて俺の方にやってきた。そして、ソフィは俺の首筋を撫でると顔を近付けた。俺は噛み付かれる痛みに備えて目をぎゅっと閉じた。しかし、首筋にキスをされると、ソフィの顔は離れて行った。
「ふふっ冗談ですよ。ここで血を吸ってパワーアップしても意味ないじゃないですか」
「ソフィ…」
ソフィはそう言って再び机の奥へと戻って行った。俺は抗議するようにソフィを睨んだ。
「パワーアップ以外に吸うとしたら2人っきりの時ですよ」
「なっ…!」
「余達は何を見せられてるんじゃ?」
「さあ?」
俺はブリジア達の発言で我に返って少し恥ずかしくなってしまった。俺はそれを誤魔化す為に下を向いてため息を吐いた。
「それでどうやって血を抜くの?」
俺は話題を変えてソフィにそう聞いた。普通なら注射器で抜くと思うのだが、注射器なんてものはもちろん無い。仮にあったとしても注射器ごときで俺の防御力を突破して針を差し込んで血を抜くことはできない気がする。
「簡単ですよ。痛みに気をつけてくださいね」
「え?」
ソフィはそう言うと魔法で作った注射針くらいの遅さの鋭利な針を俺の腕に放って突き刺した。
「いっ!」
「動かないでください」
その魔法は無属性と風魔法の複合魔法のようで、刺した腕から血を吸い上げていた。吸い上げた血は空間魔法で作られた箱に入れられていった。
「ソフィ…」
俺はソフィに抗議するような目線を送った。前もって教えてくれていたらこんなびっくりしなかったのに…。
「教えていたら力が入ってちょうどいい刺し加減に調整ができませんでした。それに、血を抜くのならこれが最適だと思いますよ」
「そうだけど…」
ソフィの言うことに納得できるが、それでも腑に落ちない。とりあえずソフィから血を抜かれ続けた。
「ハイヒール」
そして、ソフィが満足する分抜き終わると、魔法を解除して傷を治してくれた。抜いた血は時魔法で劣化するのを防ぎながら大切に保管するらしい。
「ちょっと抜き過ぎじゃない?」
「致死量までは抜いていませんよ。800mlくらいですよ」
確か献血の時に抜く量は400mlくらいじゃなかったか?それの倍近く抜いたが、大丈夫だろうか?
「今は軽い貧血のようになっていると思いますが、お兄ちゃんなのですぐに治りますよ」
「その根拠の無い過剰評価は何なんだ…」
しかし、俺の予想と反して10分も待たずにいつも通りの元気が戻ってきた。ソフィの回復魔法が良かったのか、俺の再生能力が高かったのかは分からないが、ソフィの予想通りになった。
「話し終わった?」
「あ、終わったよ」
ちょうど俺が元気になったタイミングでシャナが俺達の所へやってきた。完璧過ぎるタイミングだが、話が終わったというのを心眼で分かって来たのだろう。つまり、シャナは近くで待機していたのかな?
「なら次私が話していい?」
「誰に話があるの?」
俺がそう質問すると、シャナは俺達4人を順に指さした。どうやらこの場にいる全員に話があるようだ。それにしても、シャナから話があるというのは割と珍しいことだろう。なんて考えていたらシャナは俺達4人の方を向いて話し始めた。
「悪魔と契約したい。協力して」
シャナは俺達にそう言ってきた。
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