第558話 魔人が進化すると

「ううぅ…頭痛い…」


「大丈夫かこれ…」


朝になってみんなと同じ頃に起きると、村は頭を抱えてうめき声を出している魔人のオンパレードだった。


「くるしいのじゃ…」


「強い種族だからどんなに遅くても午前中には元通りになるから大丈夫だ」


「あ…そう…?」


苦しんでいるブリジアを引き摺りながらドレリアがやってきてそう言った。昨日も聞いたが、ブリジアの小柄で可愛らしい童顔なのに男勝りの口調というのはギャップがあっていいな。


「鬼の姉者は後5分も経ったら治るから心配はいらないぞ」


「なら良かった…?」


とはいえ、その5分の間はきついようで頭に手をやって呻いている。


「ちょっと話いことがあったんだけど、妹と一緒にいいか?」


「あ、うん」


俺はソフィを読んで昨日戦った場所の近くにブリジアを引き摺っていくドレリアについて行った。それにしても、背の低い妹に引き摺られる姉の姿は滑稽に見えてしまう。ちなみに、ソフィが妹ということは昨日皆の前で話した。



「さて、話したいことは妹の種族についてだ」


「…」


ドレリアにそう言われて、ソフィの方を見たが、ソフィは無表情でドレリアを見つめていた。


「この様子じゃあやっぱり言ってなかったみたいだな。だが、ここで口止めをしないところを見ると、いつかは言わないといけないと分かっていたってことか。まあ、自分で言うよりも人から言われた方が楽って時もあるもんな」


ドレリアはそこからソフィの反応を待たずにすらすらと話して言った。


「まず、一般に魔人というのはただの魔人という種族で見た目的には普通の人間と差は無い。もちろん、ステータスや悪魔と契約しやすいという違いはあるけどそれは些細なもんだ」


魔人は人間と比べて悪魔と契約しやすいというのは初耳だ。


「ただ、その魔人が1度進化すると話は変わってくる」


ドレリアはそう言いながら自分の角を指さした。


「魔人が進化するとこういう風に元となった祖の者の特徴が現れる。そんな魔人のことを村ではより祖の力を受け継いでるってことで簡単に強祖魔人って呼んでる」


魔人というのは始祖と呼ばれる魔人が元になって産まれてきたとされているらしい。そして、その末端となる魔人が進化すると始祖に少し近付いて角のような特徴が現れる強祖魔人となるらしい。確かにドレリア以外の側近にもワンポイントの特徴があったな。


「あ!?」


俺はそこでソフィのことを見た。ソフィも一度魔人から進化して強祖魔人となったはずだ。


「…お兄ちゃんなら構いませんが、そんなにじろじろと見られると少し照れますよ」


「あ、ごめん」


こう言ったら悪く聞こえるが、俺はソフィの全身を隈無くじろじろと見た。


「…あれ?」


しかし、ソフィの体には前と変わったところは見当たらない。もちろん、服で隠れているところにあるのかもしれないけど。


「普通は進化した魔人同士でもはっきりと相手の特徴に現れた祖は分からないけど、私達に近いものだからたまたま分かったんだ」


ブリジアとドレリアは確か鬼の姉妹何だよな?鬼に近い祖とは一体何だろうか?


「お前は吸血鬼だよな?」


「そうですよ」


ソフィはドレリアの言うことをはっきり認めた。


「吸血鬼は鬼の身体能力を持ちながら魔法も得意とし、血を飲むことでさらにパワーアップする完全な鬼の上位互換だ」


「凄いじゃん!」


ただでさえ強かったドレリアやブリジアの上位互換というのはかなりソフィは強いだろう。


「ただ、その分弱点も…」


「私に弱点はありませんよ。ついでに八重歯が生えてきたなんてこともありません」


「何じゃと?」


ここで二日酔いから復活してきたブリジアが話に加わってきた。ちなみに、ソフィは口を開けて歯を見せてきたが、いつもの綺麗な歯並びなだけで鋭い八重歯が生えているとかもなかった。


「私はお兄ちゃんの血でしかパワーアップしない代わりにその弱点もありませんよ」


「なんだその「制〇と〇約」みたいな効果は…」


どっかの長期間休載している漫画にあるような能力だな。


「そんなことできるのじゃな…」


「聞いたことないな…」


ほら、魔人の2人もかなり驚いているじゃないか。


「ただの吸血鬼ではなく、真祖という吸血鬼なので普通とは違います」


吸血鬼と一括りにしても色々あるようだな。


「それでお兄ちゃん、血を貰ってもいいですか?」


「あ、うん。いいよ」


俺がそう言うと、ソフィは俺のすぐ側にきた。吸血鬼という種族が血を必要としていることくらい分かるので、俺は首を少し傾けて吸いやすいようにして目を閉じた。




「ここに座って腕を出してください」


「…え?」


いつまでも噛み付いてこないなと思ったらソフィは魔法で椅子と机を出していた。


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