第554話 勝負あり
「うぐっ!」
「ぐはっ!」
俺と王の攻撃が共に当たって2人とも吹っ飛んだ。
「「ハイヒール」」
2人ともダメージがあるので、この回復している隙に攻撃するということはなかった。今は回復せずに攻めても自分が辛いだけだからな。
「ふぅ…」
この相打ち覚悟で攻撃するようになってからこの攻防…いや、防いでないから攻攻だな。攻攻を10回ほどやっているが、3回に2回程度は攻撃を当てられている。逆にその当たらない1回は透けられてしまっている。しかし、王からの攻撃を俺は必中でくらっている。とはいえ、精霊使いと獣使いで魔力とスタミナがほぼ無限である以上、長期戦で得をするのは俺だ。
「っ!」
なんて考えていると、王が転移してきた。俺は先と同じように攻撃した。しかし、今回は俺の攻撃が王に当たっても王の刀が俺に当たることはなかった。ついに王が刀を上手く振れなくなる時が来た。これを待っていた俺は吹っ飛んだ王に追撃した。
「雷龍」
俺は王が着地する前に王の腹に手を当てて直接雷龍を放った。
「がはっ…!」
雷龍は透過で透かされることも無く、王に命中した。しかし、まだ王の意識は残っていた。もう1発放とうとしたが、俺の手が王の腹から離れた瞬間に王は転移した。すぐに場所を見つけた俺は雷縮でまた接近した。しかし、また転移で逃げた。俺も再び雷縮で追おうとしたが、刀を地面に刺して両手を上げているのを見て止めた
「…刀のスキルを封印された時点で余の負けじゃ」
「え!」
王は急に降参をしてきた。これは俺も予想外だった。場外では盛り上がっている声が聞こえていたが、一瞬で静まり返った。
「しょ…勝負あ…」
「待つのじゃ!」
審判が少し震えながら「勝負開始あり」と宣言しようとしたが、それを王が止めた。
「最後に一太刀付き合ってもらって欲しいのじゃ」
王はそう言うと、悪魔憑きを解除して鞘を背から取り出して左手に持つと、刀を戻して居合斬りをするように構えた。
「わかった」
俺は王の提案を受け入れて、俺は封印したスキルを全て解除した。
「ありがとうなのじゃ」
スキルを返したのがわかったのか、王は優しい声でそう言った。
「この勝負は余の、そして我々の負けじゃ!じゃが!これより一矢向いて見せる!」
王はそう宣言すると、魔力纏を3倍程にして腰を深く落とした。
「よし!」
俺は雷電エンチャントの1つを神雷エンチャントに変えて、剣を構えた。
お互い動かないままどれくらい時間が経ってあろうか。感覚的には数分は経っていたと思うがら実際は10秒ほどだろう。砕けた地面の石がコロッと転がった音を合図に俺と王は同時に走り出した。
「一閃」
「はあっ!」
そして、俺の2本の剣と王の居合の刀が交わって、お互い通り過ぎた。アニメで良くあることを俺がやるとはな。
「いって…」
俺は剣を2本とも離した。王の刀が重く、手首を痛めたようだ。俺は痛む手首を我慢しながら後ろを振り返った。その時にちょうど俺が弾き飛ばした刀が地面に落ちてきた。
「ぐふっ…」
そして、王は肩から斜めに2本の斬り傷を作って前のめりに倒れた。
「しょ…勝負あり!」
俺は審判が勝負ありと宣言してすぐに王に駆け寄った。
「意識はあるか!」
「…完敗じゃったな」
王は意識があったようで俺が仰向けにして話しかけると応じてくれた。
「これを飲め」
「ありがとうなのじゃ…」
俺はエリクサーをマジックリングから取り出して王に飲ませた。横になっている頭を少し持ち上げているので手首がそれなりに痛いが、それぐらいは我慢だ。それにしても剣の刃は潰していたが、本気で振るとスパッと斬れるんだな。
「うむ!元気になったのじゃ!」
王はエリクサーを飲んで傷を完全回復して立ち上がった。
「えっと…とりあえず前隠そうか」
「ん?あっ…失礼したのじゃ…」
俺が前を斬ってしまったことで服も綺麗に切れていた。立ち上がった時に服が広がって豊満なものが見えそうになっていた。俺が顔を背けている間に王は服を新しく取り出して着た。
「余は転移が防がれたことなくて天狗になっていたようじゃ。今日はいい勉強になったのじゃ!」
王はそう言って手を差し出してきた。俺はその手を取って握手した。
「えっと…お主の名はなんじゃ?」
「俺の名前はゼロスだよ」
握手しながらきょとん?とした王に俺の名前を伝えた。
「ゼロスよ!また戦おうなのじゃ!」
「ああ!」
こうして、俺達の勝ちで勝ち抜き戦が終わった。
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