第549話 相性最悪
「確か相手はウィロンっだったか?」
「そうだと思うよ」
エリーラの対戦相手として場内に入って来たのはウィロンと名乗った魔人の男だった。その男は一見するとローブを纏った普通の青年だが、耳は青い魚のエラのような形をしている。エリーラはレイピアを出し、ウィロンは杖を出した。相手が魔法を主に使ってくるとしたら精霊化で通常の魔法が効かないエリーラが有利かもしれない。
「勝負開始!」
何て考えていると、エリーラが精霊化を行い、ウィロンが悪魔化と悪魔憑きを行った。
「水龍」
エリーラが先手必勝とばかりに龍の形をした水の塊をウィロンに放った。しかし、ウィロンは全く動じずに水龍に飲み込まれた。それを見て少し心配をしたが、それは水龍が全て地面にあたり、弾けて普通の水として地面に散らばった時にはウィロンの姿は無くなった。
「は!?」
エリーラの驚く声が聞こえてきた。ウィロンが場内のどこにもいないのだ。しかも俺の魔力感知でも居場所が分からない。エリーラは居場所を探すためにキョロキョロと辺りを見渡した。俺も舞台を見渡しているが、どこにも姿を見つけることが出来なかった。そんな中、突然エリーラの真後ろから土魔法のの槍が放たれた。
「なっ!」
エリーラは突然のことに全く反応ができなかったが、その槍はエリーラの腹をすり抜けた。精霊化のおかげで魔法が効かなかったのだ。そこからは様々な属性による魔法が四方八方から放たれ出した。
「ちっ…!」
そんな中、1つの魔法がエリーラの頬を掠めて血が流れた。そこからは無属性魔法が効くと分かられたのか、無属性魔法のみが放たれるようになった。しかし、エリーラもただ魔法を避けていた訳では無い。
「サンダーボール!」
エリーラが雷魔法を放つと、ウィロンは水溜まりから出てきた。
「水の中に入る能力…相性最悪ね」
ウィロンの悪魔の能力は水の中に溶け込む能力だった。しかも溶け込んでいる最中は魔力感知しても意味が無い。だから水と言ってもどの水に居るかは分からない。ただ、雷魔法を避けたことから水の中でもダメージを受けるだろうということはわかった。ただ、物理攻撃は受け付けていないように思える。
「ファイアアロー!」
「マジックアロー!」
それからはエリーラは水系の魔法を使わずに戦った。しかし、それだとウィロンの方が圧倒的に上手で何度も魔法を食らって浅くは無い傷ができていた。
まあ、確かにウィロン相手に1番得意な雷を封印して戦えと言われたら俺もキツそうだ。
「はあっ!」
そんな不利な状況でエリーラは何とかウィロンに接近した。そして、持っているレイピアで突き刺そうとした。しかし、ウィロンは地面にある水に溶け込んで避けた。ウィロンはこうなることを読んでいたのか、無属性魔法を放つ合間に水魔法も使って地面の水を増やしていたのだ。
「こうなったら…!」
エリーラは隠れたウィロンを無視して場内の真ん中に立った。そして、精霊化を精霊降臨に切り替えた。
「津波!」
そして、場内のある水を全て押し流す勢いの津波を全方位に放った。柵が壊れると思ったが、エリーラの放った津波は柵には当たらずに乗り越えて来た。
「シャナお願い」
「ん」
俺がそう言うと、シャナは外に出た津波を誰にも当たらないように操作し、津波は魔人や俺達を避けるように迂回した。俺らの仲間が使った魔法の後始末は俺達がやらないと行けないからな。とはいえ、まだ戦っていない俺やソフィは少しでも力を見せたくないからシャナにお願いしたわけだ。
「ふぅ…」
津波が消えて場内を見ると、津波の分の水は残っているが、ウィロンの姿はどこにもなかった。審判はウィロンが居るか居ないか分からずにキョロキョロしていた。ちなみに、審判には津波が当たらないようにエリーラが操作していた。
「ふっ…」
エリーラはニヤッと笑ったと思うと、地面の水をすぐに集めて場外へ放り投げた。精霊降臨中は周りにある水を操れるからそれを行ったのだろう。
そして、ウィロンは慌てた様子で場外に出る前に水の中から出た。すると、ウィロンの前には投げた水を追って駆け出していたエリーラが居た。
「はあっ!」
エリーラはレイピアを突き出した。そのレイピアはウィロンの腹に刺さったが、貫通する前に杖で弾いた。腹には深い切り傷ができたが、内臓にはダメージがないだろう。そういえば、水に潜った時に杖も一緒に潜れるのか。
「ほあぁ!」
「くっ!」
エリーラはレイピアを弾かれた時に少し体勢が崩れて倒れかけていた。そんなエリーラにウィロンは上から杖を振り下ろした。エリーラは負けじとレイピアをもう一度突き出した。
「勝負あり!」
結果はエリーラが気絶して負けてしまった。
「うっ…」
しかし、エリーラの最後の一撃はウィロンの太ももを貫通していた。
「ウィロン!そんな怪我をして残りの2人と戦うのはきついじゃろ!後はアダマーと余に任せて降りて来るのじゃ」
「はい…」
王からの助言でウィロンは次の対戦を危険ということで場外へと向かった。
「最後のあれがもう少し早ければ勝てたか?」
「どうだろうな」
エリーラは身体中に傷があったので、全速力では走れなかっただろう。しかし、それが原因で水から出てきた瞬間のウィロンに攻撃できなかったかと言われれば微妙なところだ。ただ、水から出てきた瞬間に攻撃できていたらもっとその後の流れは有利になっていたとは思う。
エリーラは審判にポーションをかけて貰ってからベクアに抱き抱えられて連れてこられた。
「行ってきますね」
そして、ベクアと入れ替わる形でソフィが場内へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます