第547話 地味だけど
ダンッ!
悪魔化と悪魔憑きと魔力纏をしてすぐ、ドレリアは力強く地面を踏んでシャナに向かっていった。そのスピードは速いが、アディほどでは無い。アディの動きを見切れたシャナなら余裕で見切れるだろう。
ドレリアはシャナに近付くと金棒をシャナの頭目掛けて振り下ろした。しかし、その金棒はシャナが外すように意識を操作したのか、シャナの左横に振り下ろされた。
ドゴンッ!!!
そんな激しい音と共に場内が大きく凹んだ。その衝撃は離れている俺達の地面も揺れているほどだ。当然、真横に居たシャナはもっと凄まじい衝撃だったようで、よろけてしまっていた。
「うっ…!」
シャナはすぐに体勢を立て直してドレリアから距離を取った。ドレリアはそれを追うことなく、金棒をゴルフのように振った。すると、地面から削られた石床の破片がシャナに襲いかかった。シャナはその破片を鎌で防いだ。
「これでシャナの力はある程度分かられたでしょうね」
「と言うと?」
ソフィ曰く、さっきの破片を防御したということでシャナが攻撃を外させるのは接近戦もしくは、単純な攻撃だけだと分かられたそうだ。ドレリアは破片をシャナに飛ばしてからは一呼吸おいていたのが、ソフィの考えを裏付けている。なぜなら、普通は優勢なのだから攻め続けるだろう。しかし、それをせずにシャナに対してどう戦うのかを考えているのだろう。戦い方は脳筋のようだが、実際はそうでも無いらしいな。
「ファイアボール」
ドレリアはファイアボールと呼ぶには不釣り合いな火の玉を出した。そのファイアボールは軽く3mはあるだろう。
「ふっ…!」
ドレリアはそのファイアボールを金棒をバットのように振って打った。すると、ファイアボールは前にいるシャナの方へ細かくなって飛んでいった。
「…アディ大変そう」
もちろん、無差別に細かくなって飛んでっているので、場外にもファイアボールの破片は飛んでいる。その破片はアディが飛びながら全部斬っている。勝負が終わっても忙しいのって大変だな。
俺は忙しそうなアディから目線を場内に戻した。ドレリアはファイアボールを何個も作ってシャナに向かって打っている。シャナはそれを鎌や鎖で防いだり、避けたりしている。
「だんだん近付いてるな」
「そうだね」
ベクアの言う通り、ドレリアは少しずつシャナに近寄っている。ゼロ距離で打たれたらシャナは防げないだろう。だが、相手の思考を読めるシャナがその事に気が付かないはずがない。
「っ!」
シャナがドレリアにバレないように少しずつ近付けていた鎖がドレリアの全身を巻き付いた。そして、シャナはドレリアを吹っ飛ばす魔法の準備を始めた。
「らあっ!」
しかし、ドレリアは力ずくで右腕を鎖から解き放ち、金棒をシャナの方へ投げた。シャナは慌てて魔法の準備をやめて鎌でギリギリのところで弾いた。ただ、重い金棒がドレリアの力で投げられたこともあり、少し後ろにふらついた。その隙をドレリアは逃さなかった。ドレリアは金棒を投げた瞬間に鎖に巻かれたまま地面を蹴っていた。
「捕まえた」
「かはっ…!」
ドレリアは前方に高く弾かれた金棒をジャンプしてシャナの方に殴り飛ばした。そして、ドレリアも空を蹴ってシャナの方へ急降下した。シャナは金棒を再び弾くことはできたが、ドレリアの対処ができなく、ドレリアに首を掴まれた。
「うっ…降参」
ドレリアが首を持っている手に少し力を入れたようでシャナは苦しい声をあげ、すぐに降参した。
「勝負あり!」
いつも無表情なシャナは珍しく悔しそうな表情で俺達の元へやってきた。ちなみに、ドレリアも場外に出て、場内の石床の貼り替えをするそうだ。
「最後の空を蹴ったのが悪魔の能力だと思うか?」
「いや、それは能力として弱過ぎる」
俺のダーキのサイコキネシスの一部でできることを側近が能力として持っているとは思えない。
「多分、悪魔の能力はあの馬鹿力でしょうね」
「俺もそう思う」
ソフィと俺の意見が一致した。さすがにあの力は素の能力としては少し不自然だ。悪魔の能力としては少し地味だが、今の力任せでどうにでもなる戦い方を見たらもうそうとは思えない。
「次は俺でいいよな?」
「いいわよ。私はあんな馬鹿げたのと戦いたくないわ」
俺はちょっと戦ってみたいが、ベクアが行きたがっているし、ベクアとドレリアは相性は悪くないと思うのでいいだろう。まあ、魔法を弾けるので、エリーラとソフィとは相性が悪いから、俺とベクアの二択だしな。それに俺も魔法を弾かれたら面倒だからベクアが適任だと思う。
「じゃあ行ってくるぜ!」
ベクアはそう意気込みながら直ったばかりの場内へと向かっていった。
「勝負開始!」
ドレリアも場内に入ると、勝負が始まった。お互いに魔力纏も含める強化を行った。
「ちょま!」
「あの馬鹿…」
そして、シャナの時同様に真正面なら向かってきて金棒を振ってくるドレリアに対抗するようにベクアも真正面から向かっていき、その金棒に拳をぶつけた。
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