第546話 短期決戦
「うっ…!」
ここでキャリナはまた防戦一方になってしまった。アディが浮かんでいることで、動くために地面を蹴る必要もないため、動きの予備動作が無くなった。そのため、動きを予測することも難しい。キャリナは何度か攻撃を掠ることも多くなってきた。
「えっ…!」
そんな時、アディが魔力を纏った。魔力纏をまるで当たり前のようにやるとはな。
「アイスバーン!」
さすがに追い詰められたであろうキャリナがソフィから借りていた氷魔法を使った。この魔法は広範囲の地面を凍らせるだけではなく、巨大な氷の棘を多数出現させる魔法だ。
「よっ…」
アディはキャリナから距離を取りながら地面から出現した棘をナイフで斬った。すると、キャリナの魔法はパンっ!と弾けるように消えた。
「ゼロスのやつだな」
「あれは魔法斬りかな?」
今のは俺も取得していた魔法斬りだと思う。それが魔力斬りまで進化しているかは分からないが、俺以外に取得している者を初めて見た。
その後もキャリナは纏っている闇を地面に伸ばしてみたりと、工夫して戦っていたが、どれもアディには効果はなかった。そして、キャリナは手を出し尽くしてしまったので、次鋒のためにできる限り疲れさせようとキャリナは頑張っていた。つまり、勝敗が決まるのは時間の問題だった。
「参りました」
「勝負あり!」
最後はキャリナの首に2本のナイフを付けられてキャリナが降参をした。
「やっぱり負けてしまいました」
「キャリナの仇は俺が…」
「どう考えても相性が良くない」
次鋒として場内に行こうとしたベクアをシャナが止めた。確かにキャリナの言う通り、ベクアは相性が悪い。ベクアがあの素早いアディを捉えられるとは思えない。
「私が行く」
シャナは行こうとするベクアを押しのけてそう言った。
「どの属性の魔法が使えるかどうかも暴けませんでした」
「悪魔の能力と魔法斬りがわかっただけで十分」
少し落ち込み気味なキャリナをそうシャナが慰めた。
「それに、魔法を使われる前に終わるから一緒」
シャナは最後にそう言って柵の方に歩いていった。
シャナはああ言ったけど、短期決戦にするつもりなのか?確かに勝ち抜きというルールにおいては短期決戦の方がスタミナの消費も少なくていいけど、そんなことできるのか?
「勝負開始!」
シャナが場内に入って大きな鎖鎌を出すと、勝負が始まった。すると、アディは速攻といった感じで最初から飛んでシャナに近寄った。そして、シャナの元へ行き、攻撃をしようとしたところでアディは地面に不自然にバタン!と落ちた。落ちた時に首元にはシャナの鎌があった。
「…降参します」
「しょ、勝負あり!」
早くもシャナの勝利という形で勝負が終わった。本当にシャナの言う通りの短期決戦になった。
アディも次の勝負を考えて短期決戦にしたくて自ら飛んで向かったのだろうが、もう少しシャナを警戒するべきだったな。
「えげつないな」
「怖いな」
シャナが今したことは多分「飛ぶ」という思考を「飛ばない」に操作して、悪魔の能力を強制的に切ったのだろう。操作した箇所は少ないのにこんなに脅威となるのか。
「あはは…」
こちらに向かってピースをしているシャナを見て俺は乾いた笑いしか出なかった。俺もダーキの足場を蹴ろうとした時に同じことをされたらと考えたら他人事として考えられなかった。シャナと戦う時に自分から攻めるのは愚策かもしれないな。
「おっ、次はあいつか」
何てことを考えていたら魔人側の次鋒が出てきた。
次鋒もまた女の子?のドレリアで身長は140cmもないと思う。しかし、特徴的なのか額の少し上から生えた長い1本の青黒い角だろう。シャナにどう戦うのかと思っていたら、武器をマジックリングから取り出した。
ドンッ!
取り出した武器はドレリアの身長よりも余裕で大きく、150cmはあるであろう巨大な金棒だった。金棒は持ち手は細いが、持ち手から先が急に太くなっている。そして、ちゃんとゴツゴツとした突起も生えている。
「どんだけ重いんだよ…」
置いた時の衝撃で地面が凹んでいた。そんなに重く巨大な金棒をあんな小柄なドレリアが振り回せるのか?
「勝負開始!」
何てドレリアの心配をしていたら勝負が始まった。
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