第490話 順調+別視点

「うーん…」


出発したその日に俺は1人で竜車の上に乗って、月の光にかざして闇皓翠と光皓翠を眺めていた。

ちなみに、異世界だからといって月が2つあるということは無い。前世の月と違うところは青白い冷たい光を放っていることくらいだ。



「こんな夜更けにどうしたのですか?」


「あ、起こしちゃった?」


俺がそんなことをしていると、下からソフィが上がってきて俺の横に座った。


「いえ、元々起きていただけですよ」


「そっか」


今は深夜2時くらいだから誰も起きていないと思っていた。


「それで、剣を眺めてどうしたのですか?」


「いや、ちょっとね」


そういえば、ソフィにあの白い鉱石を剣に混ぜとけと神に言われたというのは話していなかったはずだ。まず、それをソフィに説明した。



「つまり、神が何故混ぜろと言ったのかが気になるということですか?」


「うん。確かに斬れ味は混ぜたことで前よりも上がったけど、あれが混ぜろという程の変化ではないんだよね」


別に前から斬れ味が足りないとか思っていた訳では無い。だから別に斬れ味が上がることくらいの変化をさせるために神が急かすとは思えない。


「相変わらず肝心なことは言わない奴ですね」


「本当にね」


はっきりとは言えないからヒントをくれているのだろうが、どうせならはっきりと言ってほしいと思ってしまう。


「あの神の考えを予測しようとしても無駄でしょう。だから余計なことは考えずに早く寝ましょう。明日からも移動は長いですよ」


「それもそうだね」


俺は剣をしまって竜車の上から降りて竜車の中へとソフィと共に入っていった。




「よし!じゃあまたな!」


「ここまでありがとう」


「ベクア様方、ここからは深林ですので、油断せずにお気を付けて」


何日も竜車に揺られると、深林までやってきた。ここで竜車とそのゾーリとウーマンとはお別れだ。


「俺らが油断するような真似をすると思うか?まだ1対1だと負けるかもしれない魔族が潜んでいるかも深林に入るのによ」


ベクアがゾーリに挑発するようにそう返答した。


「一応言っただけですよ。ゼロスもベクア様とキャリナ様のことよろしくな」


「ああ」


ゾーリはそう言い残して、竜車に乗って来た道を引き返して行った。



「さて、俺らも行くぞ!」


ベクアはそう言って俺の方を向いた。まあ、深林へと入るためには高い壁を突破しないといけない。


「近くに集まって」


俺が魔法を構築しながらそう言うと、みんながそっと近付いてきた。


「転移」


そして、ユグ精霊魔法の転移を使って深林の中へと入っていった。


「じゃあ行くぞ!」


「ああ」


そして、向かってくる魔物を時に倒し、時に躱しながらショートカットするために深林を突き進んだ。走るペースも速いからか、これなら10日もかからずに王都に到着することができそうだ。

俺達は特に緊急事態もなく、王都へと着実に進んで行った。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


イム視点



「ふんふーん♪ダーリンはそろそろ王都に着く頃かな〜?」


僕はダーリンのことを今日も観察していた。

ダーリンは王都に早く到着できるように深林を通っているみたい。直線で向かっているので、行き先が王都というのはすぐにわかる。



「あ、そうだ!これをダーリンに殺ってもらおっか!」


僕は用済みになったやつを見上げながらそう言った。僕ながらいい案が思いついた。


「でも、ダーリンだけじゃなくてその他も一緒に殺ろうとしちゃうか…」


僕はダーリンを育てたいだけで、その他に関しては別にどうでもいい。ダーリンが得れる経験値が減るからむしろ邪魔なくらいだ。



「まあ、有象無象じゃ何も出来ないからいっか!」


どうせ生半可な攻撃じゃダメージにすらならないから気にしなくてもいいよね。



「よし、じゃあ行ってらっしゃい!」


「グゴォォォォ……」


僕はダーリンの居る王都に向けて一直線で用済みになったやつを向かわせた。


「ダーリンが王都に着いて少ししたら僕が送った経験値がやってくるから待っててね♡」


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