第489話 感謝

ががががっ……!!!



「……よく食うな」


「そりゃ……んぐ。最近はまともの…ごくっ。ご飯食べれてなかったからな!」


グラデンは結局その日は起きることなく、起きたのは次の日の昼前だった。そして、昼ご飯を漫画やアニメでしか見た事がないくらい高速で大食いしている。まるで某戦闘民族みたいだな。ただ、一応王族ということでマナーはしっかりしているので、全くこぼすことなく速度に反して綺麗に食べている。


「それで…がりっ!」


「とりあえず、今は食うことに専念しな…」


何かを言おうとしたが、食べながらだと聞きにくいし、そんなに腹が減っているなら食うのに専念して欲しい。ところで、皿まで齧ったような音がしたけど大丈夫か?




「あー!食った食った!」


「6人前ってところか?」


俺とベクアは育ち盛りの男と言うことで2人前位は食べていたと思うが、グラデンは俺らの3倍は食べていた。それなのに、食べ終える時間が俺達とほとんど同じなんだから凄いな。



「それで、これからお前達はどうするんだ?」


「武器も完成したことだし、一旦リンガリア王国の王都に帰ろうかなって思ってるよ」


俺はグラデンの問いに昨日みんなで決めたことを伝えた。


「そうか。何か良い素材があればまた持ってこいよ。そうしたら次もまた装備を作ってやるぜ!

俺も今回はなかなか加工しずらくて不甲斐ない姿を見せたからな。次に来る時までに特訓して親方を越えれるくらいの鍛冶師になってるからよ!」


「その時は是非お願いするよ」


やはり、グラデンは俺達に着いては来ないようだ。グラデンにとっては普通のレベルを上げるよりも鍛冶師としてのレベルを上げる方が何倍も重要なのだろう。それにしても、グラデンよりも鍛治の腕がいい国王は凄いな。


「いつ頃から王都に向かうんだ?」


「3日後にしようと思ってる」


グラデンが起きてから3日後にここを出ようというのも、これも昨日特訓後にみんなで決めたことだ。


「そうか!わかったぜ!」


それからもいつも通り試作場で身体を動かしていたら3日は簡単に過ぎていき、もう帰る日の当日となった。



「やっぱり、竜車は1度返さないと行けないそうだ」


「まあ、それはしょうがないよな」


ここまで竜車に乗ることで馬車で移動するよりも何日も短縮できていた。だけど、そろそろメンテナンスとかをしないといけないため、どうしても1度獣人国に返さないといけないそうだ。


「とはいえ、途中までは乗ってっていいらしいぜ。途中からは深林を通ってショートカットしながら走って行こうぜ」


「みんなもそれでいい?」


俺がそう聞くと、みんな頷いていた。竜車は深林でのショートカットできる場所まで乗っていいそうだ。


「ちなみに、だから護衛達も着いてこないぜ」


「そうなんだ」


まあ、わざわざリンガリア王国に行くためにベクアとキャリナの護衛は必要ないだろう。そもそも元から2人に護衛が必要かすらも疑問だ。竜車を運転するという役目が無くなったので竜車と共に帰るそうだ。


「よし、そろそろ行くか」


なんてベクアと話していると、竜車の準備も整ったのでそろそろ出発しよう。


「ゼロス達にプレゼントだ!」


「ん?」


竜車に乗り込む前にお見送りに来てくれていたグラデンから金属でできたカードのようなものを渡された。


「これは通行許可書だ。これがあれば好きにドワーフ国に出入りできるぞ。さらに、城の門番に見せたらすぐに俺に連絡がくるからまた王城で寝泊まりできるぞ」


「え?そんなのいいの?」


これは普通にやばいものだ。仮に俺達が盗まれでもしたら、犯罪者達だろうが自由にこの国に入りたい放題になってしまう。


「お前達からこれを盗めるような奴だったらそもそもこの国に非合法で出入りすることくらい簡単だろ。まあ、これを渡す代わりに良い素材が手に入って、装備を作って欲しくなったらすぐに持って来いってことだな」


「ありがとうな」


グラデンの好意に甘えて素直に貰っておくことにした。ただ、管理は徹底的にしないといけないな。

俺達はそれを仕舞うと、竜車へと乗り込んだ。


「グラデン、本当に良い装備をありがとうな」


「ありがとうございます」


「ありがとな」


「…ありがとう」


「ありがと」


「あ、ありがとうございます!」


「良いってことよ!」


そして、竜車から顔を出して俺達は順にお礼をした。


「出発します」


「またいつでも来いよ!用がなくても来ても良いからな!」


「わかったよ!本当にありがとうな!!」


こうして、俺達はドワーフ国を後にした。

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