第485話 双子だけでの会話
「…それでソフィはいつまで俺の部屋にいるつもりかな?」
「お兄ちゃんが眠るまでですよ」
今は精霊界から帰ってきて夕飯を食べ終えた後の夜だ。もうみんなは各自の部屋で休息をとっている。しかし、ソフィだけは俺の部屋にやってきているのだ。
「3日間もお兄ちゃんに会えなかったのですから、これくらい甘えることは許してください」
ソフィはそう言って、ベッドで布団をかけて座っている俺の肩に背をつけて寄りかかってきた。
「もっと会えなかった期間もあるけどね」
俺がドラゴン魔族に負けて、エミリーさんにエルフの里に連れて行ってもらった時はもっとソフィとは会えていなかった。
「…お兄ちゃんは私にその地獄をまた思い出させるんですか?今でも思い出す度にあのエルフの女王達を殺りたいと思うんですよ?」
「え!?」
驚いてソフィの顔を見た。ソフィは俺と目が合うとニコッと笑った。
「冗談ですよ?」
「びっくりさせないでくれ…」
ソフィなら思い兼ねないと思うので、本気で少し焦ってしまった。冗談で安心した。…本当に冗談だよね?
「そういえば、ソフィはまだ悪魔使いは取得していないの?」
ソフィはディア、シファという2人の悪魔と契約している。そのため、俺の悪魔魔法よりもスキルレベルが上がるのは早いはずだ。だからソフィならもう悪魔使いにスキルが進化した可能性がある。
「…まだですよ」
「そっか」
ソフィなら自前の転移もあるので、悪魔使いを取得したら自分で悪魔界に行くことが可能だろう。
「もし、取得したらお兄ちゃんも連れていきますね」
「あ…それなんだけど…」
俺は帰ってきて着替え中にベクアと話した話をソフィにも話した。
「でも、お兄ちゃんなら転移できますよね?」
「多分精霊魔法は使えないから難しいかな」
俺が精霊界に行った時にダーキとブロスが居なかったので、悪魔界に行った時にはユグとジールとダーキは居ないだろう。
「でしたら、お兄ちゃんには空間魔法を取得してもらって転移を覚えてもらうしかありませんね」
「あ、そっちになるのね」
一緒に行くことは諦めてソフィ1人で行くという選択をすると思ったが、どうやってもソフィは俺と離れたくないようだ。
「私が3日会えなかっただけでどれだけ辛かったのかお兄ちゃんは知らないのでしょうね」
「いや、前世も含めたら3日会わないくらいそれなりにあったよ?修学旅行とか、反抗期の頃とか」
前世でソフィが反抗期の時は俺を避けるようにしていたので、3日くらい顔を合わせないくらい普通にあった。
ちなみに、俺は2泊3日で帰ってきたので、厳密に言うと、会っていないのは2日とちょっとだ。
「…その話はしないでください。反抗期の頃は今世も含めても私の人生の中での1番の汚点です」
「そこまで言わなくても…」
俺がそう言うと、ソフィはかばっ!と勢いよく俺の方を向いた。
「あの時に私がどれだけお兄ちゃんを苦しめ…」
少し泣きながらそう言い出したソフィの唇に人差し指を軽く当てて言葉を遮らせた。
「その謝罪は前世でもう貰ってるよ。その当時に何にも思わなかったと言うと嘘になるけど、このことは前世の時にすっかり許してるから謝らなくていいよ。この話を持ち出してごめんね」
そう言って指を話すと、ソフィはこくんっと小さく頷いた。前世で反抗期が終わった時に大泣きしながら謝られたのを今でも覚えている。
それにしても、ソフィがこの話題を地雷としていそうなことは少し考えたら分かる事だった。もうこの話題をすることはやめておいておいたほうがいいな。
それにしても、唇に指を当てて話を遮るなんて、柄にもなくキザっぽいをしてしまった。今になって少し恥ずかしくなってきた。
「さっきのお兄ちゃんは特にかっこよかったので、気にしなくてもいいですよ」
「心を読まないでくれ…」
「お兄ちゃんが分かりやすいんですよ」
その後も久しぶりの双子だけの会話を続けていたが、昨日寝てないのもあって体が疲れていたのか少し瞼が重くなってきた。
「疲れているのですから、眠っていいですよ。お兄ちゃんが寝たら私も自分の部屋に戻って寝ますから」
「ならそうしようかな」
俺は体勢を変えて、ベッドに横になった。やっぱり疲れていたのか横になるとすぐに眠りについた。
「おやすみ、お兄ちゃん」
私はお兄ちゃんが寝たのを確認すると、ベッドのから立ち上がって自分の部屋に戻った。
『今日も行くのか?』
『当たり前です』
『無理はなさらないようにしてください』
『分かってる』
自分の部屋に入ってからは悪魔と話しながら装備を空間魔法にしまった。
「悪魔化、悪魔憑き」
その次は2人の悪魔化と悪魔憑きを行った。
「転移」
そして、私は悪魔使いを通して悪魔界に転移した。
お兄ちゃんは私の告白を断る時に私以外にも守りたいものがあるから無理と言っていた。だったらお兄ちゃんの守りたいものを殺そうとも思ったが、それではお兄ちゃんに嫌われてしまう。
なら、お兄ちゃんの守りたいものを全て守れるほどに私が無敵になればいい。そうすれば、お兄ちゃんは私と付き合って…いや、結婚してくれる。そのために私は悪魔界で無敵になるために悪魔の能力を成長させている。
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