第484話 帰還

「っ!お兄ちゃ…ん……」


「ソフィ、3日ぶりだね。約束通りちゃんと帰ってきたよ」


俺が転移すると、そこは前に俺が王城で過ごしている自分の部屋だった。どうやら、ちゃんと転移は無事に成功したようだ。ちなみに、俺の部屋ではあるが、俺の前にはソフィを始め、ベクア達が勢揃いしている。


「どうかした?」


ソフィ達が固まっているので、そう質問した。すると、みんなは一通り目を合わせた後に代表してかソフィが答えた。


「お兄ちゃん、その格好は何ですか?」


「え?わっ!」


俺の今の格好は精霊界にいた時と同じく、腰に葉っぱを巻き付けただけの姿だった。どこからやってきたか不明だが、ちゃんと俺の足の横には球もある。


「お兄ちゃんが転移した時に服がそのまま取り残されていましたが、そんな格好をしてたんですか…」


「まあ、向こうでは服が無かったからね…」


不幸中の幸いなのが、腰に巻いている草は残っていたことだな。これがなかったら今頃俺はみんなの前で全裸になっていた。しかし、精霊界にものを持っていくのはできないが、精霊界からこっちにものを持ってくるのはできるようだ。精霊界にあった鉱石とかも誰かがこの草と同じように持ってきたのかもしれない。


「精霊界では良い修行になりましたか?」


「うん。とっても良い修行になったよ。エリーラもありがとうね」


俺は顔をエリーラの方に向けてそう言った。エリーラは突然礼を言われて驚いていたが、すぐにニヤッとした顔に変えた。


「どういたしまして。ディーネに手も足も出ずにボコボコにされたって聞いてるわよ?」


「確かにその通りだけど、ディーネにはちゃんと1回勝ってるよ」


俺は多分少しドヤ顔をしながらエリーラにそう言っていたと思う。



「さて、着替えたいから少し外してくれる?」


俺は一通り3日ぶりの会話をした後にそう言った。いつまでも変態のような格好でいるわけにもいかない。


「あ、これはお兄ちゃんが来ていた服です」


「ありがとう」


俺はソフィから元々来ていた服を受け取ると、ソフィ達はベクアを残して全員部屋から出ていった。それを確認してから俺は葉っぱから着替え始めた。

あ、ベクアは残ったのか。男同士だからいいけど。



「今後は獣界、悪魔界にも行ったりするのか?」


「あー、どうだろう…」


着替えている時にベクアからそう聞かれた。精霊界は精霊魔法が精霊使いに進化したことで行けるようになった。なぜ、精霊魔法だけ進化してるかと言うと、獣と悪魔よりも精霊の方が早くに契約していたのと、契約した精霊が2人だったのでスキルレベルが上がるのが早かったからだ。

だから他の2つもそれが可能になるのかも分からない。それに、そもそも獣化はあるけど、獣魔法はないので、獣使いはどうやって取得できるか分からない。


「もし、獣界に行くとしたら、俺も連れて行けたりするのか?」


「どうなんだろ?ちょっと聞いてみる」


「ああ」


確かにそれは少し気になった。もしできるとなったら精霊界にエリーラを連れて行くことも可能かもしれない。俺は4人に聞いてみた。


『行くこと自体は相手も精霊使いを取得してたらできるよ』


『精霊と同じで獣使いを取得していればできるわよ』


『悪魔も悪魔使いを取得していればできる』


どうやら、それぞれの使いを取得していれば一緒に連れて行くことができるそうだ。


『ただ、転移した時に別々の場所に転移する可能性があるからおすすめはしないよ』


『あ、なるほど』


自分の精霊使いとかで転移する場所を決めるため、誰かと一緒に転移しても、その誰かは自分の精霊使いで場所が決まって転移した時に別々の場所になる可能性があるそうだ。その時に一緒に転移した人と合流するまで帰れなくなる危険性があるため、やるのはあまりおすすめしないそうだ。

俺は今聞いた話をそっくりそのままベクアに話した。



「なるほどな。俺が獣使いを取得しても獣界に行くのは難しいみたいだな」


「そうだね」


転移を使えない者が契約している者の世界に行くのは難しいようだ。


「グラデンはまだ鍛冶室にこもってるのか?」


「まだ出てきてないぞ」


どうやら、俺の剣はまだ完成していないようだ。



「着替え終わったか?」


「おう」


なんて会話をしている間に俺は着替え終えた。それを確認すると、ベクアはソフィ達を呼びに行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る