第483話 2泊3日終了
「今回はここまでですね〜」
「いや…まだ時間は残ってる!」
夜通し戦って朝になると、ディーネからそう言われた。
そういえば、アーテル達の姿はもうない。戦いに集中したせいでせっかく来てくれたのにほとんど話せなかったな。
「戦ってすぐに帰宅すると、ぼろぼろなので心配されますよ〜。それに、今は精霊化で体力が強化されてるからいいけど、精霊化してる時に疲れきるまでいっちゃうと解いたら大変なことになるよ〜」
「あ、そっか」
精霊界で精霊化してるので、体力が強化されているから夜通し戦ってもまだ平気なのだ。だからといって精霊化した状態で限界まで体力を消費してしまうと、解いて元の体力に戻った時にバテバテになってしまうのか。
「それに、一旦精霊魔法の評価を精霊王様達に聞いたほうがいいと思うよ〜」
「それもそうだね」
精霊化状態で魔法が使えるようになってから精霊化を解いていないので、ユグとジールとまだ話せていなかった。俺はディーネの言う通り、精霊化を解除した。
「ちょっと、ゼロくん!!」
「お、おう…どうしたの?」
精霊化を解いた瞬間にユグが俺に詰め寄ってきた。俺の胸ぐらを掴んで引き寄せながら、背伸びしてぐっと顔を近寄らせてきたので、ユグの顔と俺の顔が数cmくらいの距離になった。不覚にも少しドキッとしてしまった。
「どうして、ジールの精霊魔法よりも、ユグの精霊魔法の方が使う頻度が圧倒的に低いの!ユグとの魔法は転移と剣を作るのしかしてない!ユグでなんで攻撃と防御をしないの!」
「あーー…」
ユグが怒っているのはそのことか。俺は別に意識してユグの精霊魔法を使わなかった訳では無い。でも、使わなかった理由もちゃんとある。ユグは珍しく本気で怒っているようだ。ここは隠さずしっかり理由を伝えないと。
「ユグの精霊魔法を使わないのは…いや、使えなかったのはユグの精霊魔法はやれることが多いからだよ。ジールの精霊魔法は雷のみっていう縛りがあるから咄嗟に雷で攻撃、防御っていう風に反射的に使えたんだ。でも、ユグの精霊魔法は何で攻撃、防御をするかっていう感じでジールよりも考えることが多いから慣れてる雷よりも反射的に使えないんだよ。だからディーネとの戦闘中には上手く使いこなせてなかったんだよ」
一言にまとめると、ユグの精霊魔法はできる範囲が多過ぎてまだ使いこなせないのだ。ユグの精霊魔法は想像力次第で魔力が許す限り何でもできる。だからこそ、一瞬の間が命取りになる戦闘中にその想像を上手くできないから使えないのだ。
「つまり、ゼロくんがユグを扱うにはまだまだ弱いってこと?」
「そうだね」
ユグがストレートに言ってきたが、実際そういうことだ。まだ俺はユグの100%を引き出せるほど強くないのだ。
「そういうことならわかったよ。ユグも急に怒ちゃってごめんね」
「俺の方こそごめんな」
ユグはそう言って俺の胸ぐらを離して、背伸びをやめた。
「ユグもゼロくんにユグの精霊魔法をちゃんと教えてなかったからお互い様だね。これから余った時間はユグと精霊魔法の特訓だよ!」
「そうだな!」
これから夕方になるくらいまでユグの精霊魔法を特訓してから帰ることになった。
「よし!やるか!」
少し休憩して、俺はユグと精霊魔法の特訓を始めた。
ユグやジールと相談しながら反射的に使えたら便利という魔法を考えて、それを使っていった。使えたらそれが反射的に出るほど慣れるために何回も使った。
「こんなところか」
「そうだね!」
何とか数種類のユグの精霊魔法を扱えるようになった。
「っ!?」
そろそろ帰るかと思っていると、ディーネから水の砲弾が突然放たれてきた。
「バリア」
俺は咄嗟に今日習得したである1つであるバリアを使った。俺の横に小さい六角形が並べられた曲線の壁が現れた。それはディーネの相談を完全に防いだ。
「ちゃんと、習得できてるみたいだね〜」
「ありがとうな」
ディーネは本当に習得できているか試してくれたようだ。
正直、このバリアを使う機会はあまりないだろう。なぜなら俺は神速反射で攻撃を避けることができるからだ。だからこの魔法は俺以外の誰かを守る用になるだろう。まあ、俺も手数が多過ぎる攻撃を受けた時や、避けられないと判断した時には使うだろうけどな。
「私は先にエリーラのところに戻ってるよ〜」
「3日間手伝ってくれてありがとうな」
「いえいえ〜」
ディーネは先にエリーラの元に帰ったようだ。
「じゃあ俺達も帰るか」
「うん」
「だな」
もう夕方だし、これ以上遅くなったらソフィに怒られそうだから早く帰ろう。
「……転移」
来た時のように精霊化はしなくて良いそうなので、俺はそのまま転移で元のドワーフの王城へと戻った。
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