第464話 真っ白な鉱石

「それで、ゼロス以外には誰のどんな装備を作ればいいんだ?」


ソフィの質問に答え終わると、グラデンは俺以外のみんなにそう質問をした。

それに対して、ソフィ、シャナ、エリーラは前に俺が聞いた時と同じ答えを言った。


「結局、ベクアとキャリナは武器と防具はどうするんだ?」


俺は3人が答え終わったタイミングでベクアとキャリナに質問した。2人は防具や武器を試して決めると言っていたので、まだ俺も結論を知らない。


「俺はやっぱりいらないな。下手に武器や装備があると獣鎧を纏いにくくなる」


やはり、ベクアは今まで通りの動きやすい服のみの超軽装でいるようだ。


「わ、私はゼロスさんと似たような軽装をお願いしたいです。あと…武器に鉤爪が欲しいです」


ベクアが話終えると、キャリナが少し遠慮しながらそう言った。

ちなみに、同じ獣鎧を使うベクアが装備入らず、俺とキャリナ胸当てなどの邪魔にはならない程度の防具を望む理由は、獣鎧の属性の違いだろう。俺とキャリナは雷と闇、つまり、形を変幻自在に動かすことができるものだ。それに対して、ベクアは雪もあるが主に氷を纏っている。ベクアは俺とキャリナ違い、個体を纏うことになるので、きっと少し邪魔になるのだろう。


「鉤爪と言っても種類はそれなりにあるぞ。具体的にはどう言ったものが欲しいんだ?」


「えっと…手の甲から指にそって4本の刃が生えてて、指を動かすと連動して少しその刃も動かせるようなやつが欲しいです」


「なるほどな…」


グラデンはそう言うと、真剣な顔をして数秒黙った。どうしたのかと声をかける前にグラデンは話し始めた。



「今軽くだが、脳内で設計図を作ってみたが、問題なく作れそうだぜ」


「ありがとうございます!」


なんと、今の黙った数秒の間に脳内では設計図が作成されていたようだ。


「それぞれ、制作が本格化してきたタイミングで装備のサイズを決めるために身体計測を行うから、声をかけたら来てくれ。もちろん、女には俺じゃなくて女がやるから安心してくれ」


まあ、オーダーメイドの装備を作るには身体のサイズにあったものを作らなければならないから、計測はしなければならない。



「計測が終わったら、そのサイズに合いそうな適当な過去に俺が作った似たような装備を何個か装備してもらって、完璧なものを作っていくからそのつもりで頼むぞ」


これは俺が剣の握り心地を複数のグリップで試した時と似たような感じだろう。


「特に鉤爪は遊びくらいでしか作ったことがない。しかも、キャリナが希望しているのは普通の手の甲に固定された鉤爪ではなく、指を曲げた時に動くものだ。だからといって指に直接つけるタイプではない。少し新しいタイプの武器になるから試作に試作を重ねることになると思う。だから何度も試してもらうだろうが、何か意見があったら遠慮なんかせず、はっきり言ってくれよ。俺は妥協されるのは1番嫌だぜ!」


「分かりました!」


俺の考えすぎかもしれないが、今のセリフは何度もグラデンに試作を作らせることにキャリナが遠慮しないようにするために言ったのだろう。



「あ、グラデン。少し別の話になるんだけど、見て欲しいものがあるんだけどいいか?」


「ん?何だ?」


俺はそう言うと、ソフィに貰った真っ白な鉱石をグラデンに手渡した。あの神にもこの鉱石を武器に混ぜた方が良いと言われていた。


「これって何の鉱石か分かるか?」


「……」


「グラデン?」


俺が鉱石を渡して少し経ってもグラデンはじーっと鉱石を眺めるだけで何も言わなかった。そして、数分見つめ続けると、話し始めた。



「分からない…。俺にはこれが何なのか分からない」


「そうなのか。まあ、グラデンにも分からない鉱石くらいあるよな」


俺はそんな鉱石に詳しくないから知らないが、この世には沢山の種類の鉱石があるだろう。それらを全て理解するのはグラデンにも不可能だろう。


「いや、俺には素材鑑定という、素材に限りだが、かなりの精度まで分かる鑑定スキルがある。それですら、分からないんだ」


やはり、グラデンには素材の鑑定スキルがあったようだ。ちなみに、鑑定スキルでも対象を限定する場合はただの鑑定よりも高い精度を出すことができる。

まあ、だとしても鑑定対象外の素材くらいあるだろうと思ったが、グラデンの次の発言で考えが変わった。


「このスキルでは、ゼロスの闇翠と光翠の素材であった精霊界や獣界や悪魔界の鉱石ですら分かったんだぞ」


「えっ!?」


つまり、この真っ白の鉱石はそれ以上珍しくレアな鉱石なのだろう。


(あっ…)


この時、俺の中でこの鉱石に1つの仮説が生まれた。精霊界などの鉱石よりもレア度が高く、神が今の剣に混ぜることを進めた。

そういえば、1度だけ文字化けして取得できなかった「○○化」というスキルがあった。ただ、それに関する称号は持っている。恐らく、この真っ白な鉱石はそこから取れた物なのだろう。


「すまんが、その鉱石を詳しく調べるのは装備が全て完成したらにして欲しい。その鉱石を調べるのは後回しだ」


「分かった」


詳しく調べる時になったらその仮説を伝えればいいかと思って、俺は何も言わずにその鉱石をマジックリングにしまった。

その後は特に重要な話もせずに城へ帰った。

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