第456話 来てすぐに…
「さすが技術が優れていると言われてるドワーフ国の中心都市だな。城壁からして他とは違く見える」
中心都市の城壁が見えてきた時に俺はそう呟いた。
城壁の高さ自体は他の種族の都市とあまり変わらないが、遠目で見ても分かるくらい立派なのだ。見ただけで難攻不落と思わせるのが凄い。
「物作りに関してはドワーフの右に出れる者は居ねえからな」
ドワーフはパワーと手先の器用さが随一とされている。だから物作りに関してはドワーフが1番だと自他共に認められている。
「では、招待状をお出しください」
「分かった」
そして、中心都市への門に着くと、ゾーリが門番の者に招待状を確認されていた。ゾーリはグラデンの手紙に入っていたという招待状を門番に見せた。
「確認しました。これはグラデン様から預かっていた手紙です。内容は詳しく知らされてはいませんが、泊まる場所が記載されているそうです」
「確認しておく」
ゾーリはそう言うと、ウーマンに手紙を持たせて、ベクアに渡してきた。ちなみに、俺達は一応の竜車内の確認のためにドアを開けているので、会話は全て聞こえてきている。
「では、ドワーフ国の中心都市をお楽しみください」
「ああ」
そして、俺達は門を潜って中心都市へと入っていった。その時に分かったのは、城壁の厚さが他の国で見たよりも倍近く厚い。さらに、風化を防止するためか、城壁の一面に何か塗ってあるようだ。これらが遠目から威圧感を与えている理由なのだろうか。
「それで、その手紙には何て書いてあるんだ?」
「俺が見るのか?文通してたのはベクアだからベクアが読めばいいんじゃないか?」
ベクアはそう言いながら手紙を俺に渡してきた。だが、ここに来る約束を取り付けてくれたのはベクアだからこの手紙はベクア宛のものだろう。
「何言ってんだ?でかでかとゼロス宛ってわかるように名前まで書いてあんぞ。それに、ここには主にゼロスの防具を作りに来たんだから、ゼロスが読むべきだぜ」
「あ、本当だ」
俺の手に渡った手紙を見てみると、そこには大きく俺の名前が書いてあった。これを見るとベクアの言う通り、俺宛のようなので中を開けて中身を読んだ。
「…とりあえず、王城へ直行になった」
「ゾーリ!王城へ向かってくれ!」
「わかりました!」
俺の言葉を聞いて、ベクアがゾーリに指示を出した。
「で、手紙にはなんて書いてあっんだ?」
「…はい」
特にここに居る人達に内緒にすることは書いてなかったので、俺はみんなに見えるように手紙を広げた。
『遅いわ!待ち過ぎておじいちゃんになるかと思ってるぞ!まあ、それはいいとして、とりあえず、まずはすぐに王城へ来てくれ!使ってない部屋は沢山ある!だから全員泊まっていけ。採寸とか、試作の確認とかのために王城に居てくれた方が俺らが助かるんだ。親方もそれを許可したから安心していいぞ!』
と手紙には書いてあった。確かにグラデンの言う通り、効率を考えると王城にいた方がいいとは思うけど本当にいいのか?
「何不安そうな顔してるのよ。エルフの里にいた時には常に王城に居たじゃない」
「あ、そっか」
そういえば、俺がエルフの里に居た時はずっと王城で寝泊まりをしていた。それに、獣人国の王城にもよく訪れて模擬戦もやっていたな。そう考えると、別に不思議なことでは無いのか?
「人間の城よりも他の国の城の方が行ってない?」
「そうだな…」
シャナの言う通りだ。俺が自国であるリンガリア王国の城に訪れたのは剣に付けている球を貰った時の1回だけだ。
そして、俺達は中心都市に来てすぐなのに、城へと向かって行った。
見えてきた城は他の国の城とは違った。塔のようなものが4つ角にあり、そこの間に大きな建物があるだけのシンプルの城だった。さらに、城と言うのに煙突が何本も見える。
ただ、少し見ただけでも今まで見た城より頑丈に作ってありそうなのは分かる。
「ゼロス様方ですね。グラデン様から話は聞いています。では、竜車はこちらに。ゼロス様方はこちらにどうぞ」
城の前に到着すると、城の前にいるドワーフにそう話しかけられた。
ゾーリとウーマンは竜車を移動させるために城の裏の方へと案内され、俺達は城内の方へと案内された。
「では、こちらへどうぞ」
「ゼロス!」
城の中に入り、そこからは城のメイドが俺達を案内してくれようとしたところに、グラデンが走ってやっきた。
「グラデン、久しぶりだぶっ!」
「やっと来たな!!早く行けぞ!」
俺は走ってきたグラデンに胸ぐらを掴まれて言葉を遮られた。そして、そのまま勢いよく俺を引っ張って走り出した。抵抗しなかったとはいえ、俺は引き摺られることなく、宙に浮かんだ。少し首が閉まって痛い。
「改めまして、皆さんはこちらへどうぞ」
後ろでそんなやり取りが聞こえてきた。何で俺だけ連行されるんだ…。だが、過保護なソフィなら…。
「後ほど行きますねー!」
遠くでそう言うソフィの声が聞こえてきた。どうやら俺はソフィにも見捨てられてしまったようだ…。
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