第457話 新たな効果?

「ごほっ!こほっ…」


「リヴァイアサン…いや、先に剣だな。ゼロス!闇翠と光翠を少し貸してくれ!」


「あ、ああ…」


俺とグラデンは地下にある鍛冶室のような場所に到着した。鍛冶室までの道でずっと引っ張られていたので首が痛い。一応悪気はないっぽいので精霊化までして振りほどかなったが、こんなことになるなら少しくらい抵抗すれば良かったかも。思っていたよりもグラデンの力が強かった。もしかすると、素のステータスでは、俺の【防御】よりもグラデンの【攻撃】の方が高いかもしれない。

俺はグラデンに言われた通りに闇翠と光翠を手渡した。グラデンはすぐに鞘をあらゆる方向から確認した。そして、次は鞘から剣を抜いて刀身を間近で観察した。



「…小さな刃こぼれ1つないな。ゼロスの使い方がいいと思えんし、剣が優秀なのか?いや、それにしても刃こぼれ1つないのはおかしい…。つまり、この球のおかげか?」


グラデンはこの球のことを知っている。とは言っても、分かっていることは俺とほぼ同じで自動で戻ってくることと、精霊、悪魔、獣の宿替わりになることくらいだけど。


「ただ、鞘にも傷が無いのを見るに、直接球がくっついていない鞘にまで不傷の効果はないようだな」


グラデンはこの刃こぼれや傷1つ無い効果のことを不傷と名付けたようだ。

確かに、俺が剣を腕輪のような形にする時には鞘も一緒に変形している。どういう原理なんだろうか?



「鞘の他にも不傷の効果は無いのか?」


「多分ないと思うぞ」


俺の装備はローブ以外の全てが半壊または全壊している。それに、俺にも普通に傷が付く。だから鞘以外には剣の不傷の効果はないだろう。


「まあ、何にしても傷が無いのはいいことだ。メンテナンスの必要はないな。闇翠と光翠はゼロスに返すぜ」


「見てくれてありがとうな」


俺はグラデンから剣を返してもらった。俺が再び剣を装備したのを見てからグラデンが話しかけてきた。


「ゼロスのだめになった防具って持ってるんか?」


「あるよ。出そうか?」


「ここに頼む」


俺はグラデンにそう言われたので、作業台のようなところに装備を出した。ちなみに、今付けている装備はかなり前に予備として買ったものだ。だから性能はかなり低い。



「……これは精霊樹の枝と何らかの虫系魔物の素材を使ったものか?それと、この完全に修復不能になったのはあまり高価なもんじゃないな」


「…凄いな。当たってるよ」


俺が出したのはエミリーさんから貰ったシャツ、ズボン、靴、グローブと、胸当てなどの軽装だ。ちなみに、エミリーさんから貰ったもの以外は全て全壊している。ほとんどバラバラのようになっていたけど、一応装備していたものなので出した。



「この程度ならシャツ、ズボン、靴、グローブは再利用できそうだな。まあ、胸当てなんかは新品を作るしかないがな」


「再利用できるのか!」


どれも穴が空いたり、破けたりしていたので、再利用できるとは思っていなかった。せっかくくれたものなので、ダメにしてしまったからと言って捨てたくは無いと思っていたので良かった。



「それにしても、高価な市販品程度なんかとは比べ物にならないくらい丈夫なこれらがこんな状態になるとは、さすがはSSSランクの魔物だな」


グラデンはボロボロになっている俺のシャツやズボンをよく観察しながらそう言った。魔法で綺麗にはしているが、そんなじーっと観察されるとなんか嫌だな。


「つまり、俺はこれからゼロスが戦うであろうSSS…いや、SSS+ランクの魔物の攻撃だろうと壊れないのを作らなければならねぇーっとことだな。これはやり甲斐があるぜ!」


グラデンはそう言いながら目を輝かせた。



「グラデンは衣服類作れるのか?」


「無理だ。俺の専門は武器、防具だ。ゼロスの胸当てとかは作れるが、服や靴なんかは専門外だ。だから服や靴においては右に出る者は居ないと言われているヤツらに手を貸してくれるよう言ってあるぜ」


「ありがとうな」


グラデンが俺のためにわざわざ話を付けてくれたのだろう。


「いいってことよ!そんなことよりも早くリヴァイアサンの鱗を出してくれ!」


「え?さっき言ってた他の人達居なくない?」


この鍛冶室にはグラデンと俺以外に誰も居ない。


「何言ってんだ?まずはリヴァイアサンの鱗を加工できるようにしないといけねぇだろ!もちろん、それはゼロスにも手伝ってもらうからな!早く取り掛かるぞ!」


「おおー…!」


これから大変な目に合うであろうことを察してしまったが、これも俺の装備のためだ。俺の装備の為にグラデンが力を貸してくれるのだから、俺もそれ相応の手助けをするべきだ。

俺はリヴァイアサンの鱗を少量取り出して、作業が始まった。具体的には、色々な魔法を流したり、思いっきりぶっ叩いたりした。それらの一つ一つによる鱗の変化を綿密に記述していったので、かなり時間がかかった。グラデンはどれだけ実験に使っても余りある程の量の鱗があることに喜んでいた。

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