第455話 特訓の結果

「…そろそろまたレベルを上げてもいいかもしれませんね」


「いつかは来ると思ってたけど、もう来たか…」


ドワーフ国に向かって1週間、つまり、6日が経った。そして、ソフィの魔法のレベルが更に上がるようだ。

今の俺はソフィからやってくる魔法をほぼ当たらずに処理できるようになってしまったからな。



「安心してください。まだ距離は縮めませんよ」


「なら良かった!…とはならないからね?」


もちろん、距離が近くなるのも嫌だが、そもそも難易度が上がること自体が嬉しくない。というか、その言い方だとまだまだレベルが上がるようだ。



「ではいきますよ」


「…来い」


俺がそう言うと、ソフィは再び魔法を放ってきた。


「ふっ!」


そして俺はその魔法を再び斬ったり避けたりした。今までよりも少しスピードが増している気がするが、これくらいなら問題なく処理できる。


「ふえ!?」


何て油断をしていたのが間違いだった。ソフィのレベルアップが少し魔法の速度が早くなる程度のわけが無かったのだ。ソフィの魔法は俺の目の前で急に曲がりだした。


「おふっ…」


驚いてナイフを振るのを止めそうになったが、そんな俺のことなんか気にせずソフィは魔法を放ち続けている。ここでナイフを止めたら滅多打ちにあってしまう。何とか冷静になってソフィの魔法を斬っていった。


冷静になると、少しわかったことがある。ソフィの魔法の曲がり度合いはランダムに近いので、別に理不尽という訳では無い。ナイフを避けるように故意に動いたり、俺の後ろに回り込むなんてことは無い。ただ純粋に俺の目の前をくねくねと動くだけだ。


そして、次にレベルアップしたのは4日後だった。

そのレベルアップの内容はソフィの放った魔法が分裂するという内容だった。いきなり目の前で魔法が2つ、3つと増えるため、慣れるまで対処が大変だった。それがクリアできたのは更に4日後だった。



「次で最終レベルです。これをクリアしたら次からは距離を縮めます」


「おう…」


ソフィは最終レベルとは言ってはいるけど、まだ難易度は難しくなる可能性があるのか…。

ちなみに、ベクアは中心都市に着くまで3週間はかかると言っていたが、その通りで後1週間以内には到着できそうといった感じだ。だからトータルで3週間と少しくらいになる。

この旅では時々魔物に襲われるくらいで特に大きな問題はなかった。その魔物にしても御者の2人と俺達で倒した。



「それで、最終レベルの内容ですが、私が本気でお兄ちゃんに当てられるように魔法を操作します。もちろん、竜車に傷を付けないように威力はこれまで通り調整します」


「わ、わかった」


つまり、これからは魔法がランダムではなくなるようだ。これはもしかすると、ソフィとの頭脳戦になるかもしれない。



「では、行きます」


ソフィはそう言って魔法を放ってきた。俺はそれを防ごうとナイフを振っていった。




「まあ、当たり前っちゃ当たり前だよな…」


今は昼休憩の時間だ。俺はソフィの魔法を半分も防げなかった。心理戦が絡んできている時点でソフィに分があったのだ。



「よし、模擬戦をやるぞ」


「おう」


そして、昼食を食べてからの30分ほどは毎回模擬戦の時間だ。ここで体を激しく動かすことで魔法に当たることへのストレスを解消している。

そして午後からは再び魔法を斬る特訓だ。




「はあ………」


最終レベルになってから2日が経過して、今日は最終レベルになって3日目だが、未だに被弾率は50%程はある。これには思わず昼休憩で深いため息が出るほどだ。



「ゼロスは何を考えて魔法を防いでるんだ?」


俺の様子を見兼ねたのか、ベクアがそう質問してきた。


「ソフィの考えの裏をかこうって考えてるぞ」


俺はベクアの質問にこう答えた。ナイフを振っても魔法に避けられるから、どうにかしてその避ける動きを先に予測しようと考えている。



「いや、どう考えてもゼロスがソフィアの裏をかくのは無理だろ。ソフィアはゼロス以上にゼロスのことを知ってるような雰囲気すらあるんだぜ?」


「あっ…」


確かにそうだ。普通に考えて心理戦で俺がソフィの上はいけないだろう。ソフィの方が俺よりも何枚も上手だろうからな。


「それに、この特訓の本質を忘れてるぞ。本質はその反射神経を更に鍛えることだったよな?決して心理戦でソフィアに勝つための特訓じゃないぜ」


「あ」


そうだった。今まではどうやってソフィに勝つかを考えていた。


「ベクア、ありがとうな」


「これくらい礼を言われるようなことじゃないぜ」


ベクアのおかげで無駄なことを考えなくて良くなった。この特訓の本質を思い出すことができた。



「行きますよ」


「……」


ソフィはそう言うと、俺へ魔法を放ってきた。俺がそれを斬ろうとすると、急に進路変更したり、弾けるように増えたりする。だが、そんなのを考えることなく、俺は進路変更したり、増えた魔法を全て斬り消した。

ソフィの口角が心做しか上がった気がしたが、ソフィはそれからも俺に魔法を放ち続けた。


そして、更に2日が経過して、ついに明日中心都市に到着する。そのため、今日が最後の特訓だ。



「ふっ…ふ!」


俺はソフィの変化する魔法をほとんども当たることなく、防ぎ続けていた。すると、急にピタッとソフィの魔法が止まった。


「これで最終レベルもクリアです。よく頑張りましたね。お疲れ様です」


「うん…本当にね」


俺は自分だけ見えるように出したステータスのスキル欄を見ながらそう呟いた。

俺の剣法Lv.7はLv.8に、武法Lv.6はLv.7に、魔力高速操作Lv.5はLv.7に、魔力高速感知Lv.4はLv.7に、魔力纏Lv.1はLv.3に上がった。

そして、大本命だった神速反射Lv.4はLv.5に上がった。リヴァイアサンを倒した時にレベルアップして、もうレベルアップするとは思ってなかったので凄く嬉しい。かなり大変だったけど、頑張ってよかった。


そして、次の日には3週間と少しの旅を経て、ドワーフ国の中心都市へとやって来た。



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