第444話 反省
「よいしょっと…」
結局、1時間待ってもソフィが起きることは無かった。そのため、俺がソフィをおんぶして竜車へと向かった。
竜車に着くと、ソフィを背負いながら共に竜車に乗った。そして、ソファにソフィを寝かし、マジックリングの中に入っていたタオルケットのようなものをかけた。その後、竜車は出発した
「ソフィが起きなかったら明日は延期になるな」
「そうね」
寝ている人が居るので、竜車の中では会話もほとんどなかった。
「んっん……」
「あ、ソフィ起きた?」
揺れで落ちないようにと、ソファの下に座ってソファに寄りかかっている俺はソフィの声?が聞こえてきた。一応寝てた場合も想定して小声で振り返りながら起きたかを尋ねた。
「ん…」
しかし、ソフィは俺の問いに返事をすることなく、体勢を変えただけだった。丸くなるように小さくなって俺に密着してきた。ソフィの吐息が首筋に当たってこそばゆい。
俺に寄りかかる程密着してきたソフィに俺は起きているのでないか?という疑いが生まれた。まあ、だからといってその真意を確かめる手段はない。寝てた時のために起こす訳にもいかないからな。
まあ、起きてたとしても、こう甘えられるくらいは全然構わないから別にいいしね。
「…おはようございます」
「あ、おはよう。大丈夫か?」
街に着くまで残り5分といったところでソフィが目を覚ました。
「はい。大丈夫です。それよりも負けてしまい、申し訳ありません」
「それこそ大丈夫だよ。なあ、ベクア」
「そうだぜ!ゼロスが勝てば2勝1敗で問題ないからな!」
「じゃあ1勝2敗になるから問題があるわね」
珍しく、本気で落ち込んでいる様子のソフィを励ましていたら、その会話にエリーラがツッコミを入れてきた。俺がエリーラの方を向くと、目を背けられた。
「……シャイナ、あなたを下に見て侮っていたことを謝ります。申し訳ありませんでした」
「え、え…。うん。わかった」
ソフィはソファから降りて、床に膝をついて頭を深く下げてシャナに謝った。床に手を付いていなかったので土下座ではないが、こんな真面目に謝るかと思っていなかったのか、シャナはかなり戸惑っていた。
「次に戦う機会があるとしたらその時は私の全力を持って即座に仕留めようと思います」
「やれるものならやればいい。その時を楽しみにしてる」
一瞬ソフィとシャナは睨み合ったが、すぐに2人揃ってニコッと笑った。2人が仲直り?できてよかった。
その後は宿に無事着き、男女別れて温泉に向かった。
「正直、エリーラに勝てると思うか?」
体を洗って風呂に浸かっていると、ベクアがそんな質問をしてきた。
「ベクアはどう分析する?」
俺はここで質問を質問で返した。
「俺は同じチームとしての贔屓目を抜きにしてもゼロスが勝つと思うぜ。理由は単純手数の多さとその手数それぞれの強さだ。水の最上位精霊と契約しているとはいえ、雷の最上位精霊、精霊王、獣王、悪魔王と契約しているゼロスに勝ち目は無いと考えている」
ベクアは自分の考えを包み隠さず言った。言い終わると、俺の方を向いて次はお前が言えというような視線を向けてきた。
ベクアが正直に言ったので、俺も嘘偽りなく言おう。
「…正直、俺もベクアと同意見だ。雷を流さない水を生み出せるとはいえ、雷に対して無敵のバリアを張れる訳ではないし、雷を使わえなくなる訳でもないからな」
実際にエリーラが純水の水の中にいたとしても、霹靂神は耐えられない。ある程度の威力の雷は衝撃として食らうだろう。それに、純水を出したところで俺の神雷纏や神雷エンチャントを消せもしない。
「ただ、そんなことはエリーラも当然分かっているだろう。それなのに、あそこまで強気なのは強がりでもなくて、俺に勝つという自信の根拠となる何かがあるのだろうとも思う」
俺の戦闘スタイルも強さもある程度分かっているであろうエリーラがあそこまで強気に俺を挑発しているのだ。絶対に何かはあるはずだ。
「ということは場所は…」
「きっと海の上になるだろうな」
エリーラの強みを最大限に活かせるのは海の上だ。ネタ枠の小型ボートの上を指定するかは分からないが、戦う場所はその2択であることは確実だろう。
「もちろん、勝つ気だよな?」
「当たり前だろ。俺は誰にも負ける気は無いぞ」
そんな会話をして、温泉から出た。その後は夕食を食べて明日に備えて早めに就寝した。
そして、俺とエリーラが戦う次の日がやってきた。
「エリーラ、場所はどうするんだ?」
「砂浜海岸にするわ」
「え!?」
エリーラは俺の予想に反して、戦う場所を砂浜海岸にしてきた。
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