第445話 自信の根拠
「両者、準備はいいですか?」
「ああ」
「問題ないわ」
エリーラの場所の宣言から、俺達は砂浜海岸に移動してきた。今回は海岸ということで、竜車で30分ほどで到着した。
この場所は横を見ればすぐ近くに海もあるし、何なら岩石エリアも目視で確認できるほど近くにある。よく考えると、俺の予想していた海の上というエリアと大して条件は変わっていない。
「油断してると、一瞬で終わるわよ」
そう俺に自信満々に言うエリーラに対してゾッとするような恐ろしさを感じた。
「…忠告ありがとう。気を付けるよ」
もちろん、油断するつもりは無かったが、より警戒しておくことにした。
「試合開始!」
会話が終わり、ウカクが試合開始の宣言をした。
「ジール精霊降臨、悪魔化、悪魔憑き、獣化、ユグ精霊エンチャント、神雷ダブルエンチャント、回復エンチャント、雷電ハーフエンチャント、神雷纏」
「精霊降臨」
俺は最初から全力近いほどの強化を行った。そして、エリーラの一挙手一投足を見逃さないためにじっくり観察した。
「ぐはっ…!」
微かにエリーラの魔力が俺の周りに来て、危機高速感知が反応したと思った瞬間に俺は膝を付いて吐血した。吐血しただけではなく、これまでに感じたことがないほどに、とてつもなく気持ち悪くなっていた。それに、今の危機高速感知は俺の体の中から反応した。それでは回避のしようが無かった。
傍から見るといきなり膝をついて血を吐いている訳の分からない状況だが、渦中の俺は何をされているか気付くことができた。
「雷龍!」
俺はこの苦しみから少しでも早く解放されるために、エリーラに向かって苦し紛れのジールの精霊魔法を放った。ただ多量の魔力を込めただけで、雑に作った雷龍ではエリーラは簡単にガードしてしまうだろう。
「雷縮」
そして、エリーラが雷龍を水の壁で防御をする瞬間に少し気分が良くなったので、雷縮を使ってエリーラから距離を取った。
「…俺の血液を操ったのか」
「さすが同じ精霊と契約した者ね。もう何をしたのかバレてしまったわ」
エリーラは俺の中にある血液、つまり、水分を操っていたのだ。それを不規則にぐるぐる動かすことによって、俺は吐血し、気持ち悪くなったのだ。
俺もエリーラの真似をして、エリーラの体に流れている電気信号を遮断か、妨害すれば似たような事はできる。しかし、エリーラと俺との距離は10m以上は優に空いていた。至近距離でならまだしも、そんな距離で俺はそこまでやるのは不可能だ。俺ができるのはせめて電気信号を遅らせるという軽い妨害程度だ。
「ゼロス、あなたは確かに強いわ。精霊王だけではなく、悪魔王、獣王とも契約しているし、それは私も認めているわよ」
こうも素直にエリーラから褒められたのは初めての気がする。
「でもね、それぞれに力を注いでいるあなたでは、精霊の扱いのみに時間を割いてきた私の精霊魔法には敵わないわ」
「っ!」
俺の真下から水の棘が剣山の如く生えてきた。危機高速感知で反射的に後ろに飛んで避けることができた。すると、今度は俺の着地地点からも危機高速感知が反応した。俺はサイコキネシスの足場でそれも回避した。
「くそっ!」
その後も俺はエリーラから一定の距離を取りつつ、水による攻撃を避けていった。できれば近付きたいのだが、あまり無計画に突っ込むとまた血液を操作されてしまう。
「逃げていてもどうしようもないわよ。これにはそこまで魔力を使わないのはあなたも分かっているでしょう?」
「ああ…」
エリーラの今の攻撃はずっと砂の下に溜まっている海水を使っている攻撃だ。精霊降臨により、その属性を操るのにはほとんど魔力は使わない。だからこのまま魔力切れを待つというのは無理だ。
「どうするか……」
俺も負けじと、魔法を放ったりしているが、それらは全てエリーラによって簡単に防がれる。
こうなってくると、霹靂神を放ちたくなってくるが、それを準備している間は俺が無防備になってしまう。その隙を逃す程エリーラは甘くない。
もし俺が霹靂神の準備をして、タイミングを見計らってそれを解除すればエリーラを俺の思いどおりに動かすことが出来るかもしれない。しかし、俺はそこまで器用に霹靂神を使えない。
実際にそれをやると、解除した時に大きな隙ができてしまう。
「ユグ精霊降臨、回復ダブルハーフエンチャント」
俺はユグ精霊エンチャントと雷電ハーフエンチャントを解除し、回復ダブルハーフエンチャントを行った。ユグ精霊降臨ではなく、ユグ精霊化にしようかとも考えたが、精霊化しても魔力による攻撃である血液操作は食らってしまうので意味が無い。
「魔法で押し切る」
近付けない以上、遠距離から魔法で一方的に攻撃する。幸い、エリーラの血液操作は警戒しなければならないが、それ以外の水操作での攻撃に関しては神速反射で回避は十分可能だ。
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