第443話 大切な人
◆◇◆◇◆◇◆
ソフィア視点
「……私に何をしたっ!!」
特に何かダメージを受けた訳では無い。ただ、すぐそばにいる自分の命よりも大事な
ちおにゃんいはあそこで見ている男の人で間違いない…はずだ。でも、本当にそう?そもそも、ちおにゃんいなんて人は存在していたの?
あ…れ?私はここで何をしている?
「深層心理でその言葉を消されると考える事すらも出来なくなって、だんだんその言葉の元の存在自体が曖昧になるんだね」
「返せ…!」
そう言いながら放った苦し紛れの魔法をシャイナは簡単に避けて再び話し始めた。
「…
シャイナが私の話をしているのは何となく分かるが、何が言いたいかが全く分からない。私はそんな知らない人に依存してなんかいない。
「これ以上長引いても後遺症が出そうだから終わらせるよ」
目の前のシャイナは片手を何かをこねるようにくねくねと動かしながら、もう片方の手の掌を私に向けてきた。
「ファイアーランス!」
「…サンダーウォール」
私が出した雷の壁は数回炎の槍を止めたが、すぐに壊れてしまった。そして、まだまだ残っている炎の槍が私に当たった。私は衝撃で数メートル転がった。
「ソフィ!」
ちおにゃんいが私の事を読んでいる。でも、その人が誰かもう分からなくなってきた。私は無意識に縋るようにちおにゃんいに向かって手を伸ばした。
ちおにゃんいは一瞬悩んだような難しい顔をしたが、すぐにそんな顔をやめて私に向かって呼び掛けた。
「由美!」
その名で呼ばれるのは久しぶりだ。これは私の前世の名前だ。そう考えてハッとした。そうだった。私は前世がある。それはちおにゃんいを追うために自殺してここまで来たからだ。
その理由は愛しのちおにゃんいと一緒に居る為だ。
「まずい…」
シャイナが魔法を放ってくるが、私はそれを防御も回避をせず、無視して愛しのちおにゃんいのことだけを考え続けた。
ちおにゃんいちおにゃんいちおにゃんいちおにゃんいちおにゃんいちおにゃんいちおにゃんいちおにゃんいちおにゃんいちおにゃんいちおにゃんいちおにゃんいちおにゃんいちおにゃんいちおにゃんいちおにゃんいお兄ゃんちお兄ゃんちお兄ゃんちお兄ゃんお兄ゃんちお兄ゃんちお兄ゃんちお兄ゃんお兄ゃんちお兄ゃんちお兄ゃんちお兄ゃんちお兄ゃんお兄ゃんちお兄ゃんちお兄ゃんちお兄ゃんおち兄ゃんおち兄ゃんおち兄ゃんおち兄ゃんおち兄ゃんおち兄ゃんおち兄ゃん、お兄ちゃん!あはっ!
「やばっ」
「反射!」
やっとお兄ちゃんのことをちゃんと想えた!お兄ちゃんが近くに…いや、同じ世界に生きていると考えるだけで無限に力が湧いてくる。
『ピコーン!』
『【称号】ブラコンの帝王 を獲得しました』
何か頭の中で響いてくるが、そんなのは頭に入ってこない。今私の頭にあることはお兄ちゃんのことだけだ。やっぱり、私にはお兄ちゃんが必要だ。
「あ、あれ?」
私のお兄ちゃんが2人、3人と増えてきた。その次に、その増えたお兄ちゃんが斜めになってきた。そして、最後は私の視界から消えた。そういえば、心做しか身体の感覚が鈍い…な……。
◇◆◇◆◇◆◇
ゼロス視点
「ソフィ!」
ソフィがシャナを反射でぶっ飛ばしてから、こっちを見て微笑んだと思ったら、ゆっくりとパタンっと前のめりに倒れた。どうやら意識を失っているようだが、まだウカクは模擬戦終了を宣言していない。だからまだソフィの元へは行けない。幸い、シャナが加減したようで、ソフィは致命傷にはなっていなそうだ。
「まさか、私が書き換えれないほど考えるとは思わなかった。……痛!。ソフィアのやつ、加減しなかった…?予知して回避行動しててこれはびっくり」
「シャナ!」
この見晴らしの良い荒地ですら見えなくなるほど、勢いよくふっ飛んで行ったシャナが左腕を抑えながら帰ってきた。
「勝者!シャイナ!」
ソフィが気を失っていて、シャナが歩いて戻ってきたので、この模擬戦はシャナの勝ちで終わった。
「ソフィ!」
俺は急いでソフィの元へ行き、回復魔法をかけた。気を失ってはいるが、そこまで重症ではなく、俺の回復魔法でも治せるくらいだった。
「シャナの怪我は?」
「腕の骨が所々砕けてる」
どうやら、シャナはソフィに負けて劣らないほど重症のようだ。ソフィを治療し終わると、シャナを治療しているエリーラに混ざって一緒に回復魔法をかけた。
「ありがとう」
2人でかけたのもあり、シャナの腕も治った。もちろん、聖魔法ではないので、治りは弱い。もう一度激しく動けばすぐにまた折れてしまうだろう。
「じゃあ、帰るのはソフィアが起きたらでいいよな?」
「ああ」
俺達はソフィの目が覚めたら帰ることに決めた。ただ、1時間待っても起きない場合は、日が暮れる心配もあるので、俺が背負って帰る。
「…ゼロスも色々大変なんだね」
「え?」
シャナが俺の近くを通り過ぎながら耳元でそう言った。その言葉を真意を確認する前にシャナも疲れたから仮眠をとると言って寝てしまった。
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