第395話 ソフィアの策

「ごめん。審判をお願いしていい?」


「おうよ!」


俺がソフィと模擬戦をするにあたって、ベクアに審判をお願いした。



「私が負けず嫌いなのは知っているでしょうが、手加減したら許しませんよ」


「それくらいわかってるよ」


前世からソフィは負けず嫌いだ。しかし、だからと言って手を抜くと勘の良かったから、すぐに気が付いてかなり怒っていたな。



「先に強化をしてもいいですよ。私もしますから」


「ありがとう」


そう言われたので、俺はベクアと戦った時と同じ強化をした。


「ディア悪魔化、ディア悪魔憑き。シファ悪魔化、シファ悪魔憑き。時エンチャント、重力エンチャント」


ソフィはブロスの妹であるディアとそのメイドであるシファの悪魔化と悪魔憑きを全て行った。また、時魔法と重力魔法のエンチャントも行った。



「両者、準備はいいな?」


「ああ」


「問題ありません」


今のソフィは悪魔のような黒い角が耳の上あたりから2本、額の少し上からさらに1本生えている。さらに、大きな蝙蝠のような羽が背中から生えている。前に見た時よりも見た目が少し変わっている気がする。



「試合開始!」


こうして俺とソフィの全力での模擬戦が始まった。


「雷縮!」


俺は始まってすぐにソフィに雷縮で近付いた。

ソフィに近付くとスキルを1つ封印されてしまうだろう。だが、それでいい。

いつ封印されるかビクビク怯えながら遠距離でソフィと戦うよりも、さっさと封印させて近距離で戦った方がましだ。また、俺の予想では、神速反射と神雷は封じられることは無い。これはただの予想でしかないが、神のスキルであるエクストラスキルは封じれないだろう。だから、封じられるとしたらユニークスキルだ。

ちなみに、封じてくるスキルは、前と同じく危機高速感知か、今度こそ精霊使いかの二択だと思う。



「多重思考ロック」


「はっ!」


また俺の予想外のスキルを封じられた。しかし、エクストラスキルは封じれないという予想は当たっていた。俺は気にせずソフィに剣で斬りかかった。


「反射」


「ぐっ…」


ソフィがそう言った瞬間に衝撃波のようなものを食らって、一気に吹っ飛んだ。



「これがブロスの妹のディアの能力か…。思ったよりも厄介だな」


さすがはブロスの妹だ。俺は森の中まで吹っ飛ばされた。精霊化のおかげで木々にぶつからないとはいえ、ここまで吹き飛ばされるとはな。

また、ディアの反射は俺の精霊化に影響されない。衝撃波のようなものもちゃんと食らった。普通に痛い。


「さすがにクールタイムはあると思うが…」


さすがにこのレベルの反射を無制限に放てるということは無いだろう。しかし、この威力が最大でない可能性もあるんだよな…。



「っ!」


なんて、予測を多重思考が無くなった分、ゆっくりやっていると、危機高速感知が反応した。俺は慌てて避けた。すると、さっきまでいた場所に属性の無いただの魔力でできた槍が通り過ぎた。



「ここに居るのはダメだな」


シファの能力は魔法などを転移させることだ。つまり、俺の場所を捕捉していれば、距離は関係ないのだ。多分、ソフィの魔力感知なら数百メートルくらいなら分かりそうだよな。

俺は方向転換をできるように走って、吹っ飛ばされる前にいた広場に戻った。



「おかえりなさい」


「…こんな出迎えは嫌だな」


広場の空中には、属性の無い魔力の塊の槍が埋め尽くされる程あった。俺がベクアにやった量とは比較にもならないな。まさか、俺がやったことを何倍にもして返されるとはな。


「……ちくしょう」


「あれ?お兄ちゃん、難しそうな顔をしてどうしましたか?」


ソフィは白々しくそう言った。

俺にはユグ精霊降臨があるから、周りの風や土や木を使って盾を作ることくらい簡単なはずだった。しかし、多重思考が封じられたせいで上手くできない。

まあ、やるだけならできる。しかし、それに集中しなければならず、そのまま接近戦なんてできない。


「ユグ精霊化、ジール精霊降臨」


俺はやれることを少なくするために、精霊化と精霊降臨を逆にした。ソフィが多重思考を封じた理由はこれか。

さすがにこの槍の中を通る勇気はないから、ソフィに来てもらおう。



「磁石」


俺は周りの電気をソフィに流して、ソフィを一時的に磁石にした。また、俺の目の前にも電磁石を作った。

ちなみに、ソフィの全面をS極にした。ソフィが振り返ったら逆に離れてしまうが、電流はかなり強くしてある。だから、一瞬でソフィは引き寄せられた。


「ちっ!」


ソフィは引き寄せられた瞬間に俺の後ろに放った槍を数本転移させてきた。しかし、俺はそれを無視してソフィへ剣を振った。それを食らったとしても、ソフィに一撃入れる方がいいと思うからだ。


「動きが単調ですよ」


「がっ……」


しかし、俺の攻撃はソフィのメイスに簡単に止められ、俺はソフィの魔法を背中に食らった。



「ジール精霊化、精霊ユグエンチャント、雷電ダブルエンチャント」


俺は回復トリプルエンチャントを変更した。多重思考が無くなったのに、魔法を使いながら近接戦闘をするというのが無茶だったのだ。

周りをよく観察して、ソフィに効果があるくらいの複雑な魔法を使って、剣で攻撃する。これを思考1つでできるはずもない。

もう今回の模擬戦では魔法は使わないつもりだ。今はソフィが目の前に居るのだ。ここで決めるしかない。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る