第394話 驚きの真実
「らあっ!」
ベクアは俺に拳を振り抜いて来た。その拳は氷雪を纏っていて、俺の顔くらいの大きさがある。
「はっ!」
俺はその拳を剣で勢いよく弾き返した。ベクアは俺に力負けして、仰け反って体勢を崩した。
「おらっ!」
「ぐほっ…」
俺は仰け反ったベクアの腹に握り拳を全力で叩き込んだ。ベクアはこの広場から出る程に吹っ飛んだ。今の攻撃では確実にブロスの能力は発動したはずだ。
俺はベクアが戻ってくる前にある準備を始めた。
「だあっ!!」
ベクアは木々をなぎ倒しながら、再び俺のところへ勢いよく向かってきた。俺が殴った時に砕け散った腹の氷雪は元に戻っている。
「周りをよく見た方がいいんじゃないか?」
「あ?……あっ」
ベクアの周りには無数の火、風、水、土、氷、光、雷の槍が浮かんでいた。ユグの力を持ってすれば、闇、影などの槍も作れたのだが、今回は作るスピードを優先するために俺が取得している魔法だけにした。やはりまだユグを使いこなせていないな。
「やべっ…!」
「もう遅い」
ベクアは慌てて逃げようとしたが、もう手遅れだ。俺はベクアに向かって浮かんでいる無数の槍を放った。
リュウに、いくら魔法を消せるスキルを持っていても、数が多かったりしたら無駄になると教わったからな。今回はそれを活かしたのだ。
「くっ…うっ…」
その拳で殴り消せる数にも限界はある。ベクアは何度も槍を食らっている。
ベクアの魔防は防御と比べるとかなり低いようで、1発食らうだけでダメージが入っているようだ。
「雷縮」
「なっ…!」
そんな魔法を防ぐのに精一杯のベクアの元へ雷縮で移動した。今の俺は魔法もすり抜ける。だからこの槍が大量に降り注ぐこの場所に来ても問題ない。
「かふっ…ぐふっ!」
魔法を防ぐのに集中すれば俺が攻撃し、俺の攻撃に集中すれば魔法が飛んでくる。槍の数も増やし続けているので、そのストックが無くなることもない。
こうなった時点でベクアは詰んでしまったのだ。
「らあっっ!!!」
ベクアは自分の纏っている氷雪を俺とベクアを囲むドームのように変形させた。これにより、少しの間は魔法の槍はベクアへやってこない。
「はっ!おらっ!」
「かふっ…ぐほっ!」
しかし、纏っている分をドームに使ったので、今のベクアは氷雪をほとんど纏っていない。その状態では俺の攻撃をガードしてもダメージが入ってしまっている。
そんなベクアは剣で攻撃すると切断してしまうので、殴ったり蹴って攻撃し続けた。
「はあ!」
「ごふっ……!」
最終的にベクアは氷雪のドームをぶち破って吹っ飛んで行った。そして、木にぶつかって止まった。もう氷雪纏すらしていないベクアに魔法の槍を至近距離で囲むように配置した。
「参った…」
「試合終了。勝者お兄ちゃん」
ベクアは悔しそうに、かつ少し嬉しそうにそう言って模擬戦は終了した。
「くそっ…強い…な……」
「ありがとう」
俺は全強化を解除して、木に寄りかかって座っているベクアの元に行き、腕を引っ張って立たせた。
「ほら、回復のポーション」
「あんがと…」
ふらふらなベクアに回復するハイポーションを渡した。だいぶダメージは負っているがエリクサーを使うほどではないだろう。
「ぷはっ!ゼロスが強くて安心したぜ。やっぱり目標は大きくないとな。俺もまだまだ強くなれるな」
話的にどうやらベクアは俺よりも強くなる気のようだ。
「俺に勝てるようになれるのか?」
「俺だって幻想種と契約しているんだ。使いこなせるようになれば負けねえぜ!」
「え!?そうなの!?」
それは初耳だ。1度、契約している獣の体が大き過ぎて外には出せないと言っていたが、幻想種とは思わなかった。
「ちなみに、なんて言う獣だ?」
「鬼熊のマキョクだ」
ベクアは鬼熊という熊と契約しているらしい。ホッキョクグマじゃなかったのか。あ、別にベクアの髪とかが白くたって、契約している獣も白い必要は無いか。
『ダーキ、鬼熊って知ってる?』
『勿論、知っているわよ。それにしても鬼熊と契約したとは大変ね。あの大きな体に宿るパワーを使いこなすのは相当難しいはずよ。現に、それの制御で余裕が無くて鬼熊の能力すらも使えてないみたいだし。ただ、使いこなせればかなり強力なるわよ。それこそ、今のゼロスなら余裕でパワー負けするくらいにはね』
どうやら、ベクアの契約している鬼熊という獣はパワー特化の強い獣のようだ。これは俺もうかうかしてられないな。
「お兄ちゃん、お疲れになりましたか?」
「…うーん。多分まだまだ大丈夫だと思う」
俺達の元までやって来たソフィの質問に俺はそう答えた。
俺はずっと先手攻めていたので、常にある程度の余裕はあった。さらに、ベクアからはほとんど攻撃も受けていない。魔力も精霊界から持ってこれるし、まだまだ疲れもないので大丈夫だ。
むしろ動いたおかげで身体が温まったので、試合前よりも調子はいいくらいだ。
「なら次は私と全力での模擬戦をしませんか?」
「え?ソフィと?」
ソフィからこんな提案をされるとは思いもよらなかった。でも、ソフィとお互いに全力で戦ったのは前にあった園内戦で、それ以降はやってないな。
「分かった。いいよ」
「ありがとうございます」
特に断る理由も無かったから模擬戦をすることにした。正直、あれからかなり時間が経っているので、ソフィがどれくらい強くなっているかも気になるからな。
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