第384話 大会の結果

「結論から言うと、今回の大会ではゼロスが1位になったぞ。今日の昼にそれの報告を国民にして、4日後に公の場でトロフィーを渡すからな」


「あ、結局そうなったんだ」


ソフィ達3人と別れて、ベクアの元に行くと、早々にそう言われた。


「一応この大会では魔導具で魔法は使えないっていうように言ってたから、リュウの使った魔法は魔法ではないってことにする予定だ。

それから、リュウが舞台をぶっ壊してくれたせいでどこからが場外かの判定が曖昧になったから、あの試合においては場外は無しってことになった。

場外負けを無しにしても、リュウは仲間を呼んだとして、ルール違反で負けになったんだ」


「場外は無しにしたのか」


判定がはっきりできていて、もし場外負けがあったとしたら、多分先に場外負けとなっていたのは俺だ。しかし、誰にでも分かる形となる場外の壁に振れたのはリュウだけだ。俺は一応壁には触れないようにはしていた。


「そこで問題となったのはデュラをどうするかなんだ」


「デュラ?」


「ああ。あいつはルール違反はしていない。しかし、もうこの国には居ないだろう。さらに、ルール違反したとされるリュウの仲間だというのは一緒に居たところを見た観客の獣人達も分かっている」


別にデュラがこの国に居るのならトロフィーを渡せるからいいらしいが、居ないと分かっているのでトロフィーは渡せないことが確定してしまっている。せっかく表彰式を別の機会にまでしたのに、2位が来ないと締まらないという懸念らしい。また、デュラもリュウ同様に何らかの不正をしたのでは無いかと国民からも少し疑われているそうだ。


ちなみに、俺が気絶している間に順位はこれから会議で話し合うから、ベスト8までに入った者はまだこの首都に居てくださいという言う話をしたそうだ。


「だから、仲間のリュウがこのような不正をしたから、2位を辞退したってことにしたぜ」


「いいのかよ」


「いいんだよ。居ないから口も出せないだろ。だが、もし表彰式が終わる前に現れるようだったら2位にする予定だ」


つまり、死人に口なしということか。まあ、デュラは生きているのだけど、居ないなら同じようなことなのだ。


「あれ?3位どうするの?」


俺が1位で、4位だった護衛の人が2位になるのだろう。だが、3位は決まっていない。もちろんその候補はいるが、それはベスト8に入っている残り4人全員になる。


「ああ。4日後に3位決定戦を残り4人でやるぞ」


「えっ!?聞いてない…」


「当たり前だ。正式発表は今日の昼で、まだ俺は言っていなかったからな」


この場で俺とベクアの話を大人しく聞いていたキャリナも3位決定に参加する1人だ。ベクアとキャリナ以外の残りの2人は俺の知らない見知らぬ獣人だ。


「午前で2試合、午後に1試合のスケジュールで、その試合が終わってすぐに表彰式の予定だ」


その試合は元々のトーナメントに則って行われるそうだ。つまり、午前中の1試合目にベクアと知らない獣人、2試合目に知らない獣人とキャリナが戦うことになる。つまり、ベクアとキャリナの2人が勝ったら午後の3位決定では兄妹対決となる。



「もし俺と戦うとなったら、リュウの時みたいにゼロスからエンチャントを借りても別にいいぞ」


「……考えておきます」


ベクアはキャリナを挑発するようにそう言った。

ちなみに、俺はキャリナが貸してほしいと言ってきたら貸すだろう。ただ、俺から貸そうかとは今回は言わない。前は相手が相手だったし、そんな選択肢があるとも分かっていなかっただろう。たが、今回の相手は良くも悪くも良く見知った相手だ。だからどうするかは完全にキャリナの判断に任せるつもりだ。



「あ、話を変えるけど、そういえば何で魔法の効果をさげる魔導具を使わなかったんだ?」


わざわざ俺を実験台としてまで効果を試した魔法などの魔力を使うスキルの効果を抑える魔導具は、決勝で使われることは無かった。


「理由はゼロスも魔力を使い始めたからだ。単純にゼロスの戦いを邪魔したくなかったんだよ。まあ、あれは簡単に起動できるから、観客にまで影響が出るようなスキルを使われそうになったらすぐに使っていたがな」


どうやら、俺が戦いやすくするために魔導具は使われなかったそうだ。実際にかなり助かっていたと思う。エンチャントの効果が弱くなるので、魔導具が使われたらもっと危ない場面もあっただろう。まあ、魔導具が使われていたら、ここまでの身体の負担に襲われることも無かったかもしれないが。



「じゃあ、俺は聖女のところに行ってくるわ」


「おう!俺らと模擬戦をできるように早く完治しろよ!」


とりあえず、話したいことは全て話したし、聞きたいことも全部聞いたので、ベクアと別れて聖女の元へ向かった。

ちなみに、ベクアはこれから昼にある大会の発表とかで忙しく、キャリナもそのサポートをするため、聖女の元へは俺1人で向かった。

ちなみに、聖女はこの王城内に居るそうだ。聖女の元までの道順は教えてもらったので、1人でも大丈夫だろう。もう何度もこの王城に出入りしているし、大会優勝者として顔も売れているので、王城を1人出歩いても大丈夫になった。ただ、一応警戒されているっぽいので、本当はキャリナについて来てもらいたかった。


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