第383話 会議

「用も済んだし、一旦宿に戻ろうか。色々話すにしても宿に戻ってからの方がみんな楽でしょ」


「そうですね」


「ん」


「そうね」


「はい!」


みんなも宿に戻るのは賛成のようだったので、俺達は宿へと戻った。



「さて、これどうしようか?」


俺はベッドに座りながら貰った地図を見せ付けるようにひらひら揺らしながらみんなに聞いた。


「単純に貰っていないものとして扱えばいいのではないですか?」


俺の問いに答えたのはソフィだった。そして、ソフィにしては珍しく後回しのような感じの案だった。



「別にこれからすぐ深林へ行く訳ではありません。ですので、どっちにしてもすぐにその地図が必要になることはありません。今後事情が変わる可能性もありますので、今はその地図に関しては何も考えなくてもいいのではないですか?」


「そうなのかな?」


俺は今後の動き方にも関わってくるので、どうするかは早めに決めておいた方がいい気がする。


「お兄ちゃんはあまり納得できていないみたいですね。では、エリーラはどうするのが良いと思いますか?」


「……」


ソフィはこれまた珍しくエリーラに意見を求めた。俺やシャナではなく、エリーラにまず意見を求めるのは初めてだろう。俺の知らない間に何かあったのかな?


「……私もその地図は無視でいいと思うわ」


エリーラは少し考えてからそう言った。



「2人も放置についてどう思う?」


俺は今度はシャナとキャリナに意見を聞いた。


「放置でいいと思う」


「私も放置でも問題ないと思います」


2人も放置には賛成のようだ。まあ、今すぐ決めなければならない問題でもないので、確かに放置が1番安全策かもな。


「じゃあ、とりあえずこれは放置ってことで。ただ、深林に行くってなったら地図および魔人をどうするかの結論を出すよ」


「分かりました」


「ん」


「分かったわ」


「はい!」


これで地図の今後の扱いが決まったので、俺はマジックリングの中に地図をしまった。



「それから、私達は非合法で深林へ入っているので、地図についてはここにいるメンバーで秘密ということでいいですか?下手に話して私達が魔族と仲が良いと勘違いされては困りますので」


確かに深林へ入る許可が出るのは冒険者のランクがAランクになってからだ。しかし、俺とソフィとシャナはBランク、エリーラやシャナに至っては冒険者登録すらしていない。

そんな俺達がこんな地図を見せたところで怪しまれるだけだ。信頼できない人間に広めてしまうと、適当なものを描いて金儲けをしようと思われるかもしれない。しかし、まだそう思われるくらいならいい。最悪の場合は詐欺として捕まって尋問されてしまう可能性すらある。だからといって魔族から貰ったと言って信じられてしまったら、俺達は魔族の仲間として扱われてしまうだろう。



「俺は秘密に賛成。ベクアが深林に行くって決まった時にでも教えればいいからな」


俺はここに居ないベクアに知らせるのは問題ないだろうとは思う。ただ、ベクアにだけ許すとかにしてしまうと、個人個人で人との信頼度が違うから面倒なことになる。例えばだが、私はベクアよりも信頼しているこの人にも話したいっというふうになってしまうかもしれない。人との仲の良さはそれぞれ違うので、変に誰かは良い、誰かは駄目とかにしないで、全員駄目にした方が揉める心配がなくなっていいだろう。


「賛成」


「私も賛成です」


「…………賛成よ」


エリーラは再び少し考えたが、これにも誰の反対意見がなかった。だから、この地図のことは誰にも言わないように決まった。



「なあ、キャリナ。ここにも冒険者ギルドってあるの?」


そういえば、俺は人以外でも冒険者になれるのかしらなかった。エルフは人が住んでいる領土が小さかったから無いだろうが、獣人やドワーフの国には冒険者ギルドあるのかな?


「ありますよ。ただ、人間であるゼロスさん達が使えるかどうかは分かりません」


冒険者ギルドという名前は一緒のようだが、俺たちが使っている冒険者ギルドと少し違うかもしれないらしい。それを詳しく知るためにはベクアとかに聞くしかないそうだ。ベクアは冒険者に登録しているからキャリナよりは詳しいらしい。




「よし、行くか」


「お付き添いします」


「私も」


「私も行くわ」


「行きましょう」


俺達は地図の件の話が終わったあとに適当に時間を潰して、日が完全に登った頃に王城へ向かった。

俺は魔族の件の話と、大会の結果の話、それから治療のためだ。そして、ソフィ、シャナ、エリーラの3人は魔族の件と、警備の仕事の話だ。ちなみにキャリナは王族として王城へすんなり入るための付き添いだ。


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