第379話 決着?
パキパキ…………
「…ん?」
何かリュウの方から変な音が鳴った。俺は蹲りながらリュウの方をじっと見てみた。
「ははっ……」
俺はリュウの様子を見て乾いた笑いしか出なかった。あの変な音はリュウの肘の少し先と尻尾の先に付けた傷の部分から先までの鱗が剥がれ落ちている音だった。その鱗が落ちた部分にはあのリュウの白い炎ような綺麗な白色な鱗が現れた。
「傷まで治るのかよ…」
鱗が変わったことで、さっきつけた傷まで治っていた。というかあれはなんだ?脱皮…なのか?いや、脱皮とは何か違う気がする。
「やばい…」
もうリュウの傷をつけた部分から手の先、尻尾の先まで鱗が白く変わった。そして、それが終わると、俺の方をギラッと睨み付けた。蹲っていないで、早く立たないと…。
「ふっ…んん!」
俺は剣を杖のように使って何とか立ち上がった。その頃にはもうリュウは構えていた。ヤバ過ぎる。今の俺がリュウの攻撃を防げるとは思えない。
どうしようか焦っていると、俺の目の前の空間に魔力が溜まり始めた。
「ふっ…!」
「リュウちゃん、落ち着いて。それはさすがにダーリンが死んじゃうから」
「なっ…」
俺が全く反応すらできない速度で近付いて殴ってきたリュウの拳を、急に目の前に現れたイムが自分の腕の中に埋める形で受け止めた。
「……すまん。殺してしまうところだった」
リュウはハッとした表情をして、謝りながら全身の鱗を消した。
「リュウちゃんが暴走気味だし、帰ろうか。ダーリンも一緒に」
「っ!?」
イムがそう言うと、リュウと俺の周りにイムの魔力が纒わり付いた。
「ふっ!」
俺は少しふらふらした太刀筋ではあるが、その纏わり付いた魔力を斬った。
「…ダーリンを連れて帰るにはもう少し弱らせないと駄目かー」
リュウだけを転移で帰した後にイムはそう言った。
「ても、あと一歩まで弱っているダーリンは珍しいから、連れ帰るには今が最適なんだけどな…」
リュウは俺の後方からやってきた魔法を通り抜かせながらそう言った。
「おっら!」
その直後、イムに拳が通り抜けた。
「でも、ここには敵が多いんだよね…」
「お兄ちゃん、もう参加していいですよね」
「もう参戦していいよな?」
イムに魔法攻撃をしたのがソフィで、イムに殴ったのがベクアだ。
「僕もまだ前にダーリンにでかいの一発もらったせいで本調子じゃないし、今はダーリンとの間に障害が多いから今日は諦めて帰らせてもらうよ」
ソフィとベクアのどんな攻撃もイムはすり抜けて全く効いていない中、イムはそう言い出した。
「あ、そうだ。帰る前にダーリンに言うことがあったんだ」
「…ん?」
リュウは突然話を変えて、俺に話しかけて来た。
「これはダーリンと言うよりも、妹ちゃんに関わる話かな?深林の奥に魔人が住んでいる場所があったよ。魔族の僕が行ったら戦闘になりそうだから、ダーリン達に行ってきてもらいたいな」
「魔人…」
魔人とは、ソフィの今の種族のことだ。人間に近い魔物を魔族というのに対して、魔人とは魔物に近い人間のことを言う。
「何でバレたのかみたいな顔をしているけど、見ればそれくらいはわかるよ」
ソフィの種族は俺しか知らないはずだ。だから、なぜ知っているのか気になっていたのだが、それが顔に出ていたようだ。というか、魔人は見れば分かるものなのか?
「まあ、暇だったら行ってみてよ。深林の中央付近に行けば会えると思うよ。それじゃあ、ダーリンまたね〜」
「逃がさない!」
「逃がさん!」
イムは一方的に話すと、勝手に帰って行った。ソフィとベクアの攻撃はイムが消えたことで当たることは無かった。
「あっ…やべ」
リュウとイムが居なくなったことで、緊張の糸が切れたのだろう。意識が遠のいていくのが自分でも自覚できた。まだ近くにリュウやイムがいるかもしれないから意識を保とうとしたが、その努力虚しく俺は倒れながら意識を失った。
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