第356話 本戦1試合目 2
「ゼロス、ナイスゲームだったな!じゃあ飯食いに行こうぜ!」
「良い店でもあるのか?」
「人の少ない穴場でいいところ知ってるぜ!」
俺が観戦スペースに行くと、ベクアに昼食に誘われた。午前中に2試合やって、その後は昼食のための休憩時間が与えられる。俺はベクアとキャリナと一緒に昼食を食べに行った。
「あ、そういえば、ゼロスが戦っている時は魔族達が勢揃いしてたぞ。ゼロスの試合が終わったらすぐに消えたけどな」
「そうなんだ」
魔族もさすがに自分の仲間の試合は見に来るのか。ということは、ベクアの次の試合は見に来るのかな?
ちなみに、ベクアおすすめの店の料理は美味かった。店のほとんどのメニューは肉料理で、試合後の疲労も回復するかのように感じるほど肉厚で量が多かった。異世界では珍しく、個室があって、落ち着いて昼食を食べることができた。
1つ疑問があるとするなら、何で路地裏の隠れた名店を王族であるベクアが知っているのかという事だな。王族ってそんな隠れた名店を発見するくらい外食を楽しんでいいものなのか?
「いや、美味しかったな」
「なら良かったぜ。俺はこのまま控え室に行くわ」
「頑張れよ」
「頑張ってくださいね!」
昼食を楽しんで、闘技場に戻ると、3試合目がそろそろ始まるというちょうどいい時間になっていた。
「…キャリナ、ちょっと先に観戦スペースに行っててくれ」
「え?はい。分かりました」
キャリナはきょとん?としたが、観戦スペースに先に行ってくれた。
「……だからいきなり魔力を出すのはやめてくれ。びっくりする」
「お前だけに気付かれるにはこれが一番楽だ」
「いや、ソフィやシャナやエルフ達にも気付かれるぞ」
俺が振り返って話しかけた相手はリュウだ。いきなり後ろで魔力を感じたからすぐにリュウが居るというのはわかった。ただ、今回はリュウの横にデュラという魔族が居るのだ。
「今日の試合は良かったぞ。見ていたメラとロールが一瞬萎縮したくらいだ。この調子で頑張ってくれよ」
リュウはこれだけ言って、デュラと一緒に俺の横を通り過ぎて行った。
「デュラか……」
通り過ぎた時に思ったが、リュウとイムを抜きに考えると、デュラは俺が出会った魔族の中でトップクラスに強いかもしれない。あのエンペラーリッチの魔族と同じレベル、またはそれ以上の強さがあるかもしれない。つまり、デュラは神雷を使ってやっと倒せるようなレベルということだ。ただ、今回はお互いに魔力を使えないという条件だから、エンペラーリッチの時と同じようには考えてはいけないな。
ちなみに、神雷は魔力を使わない。つまり、この試合でも放てるということだ。しかし、多分神雷は加減して使うことができない。そのため、使ったら殺してしまう可能性が高い。だからこの試合では使えない。
「問題はリュウだけじゃないのかよ…」
俺はそう呟いて、キャリナの待つ観戦スペースに向かった。
『これより、本戦1日目の3試合目を開始します!選手は入場してください』
「始まるな」
俺が観戦スペースに戻って30分ちょっとして、入場のアナウンスがかかった。
『試合開始!』
そして、ベクアの試合が始まった。
ベクアは向かってきた相手のパンチを躱して、カウンターのアッパーを食らわせた。アッパーで宙に浮いた相手が落ちてきたのに合わせて、今度は回し蹴りを食らわせた。
『試合終了!勝者ベクア!』
回し蹴りで相手は場外に行ったので、ここでベクアの勝利が決まった。多分だが、最初のアッパーの時点で相手は気絶していた気がする。それくらい綺麗に決まっていた。
『本戦1日目の4試合目を開始します!選手は入場してください』
ベクアが戻ってきて、また数十分経ったら次の試合が始まった。
『これにて本戦1日目を終了します』
4試合目では、ロールという魔族が当たり前のように勝っていた。ロールは3m弱ほどの巨体で、1m程の棍棒を使って戦っていた。と言っても、その棍棒のフルスイングで相手は場外まで吹き飛ばされていた。
これで、俺とベクアの2試合目の相手が両者とも魔族で決まった。
次の日からの本戦2日目と3日目も順当に過ぎていった。国王の護衛やデュラは苦戦することなく勝っていた。特にデュラの試合は圧巻で、パンチ1発で相手を場外まで吹っ飛ばしていた。
『これより、本戦4日目の1試合目を開始します!選手は入場してください』
本戦4日目の今日の2試合目にリュウが、4試合目にキャリナが出ることになっている。
1試合目は特に苦戦することなく護衛が勝利した。
『本戦4日目の2試合目を開始します!選手は入場してください』
そして、これからリュウとルドイという名のオッズが4位の護衛との試合が始まる。
この試合でリュウの力の一端くらいは見られるといいな。
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