第344話 責任の取り方

「なるほど…リュウという魔族はそう言っていたのか」


「はい」


今、俺ことゼロスは王城にて国王とその側近達とベクアに昨日リュウと話したことを説明しています。こうなった経緯は簡単です。朝早くに宿にやってきたベクアに昨日リュウという魔族に会って大会に参加する目的を聞いたと言った。すると、ベクアが「続きは王城で聞く」と言って、俺を王城へ連行していきました。



「お前らはどう思う?」


「確かにその理由なら整合性は取れていると思います」


「私もそう思います。しかし、魔族がそんなことを考えるのかという怪しさもあります」


国王が側近へ質問をした。

どうやら魔族は魔物よりも知能が高く残忍な種族と考えられているみたいだ。

そして、国王は次にベクアに同じ質問をした。


「ベクアはどう思う?」


「俺は直接そのリュウってやつにも魔族にもあったことねえから分からないな。そんな俺や同じく会ったことの無い側近に聞いても意味ないと思うぜ。

話を聞くとしたら、魔族と何度も戦っていて、リュウという魔族にも会ったことあるやつとかじゃないとまともな意見はでないと思うぞ」


「その者が我々人間ではなく、魔族の味方だと…」


ダゴンッ!


ベクアが国王の言葉を遮るように、椅子に座っている国王の目の前の机を獣化した拳で叩き割った。

机の上に乗っていた大量の紙がバラバラと地面に落ちていった。



「おい親父…あんまり考え無しにものを言うなよ?下手なことを言ったら俺が敵になるぞ」


ベクアは国王を睨み付けながらそう言った。

国王はベクアの睨みをものともせず、手をすっと上げた。すると、後ろでベクアと同じように獣化して警戒態勢になっていた側近兼護衛は獣化を解いた。


ちなみに、後ろに居た護衛の1人は昨日会った鎌鼬と契約しているという護衛だった。獣化の姿は両腕から鎌のような鋭い刃が出ていた。もう1人の初見の護衛は虎柄に姿になっていた。



「最後まで話を聞け。そう言った意図で言った訳では無い。ゼロスも気を悪くしないでほしい。しかし、国王としてそういった場合も想定しておかなければならないのだ。例えば、本人にその意識がなくても無意識に操られている可能性とかもな…」


国王の言っていることは当然だ。いくら息子と仲が良い奴だからと言っても、急に魔族が話していました!とか言い出してもそれを鵜呑みにするなんてできないだろう。というか鵜呑みにするようなやつが国王なんてやっていけないだろう。



「ゼロスが魔族の味方だったり、操られていたりなんて事は絶対にない。俺が保証する」


「もし魔族の味方や操られていた時、お前はどう責任取る?」


俺は魔族の味方ではない。しかし、絶対に操られていないと断言することはできない。

とはいえ、操られていた時にベクアが責任を取らされるのはダメだと思って国王に異議を唱えようとした。しかし、俺が話す前にベクアが話し始めた。



「その時は俺が責任取ってゼロスをぶっ飛ばす」


「お前にできるのか?昨日の魔法戦でボッコボコにされていたのにか?」


え?待って。責任の取り方って、俺をぶっ飛ばすとかなの?普通はベクアがどうこうなるとかじゃないの?


「ルール無しの殺し合いでなら俺はゼロスにだって負けない。そんなことは親父も知ってるだろ?」


「ベクアがそこまでの覚悟で言うのなら問題ないだろう」


もちろん、ベクアとルール無しの殺し合いなんてしたことは無い。だが、ベクアはルール無しの殺し合いでなら俺に勝てる自信があり、国王も俺がやられると思っているのか。



「ゼロス、俺はお前と殺し合いはしたくないからな?」


「俺だってしたくないわ!」


誰が好き好んで大切な友と殺し合いをしたいと思うんだ。


「さて、ウカク。これから警備にあたる者達へ新しい書類を作成しなければならないぞ」


「内容はどうしますか?」


「魔族と思わしき者を見つけても下手に刺激せず、上に報告だけで放置するように」


「分かりました」


どうやらベクアのおかげもあって俺の話は国王に信用してもらえたみたいだ。


「大会まであと1週間しかない。おかけでやることが増えてしまってこれから大忙しになったぞ」


「国王なんだから頑張れよ!ほらゼロス!訓練場に行くぞ〜!」


「あ、ちょっ!」


ベクアに腕を持たれて引きずられながら部屋を後にした。出る瞬間にありがとうございましたと言いながらペコッと国王達に頭を下げておいた。聞こえてたよな?



「ほら!みんな待ってるんだから早く行くぞ!」


「分かったから!」


今日はソフィ達3人も王城へとやって来ている。国王に説明する役目があった俺とベクアを置いて、ソフィ達はキャリナとウルザに案内されて先に訓練場に行っている。俺達もソフィ達が居る訓練場に向かった。

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