獣人大会編
第333話 移動
「今回はパーティの為に忙しいだろうに帰ってきてくれてありがとうな」
「全然大丈夫だよ」
「また暇になったら何時でも返って来いよ」
「ありがとうございます」
パーティが終わった翌日に玄関でアンドレイ兄様にお見送りの挨拶をされた。
「「行ってきます」」
俺とソフィはそう言って屋敷から出た。
「まずは、人目のないところまで行きましょう」
「了解」
俺とソフィは目立たないように隠密を使いながら街を歩いていった。
「この辺なら目立つことは無いですね」
「ああ、そうだね」
街から出て少し歩いて森の中に入った。ここなら余程騒がない限りは誰にも気付かれないだろう。
「私の隠密のスキルレベルは6ですけど、お兄ちゃんの隠密のスキルレベルはいくつですか?」
「えっと…9だな」
進化前の時に隠密のスキルレベルは8だった。それが進化したせいで1まで下がってしまった。よく再びここまで上げることができたものだ。
「より隠密のスキルレベルが高い方が見つかりにくく、安全ですよね?」
「まあ、そうだね」
深林を通ってショートカットしようとしているので、魔物に見つからない方が安全である。
ちなみに隠密は発動者が触れている者にも効果は現れる。
「お兄ちゃんと私では可能なエンチャントに差がありますので、お兄ちゃんの方が早く動けますよね」
「まあ、そうだろうね」
俺はトリプルハーフエンチャントまで可能だが、ソフィはダブルエンチャントまでしかできなかったはずだ。
「できるだけ急いで行きたいですよね?」
「……ソフィ、何か言いたいことがあるならはっきり言おうか」
ここまで長々と説得するように話されたら、さすがにソフィが何か言いたいのだということくらいは気付くことができる。
「私をお姫様抱っこしながら走ってほしいです」
「いや…両手塞がるし、躓いたりして前に倒れたら危ないからだめ」
確かに俺がソフィをお姫様抱っこすれば、俺の隠密がソフィにまで影響するし、より早く移動することも可能かもしれない。
だけど、全力疾走中にお姫様抱っこは普通に危険だ。それに深林で咄嗟に剣を取り出して戦闘を開始できないのは不便過ぎる。
「ならおんぶならどうですか?おんぶなら転んでも危険性は少ないですし、緊急時には私も素早く降りることができます」
「…確かにおんぶなら問題ないかな?」
おんぶならソフィに掴まってもらえば、両手を自由にすることも可能だから問題ない気がしてくる。
「ありがとうございます」
ソフィはそう言いながら俺の背に乗ってきた。
「後ろは私が警戒しますね」
「ありがとう」
ソフィがうしろを警戒してくれるなら、俺は前だけを警戒すれば良くなるからだいぶ楽になる。
「雷電ダブルハーフエンチャント。振り落とされないようにしっかり掴まっててね」
「分かりました」
こうして、俺達は走ってキャリナ達が待つ獣人領に向かった。
「もうすぐ夜だけどどうする?」
朝から夕方までの数時間をほぼ全力で走り続けたので、目的地までは残り3分の1あるかないかくらいまで進めただろう。
俺は称号の不眠不休があるから数日程度なら寝なくても問題はないから夜も進んでも大丈夫だ。しかし、不眠不休を獲得していないソフィは1日寝なかっただけでも少しきついだろうし、だからといって俺の背で寝るのは危ないからおすすめはできない。
「そうですね……。21時を過ぎたタイミングで深林から出て、交代で4時間ずつ眠るってのはどうでしょうか?」
「…それはいいかもね」
1番深林の夜の魔物が活発に動き出す時間帯は深林から出て、見張りを交代でやる。この方法が1番安全だからその案を採用した。
19時過ぎくらいから移動をやめて夜営の準備と夜ご飯の準備を始めた。そして、21時から俺が寝て、ソフィが見張りをやった。また、1時から5時までは俺が見張りをして、ソフィが寝た。
「じゃあ行くか」
「はい」
5時から朝食を食べて、泊まったテントを片付けて、7時前にソフィが俺の背に乗って出発した。昨日は見張り中に魔物が現れるようなことも無く、静かに夜が過ぎていった。
この日の夜も昨日と同じように交代で見張りをして夜を明かした。
「お兄ちゃん。一旦止まってください」
「ん?どうかした?」
アドルフォ領から獣人領に向かって3日目の昼過ぎにソフィから声を掛けられて止まった。
「このままのペースだと、集合地点にぎりぎり到着しません」
「うわっ…急いでどうにかできるって問題でないからどうしようか」
今も安全が保てる範囲での全力疾走なので、これ以上ペースを早めることは難しい。
「夜に合流しても意味が無いので、今日の残り時間は深林で魔物を狩りませんか?」
夜に3人と合流できても、もう街への門は閉まっているから街には入れないだろう。
だから、わざと合流するのを昼間になるように少し遅らせるために、今日はもう集合地点へ向かうのをやめて、深林で魔物を狩ろうという提案だ。
「そうしようか」
ソフィの提案を採用して、今日はもう進むのをやめて魔物を狩った。そのおかげで俺のレベルが1つ上がった。
夜は今まで通り交代で見張りをして過ごした。
そして、朝になって再び集合地点に向かって進むと、ソフィの計画通り、昼少し前に集合地点付近に着くことができた。
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