第312話 3つの案

「2人とも予定よりも早く起こしちゃってごめんね。ちょっと話したいことがあってさ」


「何ですか?」


「?」


俺は2人に夜の深林の状況を説明した。



「まず1つ言いたいのは、深林の状態が普通では無いと判断した時点で私達を起こしてください。お兄ちゃんが1人で深林に入って何かあったらどうするんですか!」


「あ、ごめん」


確かにソフィの言う通り、もっと早くから起こした方が良かった。ちょうど今は深夜なので、1番深林にいる夜行性の魔物が動いている時間だろう。そんな時間に起こされても…って話だな。



「お兄ちゃんへの文句はこれくらいにして、これからのことを話しましょう」


ソフィはある程度俺に怒ると、これからどうするかを少し考えてから提案を始めた。


「まず、1番安全なのは、夜だけ深林の外で野営をする事です。ですが、毎回朝に1時間ほど歩かなければならなく、狩りの時間が減ってしまいます」


深林を囲っている壁の近くで野営している時に誰かに見つかったら不審がられる。俺達は許可無しで深林に来ているからあまり人に深林のすぐ近くにいるのを見られたくない。だから怪しまれない程度に深林から離れて野営をしなければならない。そもそもそんな危険地帯の近くを夜に誰かが通るとも思えないけど、念には念を入れなければならない。



「その次に、今まで通りの野営をすることです。幸い、魔物を見つけてすぐに討伐できていれば魔物は寄ってこないみたいです。ただ、見つかった時にどれほどの魔物が寄ってくるかが未知数です。ですので、見つかったらすぐに寝ている人を叩き起こす必要があります」


この案が1番無難な気がする。

魔物が想定よりも多いという場合でも、俺の転移で逃げれば問題は無い。空を跳べる魔物は追ってくるかもしれないが、数は少ないだろう。そして、次から深林の外で野営をすれば良い。

魔物があまり来ないようならそのままの状態で野営をすれば良い。


「そして1番危険ではありますが、1番レベル上げの効率が良くなるのは、狩りをする時間を昼から夜に変えるすることです」


それは俺も考えていた。昼間よりも夜の方が魔物の数が何倍にも増えている。単純計算でもレベル上げの効率は何倍にも上がる。


「私が思いついた中で現実的な案はこの3つです。私達のリーダーであるお兄ちゃんはどの案がいいと思いますか?」


ここであえてソフィが俺がリーダーであるというのを強調して俺に話を振った。ソフィは俺が決めなければいけないと言いたいのだろう。


「……みんなの夜目のスキルレベルは?」


「私は5です」


「4」


「3だわ」


「2です」


ソフィ、シャナ、エリーラ、キャリナの順に夜目のスキルレベルは高いようだ。ソフィですらまだ5なのか……。



「…ソフィならどれくらいまでの範囲を12時間永続的に明るくできる?」


「どの程度明るければいいのですか?」


ソフィに質問をしたら質問で返された。確かに光の強さは言わないと分からんよな。


「暗いところでも俺達が昼の狩りから引き上げる時くらいの暗さでなら?」


「……それなら半径50メートルは可能ですね」


「ありがとう」


半径50メートルか…。その範囲内なら戦闘は十分可能だろう。しかし、未知数の魔物の数を考えたらもう少し余分の範囲は欲しい。俺の光魔法はスキルレベルが低いから12時間も永続するのはきつい。さらに、ソフィみたいに広範囲は明るくできない。


「ソフィはその明るさを維持しながらどこまで他のこともできる?」


「…普段の7割ほどの戦闘は可能でしょう」


「ありがとう」


7割…ソフィの7割なら魔物達を相手にするだけなら問題は無いだろう。ただ、他の人に気遣いながらの戦闘は少しキツイだろう。



「シャナとキャリナにはかなり苦労してもらうけど大丈夫?」


「全く問題なし」


「大丈夫です!」


これを聞いた時点で俺がどの案を採用しようとしているかはみんな分かっただろう。だけどリーダーとしてはっきりどうするかを言っておく。



「とりあえず明日は夜に魔物を狩る。今後どうするかは明日の様子を見て決める。だから明日の昼間の魔物狩りは昼を過ぎたらもう終わりにして休息にする。

具体的な夜の狩りの方法はソフィにできる限りの明るさを常に維持してもらう。

そして、主に戦闘をするのはシャナとキャリナだ。19時から22時、4時から7時まではソフィがシャナを、エリーラがキャリナのサポート。これはあくまで囲まれるような状況にならない程度に間引いてくれればいい。ソフィがサポートが大変なようなら俺が変わる。

それから、22時から4時までは深夜の時間帯は俺がシャナとキャリナの2人のサポートをする。その間にエリーラはソフィの護衛をしてもらう。だけど俺1人で2人のサポートが大変かつ、ソフィの護衛が必要なそうならエリーラにも手伝ってもらう。

もし想定より魔物の数が多い、または想定よりも強い魔物が現れるなんてことがあったら俺の転移ですぐにでも深林から出て逃げる。

こんな感じでどうだろう?」


「私には反論なんてありませんよ」


「やる気が出る」


「私も問題ないわよ」


「頑張ります」


4人から反対意見が出なかったから、明日は夜の狩りをするということで意見がまとまった。色々と状況をソフィとシャナに説明したり、案を考えたりで数時間を使ってしまったので、先に見張りをしていた俺とエリーラとキャリナはテントへ向かった。

夜の狩りの詳細などは明日の午前中にでも決めるということになった。そうは言ってもそんなに話すことは無いだろう。


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