第310話 目標

「あんたは何を目標にレベル上げをするの?」


「ん?俺?」


「そうよ」


模擬戦の翌日にみんなで揃って深林へ向かっている時にエリーラにそう尋ねられた。


「だってあんたはこの中では1番強いでしょう?多分魔物を含めても全世界であんたよりも強いやつは数えられるくらいしか居ないわ。特に争うとしなければあなたは既に誰にも負けないくらいには強いわよ」


まず進化している人間がこの世界では少数だ。さらに、俺はエクストラスキルを3つも持っている。この時点で俺はかなりの強さであると判断できる。



「何を目標にって言われると難しいけど…誰にも負けないくらいには強くなりたいって思うよ。この前も俺が負けたら、今度はキャリナが危なくなった。だから身近な人だけでも絶対守れるようにはなりたいな。もし平和に暮そうっとしても魔族っていう敵もいるわけだしさ」


「…そう」


あのエンペラーリッチとの戦いで俺が殺されていたら、次には近くに居たキャリナも殺されていただろう。そんなことをさせない為に強くなりたい。欲を言えば、あの時にソフィやエリーラ、キャリナの元へ助けに行けるくらい強くなりたい。



「逆にエリーラは何を目標にしているの?」


俺はエリーラにも聞いてみた。



「身近な私の目標はあんたよりも強くなることかしら?」


エリーラはそう言うと、横目で俺の事を数秒見てきた。そして小さくため息を吐いて言葉を続けた。


「…でも、それが難しいってことにはもう気が付いてるわ。こうしてあんたと一緒に居て、同じことをしてもその差は広がる一方だわ。だからってあんたと離れて特訓しても効率は下がるわ」


「………」


俺はそれになんて返答していいか分からなかった。正直、俺が強いのは神から貰った【称号】収集があるからだ。それが無ければ俺はかなり弱体化する。言ってしまえば、俺の強さはエリーラとは違って、自分の努力だけで付けた力では無い。



「ふふっ…そんな情けない顔をさせるためにそんな弱音を言った訳じゃないわよ。あんたには勝てなくても、あんたそばであんたの次に強くなるっていう目標があるから心配しなくてもいいわよ」


今度は最後にソフィを横目に見ながらそう言った。


「単純な話、精霊王と最上位精霊の2人と契約してるだけで私が勝つのは難しいのに、さらに悪魔王、獣王とも契約してるんじゃ無理に決まってるわよ」


単純に考えると、エリーラと俺の戦いでは、2対5になる。そう考えると勝つのは難しく思えてしまう。



「ソフィは何を目標にレベル上げをするの?」


エリーラとの話が終わって、今度は俺がソフィに同じ質問をしてみた。ソフィもかなり強い。そんなソフィの目標がシンプルに気になった。


「今の私の1番の目標はあのイムの転移を妨害できるようにすることですかね」


「あっ……」


そうだ。そもそも俺達が魔族とバラバラで戦うことになった原因はイムの転移だ。俺達はあれを防げるようにしなければならない。


「それが達成できましたら、次の目標はイムを殺せるようになることですね」


「あはは…」


どうやらソフィはイムに逃げられた事がかなり悔しかったみたいだ。ソフィの話では、イムにダメージを当てることすらできなかったらしい。だから次に会った時には絶対逃がさないと意気込んでいる。

ちなみに、シャナの目標は進化をすることで、キャリナの目標は進化することと、獣と契約することだそうだ。




「深林に着いたな。よし、じゃあ転移!」


そんな話をしていると深林の前に到着した。この前と同じで俺がユグに魔力を渡して、みんなで深林まで転移をした。


「じゃあ、早速魔物を狩りに行くか」


「はい」


「わかったわ」


「ん」


「分かりました」


今日はまだ1時間ほど深林へ歩いただけだから休憩もいらないだろう。俺達はすぐに深林の奥へと進んで魔物を狩りに向かった。





「何か今までよりも魔物が多かったよね?」


「2倍…とまでは増えていませんが、確実に増えてはいますね」


昼過ぎまで狩りを続けたが、前に狩りをしていた時よりも魔物が増えていた。


「じゃあ、少し早いけど今日はもう戻って野営の準備をしようか」


今日は深林に来た初日なので、まだ時間的には狩りはできるけど、今日はここで引き上げて野営の準備を始めた。




「見張りは今までと同じでグループ分けでいい?」


「……はい」


「問題ないわよ」


「いい」


「大丈夫です」


ソフィだけは少し不服そうだが、4人ともそれでいいとの事だった。だから今まで通り、俺とエリーラとキャリナ、ソフィとシャナというグループで夜の見張りをすることになった。そして、今日は俺達が先に見張りをすることになった。




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