第305話 その眼の詳細
「精霊ジール降臨、悪魔憑き」
『その早い判断はいいわよ』
俺はキャリナがやってくる前にその2つを行った。これにはダーキも好評価だった。
「はあ!」
キャリナが再び俺に攻撃を仕掛けてくるが、今度はちゃんと受け流せている。少しの隙に雷電魔法と精霊ユグエンチャントをできるか試したが、できなかった。
「アイスバーン!」
「わっ!」
俺は数歩下がってから氷魔法を使った。この魔法は地面を凍らせる魔法だ。急に地面に氷が張ったことで、キャリナは滑って転びそうになった。しかし、さすが獣人。体勢は崩したが、転ぶまではいかなかった。でも、その隙は大きい。
「インフェルノ」
下の氷を溶かす意味も込めて火魔法を放った。このままキャリナに近付けば、俺まで滑ってしまう。一応魔法の威力は加減しているが、当たったら軽く火傷はするだろう。キャリナがどう行動するかに注目して見ていたら、黄色のモヤが消えるのが見えた。
「魔法もかよ…」
モヤが消えると、すぐ後には下に張った氷と目の前の火も消えていた。どうやら魔法も奪えるようだ。しかし、精霊ジール降臨と悪魔憑きは奪われてはいなかった。
「インフェルノ!」
「サンダーバースト!」
キャリナはさっき消えたばかりのインフェルノを放ってきた。俺は自分が放ったインフェルノよりも少し威力の高くなるように計算してサンダーバーストを放った。
「にゃうっ!」
キャリナの放ったインフェルノは俺のサンダーバーストに押し負けた。そして、キャリナは猫のような声を上げてサンダーバーストを食らった。キャリナが痺れて立てないでいるうちにキャリナの元まで雷縮で近付き、鞘に入った剣を首にトンっと当てた。
「参りました」
「勝者、お兄ちゃん!」
こうして模擬戦が終わった。俺は精霊ジール降臨と悪魔憑きを解除した。そして、キャリナに回復魔法をかけてダメージを回復させた。
「立てる?」
「はい、大丈夫です」
俺はそう言って座っているキャリナに手を差し伸べた。そして、俺の手を握ったキャリナを引っ張って起き上がらせた。
「その眼の事詳しく聞いていい?」
直接戦ったので、大体の能力の察しはついている。しかし、細かい詳細までは分からないので聞いておきたい。
「はい。あ、少し待ってください」
キャリナはそう言うと、誰もいない方向を向いた。
「アイスバーン!」
キャリナがそう言うと、目の前の地面が凍った。効果範囲までさっき俺が放ったやつと全く同じだ。
「これで全部返しました。では話します」
それからキャリナにその左眼の詳細を聞いた。
能力はある程度予想していた通り、見たものを奪うというものだった。ただ、予想と少し違ったのは、奪うというよりも無理やり借りるといった方が近いということだ。ちなみにスキル名は借奪眼というそうだ。スキル名のせいで、借りているのか奪っているのか分からないな。
「私はこの力は今までほとんど使ってこなかったです。だからまだ分からないことも多いです。ゼロスさんとの戦いでも発見がありましたし」
「発見?」
「はい。まず、ゼロスさんのエンチャントは1分経ったら勝手に返されました」
どうやら一発放ったら終わりの魔法とは違い、エンチャントのような永続的に発動しているやつは1分使ったら勝手に返されるそうだ。この時間制限は今後のスキルレベルの上昇で変わってくるかもしれない。
「それと、ゼロスさんの精霊降臨と悪魔憑きは借りれませんでした」
「…原因は契約のせいかな?」
俺はユグ達と名付けという契約を行って力を貸してもらっている。契約が無ければ原則、どんなに仲が良かったりしたとしても、精霊、悪魔、獣の力を使うことはできない。
「私の借奪眼の説明は大体こんな感じです」
「ありがとうね」
俺が思っていたよりもキャリナの借奪眼は凄まじい力だ。そのことにキャリナは気が付いているだろうか?
俺の雷電トリプルハーフエンチャントはキャリナの魔力量では、1分も維持はできない。つまり、借りているものを発動するのに間は魔力を全く必要ないのだ。
さらに、いきなりそんなに強化をすれば普通なら身体が持たないだろう。なのに、キャリナは発動中も当たり前のように動いた。つまり、身体への負担が無いか、かなり少ないということだ。これに気が付いた時に一瞬だけ、神雷を発動する直前にキャリナが借りて放てばリスクは無いのではないか?と考えた。しかし、あの神雷は神から直接貰ったものだ。だから借りようとしても借りられない可能性の方が高い。勇者も俺の神速反射はコピーできなかった。
そんな借奪眼にも弱点はある。まず、全部返さないと新しく借りられないことだ。そして、1日経ったら借りていたものが勝手に返されることだ。それと、これは弱点と言うには弱いが、発動前の魔法を借りた時は、まだ魔法が完成していないので、威力が落ちるくらいだ。
もし今後の借奪眼のスキルレベルが上がったり、進化した時にこの弱点が軽減、もしくは無くなったりした時、キャリナはかなり強くなっているだろう。
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