第298話 現れた弱点
「やっ!ほいっ!」
変身前までと魔法の威力が桁違いになっている。しかも全て無詠唱でだ。俺は避けるのに精一杯で何もできなくなった。空中では四方八方からの攻撃を警戒する必要があるので、急いで地面に降りた。
「今度は地上戦?」
俺が地面に降りると、エンペラーリッチも地上に降り立った。
「そうだ!今の体ならできるかな?」
エンペラーリッチはそう言うと、手に骨でできた白い剣?のようなものを2本持った。そして、それを不格好に構えながら向かってきた。向かってくるスピードは変身前よりも遥かに速かった。
「えい!」
そう言いながら下手くそに振ってきた骨剣を俺は斬った。これは魔法でできているので、魔法斬りで斬ることは容易だった。俺は骨剣を斬った流れでそのままエンペラーリッチに斬りかかった。剣なんて使ったことがないのか、骨剣を振った後は隙だらけだった。
「くっ…」
しかし、俺の2本の剣は肩の裏から生えている蛇に咥えられる形で防がれた。
「危なかっぶへっ!」
剣を止めてからも隙だらけだった。だから俺は咥えられて動かない剣を掴んで支えにして、飛び付くように顎に膝蹴りを行った。その攻撃は綺麗に顎に決まった。
「はっ!!」
衝撃で剣が口から離されたので、今度こそエンペラーリッチを斬った。ただ、ガードするためか盾のように肩裏の蛇を出してきたので蛇を斬ることになってしまった。
「あれ?」
さっきまであれほど硬かったのに、蛇を切断することができた。色々気になることはあるが、とりあえず追撃をしようとしたが、危機高速感知が反応したので、後ろに下がった。すると、地面から剣山程の量の黒い針が大量に生えてきた。
「そっか…物理耐性も精神に帰属するのか…もちろん元の体よりは上がってはいるけど…まだまだ低いね。それなら少し時間はかかるけど精神も完全に取り込まなければならないのね…」
エンペラーリッチがボソッと言ったことが全て聞こえた。今のエンペラーリッチには先程のような高い物理耐性は存在しない。ならもしかしたら勝てるかもしれない!
「私に弱点があることがわかったからにはもう終わらせるよ」
エンペラーリッチはそう言うと何らかの魔法の準備を始めた。魔力高速感知でも、闇魔法が使われている事くらいしか分からなかった。その魔法には莫大な量の魔力が使われている。軽く俺の上限の3倍以上は使われている。
「いでよ!ドラゴンゾンビ!」
そう言いながら手を地面に付けると、地面に闇が広がり、その闇から10m近いドラゴンが現れた。
「は…?」
エンペラーリッチが言っていたドラゴンゾンビという魔物は存在する。ドラゴンが死後放置されていたらそのような魔物に変貌することが時々あるのだ。
「あ、ドラゴンゾンビって言っても、私が殺したドラゴンを意図的に腐らせて操ってるだけだからね。だからこいつは殺す事はできないよ」
普通のドラゴンゾンビはS+ランクで強くはあるが、アンデットと同じで火魔法などに弱いから倒せなくはない。しかし、これは死体を操ってるだけだから倒すことができない。
「じゃあいけ!」
エンペラーリッチがそう言うと、ドラゴンゾンビが俺に前足を振り下ろしてきた。俺はそれを受け流すように躱した。思ったよりもドラゴンゾンビのスピードが遅い。これなら避けることだけなら大丈夫だろう。そして、ドラゴンゾンビの真下の闇からかなりの魔力を感知できる。多分それでこいつを操っているのだろう。つまり、それを斬れればこいつの動きは止まる。
「やっぱり遅いのが弱点だよね。まあ、問題は無いけどね」
今度はドラゴンゾンビが横殴りに腕を振ってきた。余裕を持って避けようとしていると、俺を取り囲むように黒い槍が現れた。急いでそれを斬ったが遅かった。
「がっ…!」
俺はドラゴンゾンビの攻撃を剣で受け止めるのが限界だった。受け流す時間もなかった。俺はドラゴンゾンビの攻撃で空中に浮かんで、かなり吹っ飛ばされた。
ドラゴンゾンビの動きが遅いのが最大の弱点だったが、攻撃が当たるまでの間はエンペラーリッチが時間稼ぎをして動けなくするから問題は無いのか…。
「がふっ…はぁ…はぁ……」
俺は巨大な岩に当たって止まることができた。今の攻撃だけで身体の骨が何本も折れている。急いでエリクサーを取り出して飲もうとした。
「それはさせないよ」
「あ゛っ!!」
エンペラーリッチは暗闇の地面からニョキっと現れた。そして、両手を岩に固定するかのように手の平に黒い槍を刺された。そのせいで未だ持っていた剣も落としてしまった。そんなエンペラーリッチに遅れてドシンドシン!と地面を響かせながらドラゴンゾンビまで到着してしまった。
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