第291話 成長

「はっ!」


「ん゛!!」


俺は急に跳び上がって、空中にいるグリフォンに攻撃を仕掛けた。この行動はさすがに想定外だったのか、グリフォンは何とか爪で俺の剣の攻撃を防ぐことで手一杯だった。


「馬鹿め!空中は俺の独壇場だ。わざわざ無防備になるために俺の領域に来るとはな!」


そう言うと、グリフォンはさらに上空に飛ぼうとした。


「空中で自由に動けるのがお前だけだと思うなよ!」


「なっ!」


俺は空中でさらに、もう一度跳び上がってグリフォンに近付いた。獣化のスキルレベルが上がったことで、一瞬くらいなら、空中に足場を作れるくらいにサイコキネシスが使えるようになった。


「ふっ!」


「ぁ…」


俺は跳んでグリフォンより上まで回り込んだ。グリフォンはさっきと同じように爪で剣を防ごうとしてきたので、俺はグリフォンの両手を横に弾くように剣を振った。これで胴ががら空きになった。


「ま、待て!」


「はあ!」


俺はがら空きになった胴を斬った。すると、グリフォンは勢いよく地面に向かって落ちて行った。こいつの周りに纏っている風のせいで胴体を真っ二つにはできなかった。




「ぐっ…かはっ…!」


しかし、グリフォンは地面に強く叩き付けられた。そして腹には浅くない斬り傷もできた。



「はぁ…はぁ……」


「兄貴!上だ!」


「っ!」


俺は空中で1回ジャンプして、地面に四つん這いになっているグリフォンに上から猛スピードで下りていった。もう風のガードが解けている。今なら確実にトドメを刺せる


「邪魔だ!」


「ああ…」


グリフォンに剣でトドメを刺そうとしたが、盾になるようにグールがやってきた。だから無詠唱の雷爆で吹っ飛ばした。今度こそグリフォンを斬ろうとしたが、さらにマンティコアがやってきた。


「助かった…!」


そして、グリフォンは俺の相手をマンティコアに任せて逃げるために低空飛行で飛び出した。


「逃がすか!おら!」


俺は持っている闇翠をグリフォンの羽目掛けて投げた。投げた闇翠は、もう風のガードが無いグリフォンの右翼に突き刺さった。


「ガフッ!」


羽に剣が突き刺さったことで、飛べなくなったグリフォンは地面に体を擦り付けながら止まった。


「兄貴!」


「はっ!」


「いぎゃー!」


俺を目の前にしているのに、グリフォンの心配をしてか、マンティコアは俺に背を向けた。その隙に俺は毒がありそうで邪魔なサソリのような尻尾を根元から斬った。そして、俺はグリフォンに走っていった。



「く、くそ…この俺が…」


グリフォンの近くに行くと、俺は闇翠を転移させて手元の戻した。そして右手に持った闇翠でグリフォンの首をはねた。この前の対校戦で確実にトドメを刺す重要性は学んだ。



「よ、よくも兄貴をっ!!!!」


マンティコアが俺に向かって怒りをあらわにしながら走ってきた。


「死ね!死ね!」


怒りのせいか、マンティコアはとても単調な攻撃だった。俺はそれを冷静に受け流した。


「かはっ…」


そして、隙を付いてマンティコアの胸に剣を突き刺した。


「あ、兄貴…」


俺は確実にトドメを刺すためにマンティコアの首も落とした。


「あ、あっ!」


ちょうどそのタイミングで、今度はグールがやってきた。俺はグールを剣で斬っていった。



「硬いな…」


さすがはグールの魔族だ。剣での攻撃ではほとんど致命傷は与えられない。深く斬ることができても、すぐに再生してしまう。アンデットに効果的なのは火魔法や光魔法、聖魔法とかだ。雷では、こいつにはそんなにダメージは入らない。だから、俺は神雷エンチャントと精霊ユグエンチャントを解除した。



「ユグ!」


「分かったよ!」


ユグは俺が何を求めているのかを瞬時に察してくれた。ユグは俺から魔力を貰って魔法の準備を始めた。俺はユグの準備が終わるまで時間稼ぎをした。



「「獄炎!」」


「あ…あ……」


ユグと火の精霊魔法を使って、一気にグールを燃やした。グールは再生が追い付かない速度で燃えていった。俺の火魔法ならここまでの火力は出ない。そして、火が消える頃にはグールは灰となった。



「ふう…」


俺は一息付いた。グリフォンに想定外の事を行うことで、戦闘の流れを完全に物にすることができた。疲労はあるが、そこまで傷を負うこともなく勝つことができた。


「ユグ、またよろしくな」


「うん!」


「悪魔化」


俺は回復エンチャント以外を解除して、初期の状態に戻した。そして、他のみんなの手助けに行くために、戦闘音のする方へ走って向かった。



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