第250話 対校戦メンバー
「ゼロス、リーダーよろしくな」
「お兄ちゃん、頑張ってください」
「あんたがリーダーで大丈夫?」
今日は対校戦のメンバー発表日だ。当たり前かのように俺とソフィとシャナとクラウディアはメンバーに選ばれていた。そして留学生で選ばれた3人はベクア、エリーラ、キャリナだ。また、残りの3人は一般の生徒の中から選ばれていた。まあ、俺達も一般の生徒なんだけどね。
それと前回の対校戦優勝の実績からリーダーは再び俺で、副リーダーはソフィだ。
「そんなこと言うならリーダー変わるか?」
「いやよ」
エリーラが俺で大丈夫か?と聞いてきたから変わってあげようとしたのに断られてしまった。
「う、ウルザでは無くて、私が代表にえ、選ばれていいのでしょうか…」
キャリナは双子のウルザでは無く、自分が選ばれていいのだろうかと思っているのだろう。それにフォローを入れようとしたら、ベクアが俺の前に手を出して止めてきた。
「甘えるなキャリナ。お前は、キャリナでも大丈夫だよ、とでも言われたいだけだ。自信が無いなら自信が持てるまでに自分自身を鍛え上げろ。心の強さを付けるために獣人がそんな情けなく人に頼るな」
「は、はい!」
今この場では兄であるベクアでしか言えないセリフだ。確かにキャリナは大丈夫だ的な事を言われたかったのかもしれない。もしこれで俺がそう言ってあげたら、今回はそれで大丈夫かもしれない。しかし、同じようなことがあった時にまた同じことを言われなければ自信を付けられなくなってしまうかもしれない。
「そしてウルザも次はキャリナよりも実力が上だと誰が見てもわかるほど強くなれるように努力しろ」
「はい!」
俺達が見てもウルザとキャリナの実力はほとんど同じだ。だから今回のメンバーにどちらが選ばれてもおかしく無かったと思う。
ただ、園内戦2日目の対戦相手がウルザがソフィで、キャリナがクラウディアだったのが大きいと思う。ウルザは終始何も出来ずに終わったのに対して、キャリナも最初は何も出来なかったが、最後にクラウディアに一矢報いることができた。そこの差がメンバーにどちらを選ぶかに繋がったと勝手に思っている。実際にどうかは分からないけど。
「さて、じゃあさっさと練習場に行って、ゼロスに獣化とは何たるかを教えてやるか!」
「お手柔らかにな」
「残念ながら俺の教えはスパルタだから覚悟しとけよ!」
その日はメンバー発表以外に特にやることもないので、その足で練習場に向かった。
「おい!どうした!!」
「くそっ…」
そして今はベクアとお互い使うスキルは獣化のみという縛りで模擬戦をしている。もちろんその縛りは俺の神速反射のような常に発動しているスキルは仕方が無いものとしている。
「全然反撃していないぞ!」
「反撃してないんじゃなくて…出来ないんだよ!」
獣化のみで戦うと、ベクアの攻撃を食らわないようにするのが精一杯だ。ベクアの隙を作らせるような動きすらも出来ていない。
「くそ!無理だ!」
「あ?」
俺は今のままだと負ける未来しか見えないので、2本目の尻尾を出した。
「……」
「いくぞ!」
2本目の尻尾を出した時のベクアの表情は少し面白かった。嬉しいような、悔しいような、呆れたような…色々な感情が混じった複雑な顔をしていた。
「無理…俺の負け!」
「獣化に関してはまだまだだな!」
この模擬戦は俺がギブアップしたので、俺の負けで終わった。一応神速反射のおかげでベクアの攻撃はまともに当たってはいない。そして、2本の尻尾のおかげでステータスも上がって、途中からはかなり良い戦いをすることが出来た。しかし、回復エンチャントも無いので、スタミナが持たなかった。これ以上続けたら、攻撃を躱せずに負けていた。
「やはりゼロスは獣化が何たるかを分かっていないな」
「獣化が何たるか?」
ベクアがギブアップをした直後に寝転がった俺に近付いてそう言ってきた。ベクアは一体何を言いたいのだろうか?
「獣化は文字通り獣に化けるスキルだ。それなのにゼロスの戦い方は人間的過ぎる。獣化中はもっと獣のように自由奔放に、人間の型なんかにとらわれずに戦ってみろ。元々ゼロスの反射神経は獣以上だから合うはずだぞ」
「ありがとう」
やはりベクアの方が獣化についてよく知っている。これから色々アドバイスを貰いたい。
「お兄ちゃん!悪魔魔法と悪魔化は私が手取り足取り丁寧に教えます!」
「精霊魔法や精霊化は私が教えてあげなくもないわよ」
「はははっ!2人ともありがとう」
どうやらソフィとエリーラも俺に教えてくれるみたいだ。これから対校戦が始まるまでの間は意外と自由な時間が多くある。その時間を使って少しでも精霊、悪魔、獣を使いこなせるように頑張ろう。
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