第218話 不満

「お兄ちゃんは血の繋がった私よりも前世でいなかったエルフの方が好みなんですね。珍しいのが好きなんですか?それともあのツンデレみたいなのが好きなのですか?私もツンデレになった方がいいですか?」



ソフィが凄く拗ねてしまった。こんな拗ねたのは前世を含めても片手の指の数で収まるくらいしかない。これは前世で俺がワ○ワ○パニックで無双して大差で勝った時くらい拗ねている。


「ソ、ソフィ…」


「ツンデレエルフ好きのお兄ちゃん、どうしたのですか?」


「………」


こんな感じに話しかけてもまともに取り合ってもらえない。でも、反抗期中にガン無視されていた時よりは全然楽だ。



「少し遅くなるけどしょうがないな…雷電トリプルハーフエンチャント」


「ぇっ…」


俺はソフィをお姫様抱っこして走り出した。そしてそのまま街の外へ出た。門を通らずに塀から無許可で外へ出てしまったけど多分大丈夫だろう。街から少し離れたところでソフィを下ろした。




「ソフィ、俺の何が不満だったか全部教えて」


拗ねている人にこんなこと言ったら普通は逆効果だろう。さらに拗ねるだけかもしれない。でもそれは俺達が本当の13歳ならの話だ。でも、俺達は前世では18歳くらいまで生きていた。それなら拗ねていたとしても話し合いはできるはずだ。

そしてソフィは少し下を向いて俯いていたが、ゆっくりと話し出した。




「……勝手にエルフと2人で出かける約束をしたことが嫌でした。私はお兄ちゃんと少しでも一緒に居たいと思っているのに、お兄ちゃんは私と1週間に2日も離れても平気な事も嫌でした。私は6時間もお兄ちゃんと密着しててずっとドキドキしてました。今でもドキドキしています。それなのに、お兄ちゃんは途中から平気そうにしているのが嫌…。私を妹としてしか見ていないことが何よりも嫌!」


「………そっか」


やはりソフィは溜め込んでしまうタイプのようだ。あと、俺は心のどこかでまだソフィが俺の事を好きというのを信じていなかったのかもしれない。



「エリーラとの魔物狩りは午前か午後のどちらかだけにするよ。それならソフィが着いてきても問題ないよね。あと、途中からドキドキしなかったのは色々と考え事をしてたからだよ」


午前か午後のどちらかだけなら俺とソフィの2人が居なくても大丈夫だろう。

それと、密着しているの時はどうやって神雷をソフィに隠し通すかを必死に考えていたから、ドキドキしている暇なんてなかった。



「それと…これからはソフィを妹としてだけじゃなくて1人の異性としてちゃんと見るから」


ソフィは兄妹喧嘩の後に俺を妹としてだけじゃなく見せようとすると言っていた。でも、それから少し経っても俺が妹としてしか見ていないことに気が付いていたのだろう。前世から女性は視線を敏感に感じ取るというしな。その事にソフィはずっと不安だったのかも。今まで俺はソフィの事を妹して見ようとするとかの曖昧なことしか言ってこなかった。だから今からはソフィを妹以外としても見る。




『ピコーン!』

『【称号】シスコンを超えし者 を獲得しました』




「…分かりました。お兄ちゃんの誠意がちゃんと伝わってきました。だから拗ねるのは止めます」


「…なら良かった」


変なタイミングの称号獲得報告のせいで少しぽかんっとしてしまった。それに俺はまだシスコンの域に居るはずだ。まあ、そんな事よりもソフィに俺の気持ちが伝わって良かった。



「じゃあ早く行こうか」


集合時間とかは決めていないが、少し寄り道をしたので遅くなっている。早く行った方が良いだろう。



「はいっ!」


「え?」


ソフィは俺に近付くと腕を広げた。俺は何がしたいのか分からずに見ていることしかできない。


「またお姫様抱っこで連れてってください」


「はぁ…そういう事をするから妹として見てしまうってのに……」


「私は妹としてお兄ちゃんと結ばれたいんです。妹で無くなりたい訳では無いんですよ?だって前世でお兄ちゃんの妹じゃなかったら、私はお兄ちゃんをこんなに想うことも無かったと思います。お兄ちゃんの事を誰よりも近くで見る事が出来た妹だからこそ、私はこんなにお兄ちゃんの事が好きになりました」


「…うるさい、早く行くぞ」


俺は少し乱暴にソフィをお姫様抱っこして走り出した。


「お兄ちゃん、耳まで真っ赤ですよ。照れていますね」


「分かってるなら言うな…」


「そんなところも可愛くて私は好きですよ」


「…黙ってお姫様抱っこされてなさい」


「はーいっ」


そこからはお互い無言の中、走り続けた。だからと言って空気が悪い訳では無かった。寧ろ、2人で通じ合っているような心地良さがあった。


ちなみにグラデンの元へ着くと遅い!と怒られてしまった。ソフィと目を合わせて笑い合ってから2人で謝った。そしてそこからすぐに剣作りの作業が開始した。




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